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比叡山で最強の厄払い! 神仏両方、延暦寺と日吉大社で「やくばらい散歩」

最近、仕事もプライベートも本当についていない……。

編集部員、1977年生まれ、性別は男、満41歳(数え年42歳)。2018年、本厄を迎えている。親しい人の死や仕事のトラブルなど誰でも経験することだが、今年は人生でも相当な試練を迎えているような気がしていた。そんな様子をそばで見ていた妻にも「厄払いしたら?」と言われる始末。けれど、信心深いわけでもない。

それでも行った方がいいかなと思っていた矢先、星野リゾートから&TRAVEL編集部に「比叡山やくばらい散歩」ツアーの案内が届いた。今年9月から開始した宿泊プランという。延暦寺と日吉大社、神仏両方で「やくばらい」できるらしい。何だか「最強の厄払い」になりそう。これって天啓? 不運を嘆くのでなく、積極的に行動し「本厄を楽しもう」と、前のめりで参加してみることにした。

そもそも厄年って何?

厄年ってそもそも何だろう?

厄年年齢一覧表(寺社により違いあり)

厄年年齢一覧表(寺社により違いあり)。※今回のツアー資料をもとに作成

調べてみると、おおむね、厄災が身に降りかかるおそれが多く、万事に気をつけなければならない年齢ということのようだ。神社仏閣で厄払い(厄除〈よ〉け)をしに参拝する人も結構いるらしい。人生の転機を迎えるときや運気を変えたいときなど、厄年以外でも厄払いをする人はいるそうだ。

家族の墓があるお寺のご住職に、父親の一周忌をいつ行えばいいか相談したときのことを思い出した。調べると“亡くなった日の週とその前後の週”というのが多かったのだが、高齢の母は真冬に行うことを躊躇(ちゅうちょ)していた。ご住職の「決まりはありません。ご遺族のお気持ちが第一です」という言葉に気持ちが楽になったのを覚えている。

つまりは、“思い立ったが吉日である”と自らに言い聞かせ、東京駅から新幹線で約2時間25分、京都駅に向かった。目的地は星野リゾートのオーベルジュ「ロテルド比叡」だ。1泊2日のツアーである。

一日目スタート「星野リゾート ロテルド比叡」へ

13時35分に京都駅に到着し、15分後に駅前のバス乗り場に集合なので、急いで向かった。いました、「ロテルド比叡」と記載されたマイクロバスが。期待を胸に乗り込み、いざ出発。バスに揺られること約1時間、15時にホテルに無事到着した。

「星野リゾート ロテルド比叡」外観

「星野リゾート ロテルド比叡」外観

着くとホテルの外観が地味に感じた。9月は雨ばかりで、この日も天気はすぐれなかった。それもあってのことだろうか。

「星野リゾート ロテルド比叡」の中

「星野リゾート ロテルド比叡」の中

でも、ホテル内はこの通り、ステキです。ウェルカムドリンクのほうじ茶とお菓子のおもてなしが。京都府と滋賀県の境に立地するというロテルド比叡は、食に関しては滋賀県の鮒(ふな)ずしに代表される「発酵」をテーマにしている。

ウェルカムドリンク

ウェルカムドリンクのほうじ茶とお菓子

セルフサービスでも様々なほうじ茶が楽しめる

セルフサービスでも様々なほうじ茶が楽しめる

実は琵琶湖周辺では、茶栽培の歴史は古く、比叡山に延暦寺を作った最澄が遣唐使から帰国した際に茶作りのノウハウを持ち帰ったのが始まりという。通常のほうじ茶と、茶葉を発酵させた熟成度合いの異なるものが用意され、飲み比べるのが楽しい。ホテルの売店で様々な種類のほうじ茶が売っていた。セルフサービスでも様々なほうじ茶が楽しめるので、ティーカップを片手にテラスへ。比叡山のおいしい空気と標高約600メートルから琵琶湖を見下ろすパノラマを堪能した。

琵琶湖を見下ろすパノラマ

琵琶湖を見下ろすパノラマ

ワインテイスティング講座に編集部員は……

ワインテイスティング講座

ワインテイスティング講座

17時からワイン初心者向けのテイスティング講座があると聞き、参加した。丸テーブルの各席に白ワインが3種並んでいる。外観、香り、味とチェックポイントをクイズ形式で解説してくれる。例えば「三つの中で一番透明度が高いのはどれ?」、「フルーティーな香りはどれ?」、「甘みの強いのはどれ?」というように。

