京都ゆるり休日さんぽ

古道具・骨董好きがこぞって通う、京都「東寺がらくた市」

ジャンルや年代もさまざまな美しい古物が並ぶ

ジャンルや年代もさまざまな美しい古物が並ぶ

「東寺のがらくた市がおもしろいよ」。京都の古道具店の店主に、おすすめの骨董(こっとう)市を尋ねると決まってこの答えが返ってきます。京都の2大骨董市といえば、毎月21日に東寺で行われる「弘法市」と、毎月25日の北野天満宮「天神市」。この二つは、骨董品だけでなく、屋台フードや乾物、植木、手作り雑貨までさまざまな露店でにぎわうので、どちらかというと縁日のような雰囲気です。一方「東寺がらくた市」は、骨董から西洋アンティーク、骨董的価値は低いけれどたたずまいの美しい古道具、ジャンク品から珍品まであらゆる古物が並ぶ、古いもの好きによる古いもの好きのためのマーケット。プロの古物商も「掘り出し物が見つかる」と太鼓判を押します。

境内の木々の向こうには五重塔が見える

境内の木々の向こうには五重塔が見える

「早い人は朝5時から。朝もやのなか、私たち出店者が荷ほどきするのを待っているくらいです(笑)。同業者に定評のある市ですが、一般のお客様、海外から来られる方もたくさん」。そう話すのは、滋賀県の「古道具&カフェ 海津」の店主・滝川毅さん。日本の骨董、民具を中心に、古伊万里や切子(きりこ)ガラスなどを多数扱います。和だんすや食器棚、テーブルなど、古民家を丸ごと持ってきたようなしつらえに並ぶ品々は、暮らしの中に置かれた時の息づかいが聞こえてくるよう。食卓やインテリアにどんなふうに取り入れようか、イメージがふくらみます。

和の家具や民具、骨董がそろう「古道具&カフェ 海津」

和の家具や民具、骨董がそろう「古道具&カフェ 海津」

戦前の日本の古道具を中心に、シンプルで素材の経年変化を感じる品々を扱う「rust+antiques(ルスト・プラス・アンティークス)」は、若手の古道具店主たちに人気の店。天神市にも出店しているそうですが、がらくた市は「プロが多いので、それなりのレベルのものを持ってこないと」と店主の岡本学さんは語ります。さびたり、朽ちたり、色あせたりと、素材ならではの変化をとげた古道具類は、そこにあるだけで静かな存在感を放つものばかり。

戦前のシンプルな古道具が並ぶ「rust+antiques」

戦前のシンプルな古道具が並ぶ「rust+antiques」

古ガラスの定番「剣先コップ」は、素朴な風貌(ふうぼう)とぽってりとした厚みが魅力。麦茶やビールなど、気取らないふだんの飲み物が似合いそうなコップです。「コップ一つにしても一個一個違うのが古いものの良さ。気泡が多かったり、色味が違ったり、いい意味で不均一なところが現代の量産品にはない味わいです」と岡本さん。こちらは型打ちで作られたもので比較的リーズナブル。これが、型吹きという手吹きの技法の品になると、同じ剣先コップでも値段が跳ね上がるとか。そんな古道具談義も、市ならではの楽しみです。

一つひとつ表情の違う剣先コップ。自分好みを見つけたい

一つひとつ表情の違う剣先コップ。自分好みを見つけたい

東寺の南大門前に実店舗を構える「古美術 清水」は、確かな審美眼で選ばれた和骨董で、コレクターから茶道や華道に携わる人々からも信頼のあつい店。がらくた市でも南大門付近に出店し、美しい品ぞろえで行き交う人の目をひきつけています。

店主の目利きと状態の良さに定評がある「古美術 清水」

店主の目利きと状態の良さに定評がある「古美術 清水」

ファンの多い古伊万里、大正・昭和のレトロな品々から、古くは縄文・弥生時代の土器まで並んでいるから驚き。土器というと博物館や資料館にしかないものというイメージですが、古美術の世界では普通に出回る品だそう。悠久の時を超え、現代でオブジェや花器として鑑賞されるとは、縄文や弥生の人々は想像もしなかったことでしょう。

造形と土が特徴的な土器は、オブジェや花器として

造形と土が特徴的な土器は、オブジェや花器として

境内の片隅には、コーヒーやパンを販売する喫茶コーナーも。早朝から掘り出し物を発掘に訪れた人々が、戦利品を手にのんびりと朝食をとっています。がらくた市歩きを終えたら、そのまま東寺をゆっくり拝観するのが、旅行客の定番コース。金堂、講堂、五重塔などの有料拝観となる場所をのぞき、境内は朝5時から自由に散策することができます。

がらくた市散策後は、東寺の文化財を堪能したい

がらくた市散策後は、東寺の文化財を堪能したい

秋が深まるにつれ、境内の木々は色づき、時を経た古き良きものの味わいもいっそう引き立つ季節となります。目利きの古物商たちがえりすぐった、古いものの物語に耳を傾けてみてください。がらくた市は、ブランドやメーカーが価格を決めたものではなく、店主や客も「なんだかひかれる」、その感覚こそが指標になる世界。一見がらくたのように見えるものの中にふと目が合う品物があったら、それはあなたにとって宝物になるかもしれません。(撮影:津久井珠美)

早朝ほど品物は充実。一般の方は9時前後がおすすめ

早朝ほど品物は充実。一般の方は9時前後がおすすめ

【東寺がらくた市】
毎月第1日曜日 5:00〜16:00ごろ(雨天決行)
京都市南区九条町1 東寺境内
東寺出店運営委員会:0774-31-5550

バックナンバー

>> 記事一覧へ

PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

台湾・小慢の初姉妹店「京都 小慢」が開く中国茶の扉

一覧へ戻る

京都人好みのあんかけ湯葉丼「菜食 hale」のお昼ごはん

RECOMMENDおすすめの記事