同席のご家族3人が見事にこの三択クイズを当てていく横で、編集部員は見事に外していく。くやしい。

煩悩を刺激する発酵フレンチ

18時30分、いよいよ夕食の時間。オーベルジュのロテルド比叡では発酵フレンチとワインのペアリングが売りだ。コースは全9品。ワインは、料理に合わせてソムリエに選んでもらった。

シャンパン「ジャン・ド・ヴィラレ・ブリュット」(左)、1品目「琵琶鱒(マス) 百合根と青林檎(りんご) 柚子(ゆず)の香り」(中)、2品目「子持ち鮎(アユ) クスクス 葉唐辛子」(右)

シャンパン「ジャン・ド・ヴィラレ・ブリュット」(左)、1品目「琵琶鱒(マス) 百合根と青林檎(りんご) 柚子(ゆず)の香り」(中)、2品目「子持ち鮎(アユ) クスクス 葉唐辛子」(右)

純米酒「七本槍(しちほんやり)」(左)、3品目「鮒鮓(ふなずし)甘露漬けとフォワグラテリーヌ 金つばと柿」(右)

純米酒「七本槍(しちほんやり)」(左)、3品目「鮒鮓(ふなずし)甘露漬けとフォワグラテリーヌ 金つばと柿」(右)

白ワイン、シャルドネ「フランソワ・ダレン」(左)、4品目「鶏のビスク トリュフ」(中)、5品目「太刀魚 蕪(カブ) 川海老(エビ)のエッセンス」(右)

白ワイン、シャルドネ「フランソワ・ダレン」(左)、4品目「鶏のビスク トリュフ」(中)、5品目「太刀魚 蕪(カブ) 川海老(エビ)のエッセンス」(右)

赤ワイン、ボルドー「オプティマ・ド・シャトー・メイル」(左)、6品目「国産和牛のロティ 赤ワインソース キノコ」(右)

赤ワイン、ボルドー「オプティマ・ド・シャトー・メイル」(左)、6品目「国産和牛のロティ 赤ワインソース キノコ」(右)

7品目「梨のカクテル」(左)、8品目「イチジクとショコラ ラムのグラス」(右上)、9品目「小菓子とコーヒー」(右下)

7品目「梨のカクテル」(左)、8品目「イチジクとショコラ ラムのグラス」(右上)、9品目「小菓子とコーヒー」(右下)

甘味、酸味、塩味、苦み、うまみを次々と楽しめる煩悩まみれのフルコースを完食。近江の食文化、琵琶湖の恵みとフレンチの絶妙な組み合わせを満喫した。程良く酔いが回ってきたところで、気づけば20時半。明日は5時起きで朝食前の6時から延暦寺で「朝のお勤め」だ。そろそろ就寝せねば。

宿泊した部屋

宿泊した部屋(昼間)

部屋に戻るとテレビをポチッ。関西ローカルのお笑い番組をやっていた。旅先で見るローカル番組って、なぜこんなに楽しいのかしら。

二日目スタート、延暦寺、日吉大社ってどんなところ?

むにゃむにゃ、延暦寺、日吉大社ってどんなところなのだろう?

二日目は5時に起床し、ホテルロビー集合までの1時間、これから行く先について勉強した。いいお酒だったせいか、二日酔いは全くない。

延暦寺、東塔地域の入り口

延暦寺、東塔地域の入り口

比叡山延暦寺は、天台宗の総本山。788年、最澄が一乗止観院(現在の総本堂で国宝の根本中堂)を建立したのが始まり。平安京の鬼門(北東)で日本の国を鎮め護(まも)る寺として、朝廷から期待され、「延暦」の寺号に。法然、親鸞、一遍、日蓮など各宗各派の祖師高僧が輩出し、日本仏教の母山ともいわれている。戦国時代、織田信長によって全山焼き打ちにされるも、豊臣秀吉や徳川家、天海などの尽力で比叡山は再興した。現在は東塔、西塔、横川地域などに100を超す寺院や堂塔が建っている。1994年に、京都の名刹(めいさつ)とともにユネスコ世界文化遺産に登録された。

日吉大社の山王鳥居

日吉大社の山王鳥居

日吉大社は、全国3800あまりの日吉・山王・日枝神社の総本宮。創建は延暦寺より古く、およそ2100年前といわれている。比叡山のふもとに建ち、約40の社からなる。東西二つの本宮(本殿は国宝)と五つの摂社がその中心だ。東本宮には比叡山の守護神でもあるオオヤマクイノカミが、西本宮にはオオナムチノカミがまつられている。全ての神様を総称して「日吉大神」と呼ばれる。平安京の鬼門で都の魔除(よ)けや災難除けを祈る社として、山王信仰の地としても知られ、天台宗の護法神でもある。

……それにしても、意外と頭に入らない。私だけでしょうか? そろそろ集合の時間だ。「書を捨てよ、神社仏閣へ行こう」と自らに言い聞かせロビーへ急いだ。ホテルのバスに乗り込み、いざ出発。10分ほどで延暦寺の東塔地域に到着した。

延暦寺「やくよけ参拝」三点セット

おおみそかに除夜の鐘を鳴らすのも一生の思い出になりそう

おおみそかに延暦寺を訪ねて、除夜の鐘を鳴らすのもいいかもしれない

前日とは打って変わり快晴に。早朝のつめたい空気が心地いい。朝食前に総本堂「根本中堂」で「朝のお勤め」だ。そもそもロテルド比叡の地主は延暦寺だそうで、この「朝のお勤め」は、ロテルド比叡と宿坊の延暦寺会館に宿泊した人だけが参加できる。

長期修繕中の国宝「根本中堂」

長期修繕中の国宝「根本中堂」

行ってみると根本中堂は長期修繕中で、残念ながら外観はこんな感じだった。ただ、中には足場が組まれていて、参拝客が修繕の進み具合を見学できるよう展望台もある。普段は見ることができない景色として、楽しんでもらおうというお寺の心意気を感じた。

根本中堂の中に入ると展望台が。屋根の傷み具合など細部まで観察できる

根本中堂の中に入ると展望台が。屋根の傷み具合など細部まで観察できる

「朝のお勤め」は、ご本尊である薬師如来の前で「不滅の法灯」のあかりの中、30分ほど行われる。中の撮影は禁止。不滅の法灯は、最澄が灯(とも)したとされ、1200年以上、延暦寺の僧により守られてきたそうだ。

「護摩木の記入」セット。四字熟語の願い事の記入例があり、どれにしようかと欲深い自分に向き合った

「護摩木の記入」セット。四字熟語の願い事の記入例があり、どれにしようかと欲深い自分に向き合った

ところで、今回のツアーの延暦寺「やくよけ参拝」は、「護摩木の記入」「朝のお勤め」「宿泊者限定の御守の収受」が三点セットになっている。このうちの「護摩木の記入」については、ホテル到着後すぐに一式を渡され、願い事を記入した護摩木をホテルスタッフに渡して終了だ。護摩祈禱(きとう)は、日によって時間が違うので今回のツアーでは見学しない。祈願する四字熟語の例もあるので、編集部員は初志貫徹「厄除開運」と記入した。

さて、「朝のお勤め」のお経が始まった。星野リゾートのスタッフによると、このお祈りは世の平和を願うのが主だが、お寺の方に厄除けのことも含むようお願いしているとのこと。お経に耳を澄ますと「~~~やーくーよーけーかーいーうーん~~~」。聞こえました。

終了後、胸のあたりがスーッとスッキリした感じに……。いや、ただ単に胃の中のものが消化されたようだ。バスでホテルへ戻り、朝食をとった。

ロテルド比叡の朝食。サラダにそえられた湯葉ドレッシングが新感覚でした

ロテルド比叡の朝食。サラダにそえられた湯葉ドレッシングが新感覚でした

チェックアウト。時刻は9時30分。再びホテルのバスで延暦寺へ。食後の散歩を敷地内で楽しみ、“三点セット”の最後「宿泊者限定の御守の収受」へ。宿坊の延暦寺会館の喫茶スペースに行き「梵字(ぼんじ)ラテ」を注文、その時に「御守」をいただいた。景色もいい。優雅でオシャレなひとときだ。

「御守」と抹茶の「梵字(ぼんじ)ラテ」。生まれ年ごとに守護尊と仏様を表す梵字があり、これは普賢菩薩(ふげんぼさつ)を表すそう

「御守」と抹茶の「梵字(ぼんじ)ラテ」。生まれ年ごとに守護尊と仏様を表す梵字があり、注文時に申告する。この字は普賢菩薩(ふげんぼさつ)を表すそう

日本一の長さを誇る「坂本ケーブル」で下山

ケーブル延暦寺駅の入り口

ケーブル延暦寺駅舎の入り口

11時00分、比叡山のふもとにある日吉大社に向かう。延暦寺会館から15分ほど歩くと、全長2025メートルで日本最長のケーブルカー「坂本ケーブル」の「ケーブル延暦寺駅」に到着。レトロな駅舎の入り口には、登録有形文化財の看板が掲げられている。860円で片道切符を買い、ふもとにある「ケーブル坂本駅」へ出発進行!

「坂本ケーブル」に乗車

「坂本ケーブル」に乗車

車窓からは琵琶湖を見下ろす絶景が

琵琶湖を見下ろす絶景を楽しんだ

車内では動画撮影に熱心な方がちらほら。比叡山から琵琶湖を見下ろす絶景や趣あるトンネル、すれ違うケーブルカーなどを車窓越しに眺めていると「ケーブル坂本駅」に到着した。

日吉大社のマサルさん、「最強の厄払い」はクライマックスへ

神猿(まさる)さんがいる檻(おり)にある表札

神猿(まさる)さんがいる檻(おり)にある表札

ここから5分ほど歩き日吉大社へ。最澄は、この地の出身だそう。子どもの頃は日吉大社に行っていたのかな、などと歴史のロマンに浸っていると、山王鳥居をくぐりしばらくして現れたのは「マサル」さん、いや「神猿(まさる)」さん。日吉大社では、猿は神の使い。「魔が去る」「何よりも勝る」に通じることから、魔除けの象徴としている。編集部員も「神猿」さんにお祈りした。

日吉大社「やくばらい祈禱(きとう)」を行う西本宮の拝殿

日吉大社「やくばらい祈禱(きとう)」を行う西本宮の拝殿

「やくばらい祈禱(きとう)」を行う西本宮は、山王鳥居からまっすぐ進んだ一番奥にある。早速、拝殿にて神主さんに厄払いをしてもらった。この時は編集部員一人だけ。ものの5分で終了し、あっけにとられていると、宿泊者限定のお下がりをいただきました。中には「厄除け守」、「お茶」、比叡山名物の「そばぼうろ」が入っていた。編集部員の目的である神仏両方「最強の厄払い」はこうしてクライマックスを迎えたのだった。

宿泊者限定のお下がりの中身

宿泊者限定のお下がりの中身

その後は境内を散策。様々ある社の周りをよく見ると水路で囲まれており、これには結界の意味があるそう。比叡山の自然の恵みとこの場所に社を作った古代の人々の信仰心と英知に畏敬(いけい)の念を抱きながら、日吉大社をあとにした。

社の周りを囲む水路(結界)

社の周りを囲む水路(結界)

旅の締めは「やくばらい蕎麦(そば)」

「本家鶴喜そば」正面

「本家鶴喜そば」正面

旅もまもなく終わり。締めと言えば「おそば」。比叡山で断食の行を終えた修行僧は、弱った胃を慣らすのに、そばを食したそう。そのため比叡山の門前町にはそば屋が多い。創業三百余年「本家鶴喜そば」で宿泊者限定の「やくばらい蕎麦」をいただいた。

宿泊者限定の「やくばらい蕎麦」

宿泊者限定の「やくばらい蕎麦」

ごちそうさまでした。時刻は14時過ぎだが、朝5時から活動しているせいか程良い疲れが。JR湖西線・比叡山坂本駅まで歩きながら、ふと思いついた。「そうだ、墓参りしよう」、身も心も胃袋も厄払いされた姿を先祖に報告すべく。

(文・写真 &TRAVEL編集部)

■取材協力
星野リゾート ロテルド比叡
https://www.hotel-hiei.jp/

天台宗総本山 比叡山延暦寺
https://www.hieizan.or.jp/

山王総本宮 日吉大社
http://hiyoshitaisha.jp/

比叡山 坂本ケーブル
http://www.sakamoto-cable.jp/

本家鶴喜そば
http://www.tsurukisoba.com/

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