京都ゆるり休日さんぽ

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

貴船口駅付近を走る叡山電車(画像提供:叡山電鉄)

賀茂川と高野川が合流し鴨川となる「鴨川デルタ」が目印の出町柳から、京の奥座敷と呼ばれる貴船・鞍馬(くらま)方面へと続くローカル鉄道・叡山電車。カルチャースポットの多い左京区の各駅を進みながら、車窓の景色が次第に木々に彩られ、自然豊かな洛北の山麓(さんろく)へと向かうこの列車は、小さな旅に出かけるようなワクワク感に満ちています。京都は間もなく、みやこ中が錦に染まる季節。ガタゴトと小さな電車に揺られ、秋景色を訪ねてみましょう。

五感に響く庭園美が心うるおす「圓光寺」

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

書院からの眺めは美しい額縁庭園に(画像提供:圓光寺)

一乗寺駅で降り、東へ徒歩15分ほど。「十牛之庭」と呼ばれる庭園と高台からの眺めが見事な「圓光寺(えんこうじ)」は、洛北の紅葉の名所として近年人気を集めています。徳川家康によって伏見に学校として建立されたのち、尼寺として多くの女性が修行した境内は、周囲の山々と調和した、たおやかなたたずまい。書院から眺める十牛之庭は、柱と軒先の影に縁取られ、一枚の絵のように鮮やかに浮かび上がります。しっとりと苔(こけ)むした地面には、秋が深まるにつれ散りもみじの点描が。やがて一面のもみじのじゅうたんとなり、季節の歩みとともにうつろう、美しい錦絵を見せてくれます。

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

杯型が独特の水琴窟。キンと澄んだ音が響く(画像=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp〉)

「圓光寺型」と呼ばれる繊細な杯型の水琴窟には、季節の草花がそっと添えられています。かすかに聞こえる、地中に水滴の落ちる音は、竹筒に耳を傾けるとより鮮明に。キンと澄んだ調べは静かに胸に響き、目には見えない自然の循環や気の流れまで伝えているかのようです。

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

高台からは境内の紅葉と市街地、西の山々まで眺められる(画像=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp〉)

境内をひと回りしたら、高台から眼下に広がる紅葉や市街地を眺めて、深呼吸。夕日が沈む西の空に面しているので、時間帯と天候に恵まれれば、あかね色に染まる景色を見ることができます。

3色のコントラストに魅せられる「曼殊院門跡」

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

白壁、紅葉、苔のコントラストが美しい「曼殊院門跡」(画像=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp〉)

国の名勝に指定され、小さな桂離宮ともいわれる枯山水庭園を持つ「曼殊院門跡」。一乗寺駅や修学院駅から向かうも良し。圓光寺や詩仙堂にもほど近く、合わせて巡るのもおすすめです。門前に降り立つと迎えられるのは、勅使門へと続く白壁と苔むした石垣の間のカエデ並木。白、緑、燃えるような紅の3色のコントラストが、この後見つめる枯山水庭園の色彩ともリンクします。

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

構図と色彩が静かなリズムを生み出す枯山水庭園(画像=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp〉)

小堀遠州好みにしつらえた庭園は、起点となる滝石から水の流れを白砂で表現し、その水流は園内に配された鶴島、亀島それぞれの方向へと流れてゆきます。リズミカルに構成された白と緑の対比を、さらに引き立てるのが庭を覆う紅葉の木々。心地よい均衡と調和を生み出す色彩と構成要素は、眺める角度によって異なる表情を見せ、そのたびに心が動きます。和歌の持つ文学的精神を、庭や建築など形あるものとして表現したといわれる曼殊院ならではの、定型と情緒が織りなす庭園美を味わってみてください。

叡電の秋の風物詩・もみじのトンネルを抜けて

叡山電車に乗って、京都の紅葉をめぐる小さな旅へ

展望列車「きらら」は特に大きな窓で景色を楽しめる(画像提供:叡山電鉄)

再び電車に揺られ、鞍馬・貴船方面へと向かう途中(市原駅〜二ノ瀬駅間)にあらわれるのが、線路沿いの「もみじのトンネル」。11月25日までの間、ここを走る時、列車は速度を落とし、車窓のもみじをゆっくりと堪能させてくれます。窓際に届きそうなほど間近に見る、赤・朱・オレンジのグラデーションの美しいこと。トンネルを抜けると、京の奥座敷はもうすぐそこです。

水の神様が宿る山の秋「貴船神社」

水の神様として知られる「貴船神社」は、市街地よりぐっと気温が低く、夏は避暑地ともなる地域。紅葉もひと足早く、朝夕の寒暖差でいっそう深く色づきます。二の鳥居から本宮境内へと続く87段の石段が、朱色の紅葉と春日灯篭(とうろう)に彩られる風景は圧巻。一段一段登るにつれて、神聖な場所へと向かうような、厳かな気持ちがわきあがってきます。登りきった先にある展望スペース・龍船閣から眺める、眼下一面の錦絵は格別。自然そのものが持つ色と形が描き出す風景は、庭園や建築とは趣の異なる、山の秋ならではの美しさです。

境内には、樹齢400年の桂の大木や、貴船山から湧き出る御神水(くみ取り無料。オリジナル容器は600ミリリットル・500円)といった見どころも。奥宮、結社(ゆいのやしろ)まで足を伸ばし縁結びや無病息災を願うと、エネルギーに満ちた大気に勇気づけられるような気持ちになります。11月25日までは叡山電鉄のもみじのトンネルから神社までの旅館街、境内一帯のライトアップも開催。昼間とはひと味違ったつやっぽく神秘的な秋景色を楽しむことができます。

小さくも凛(りん)とした世界観の紅葉スポットが数多く点在する、叡電沿線。日帰りでも、夕刻からの出発でも、小さな電車に揺られている間、心は遠くに旅立つことができます。心ひかれる場所で途中下車して、美しい秋の風景を目に焼き付けてみてはいかがでしょう。

叡山電車
https://eizandensha.co.jp

圓光寺
http://www.enkouji.jp

曼殊院門跡
https://www.manshuinmonzeki.jp

貴船神社
http://kifunejinja.jp

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PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

平成元年にワープする祇園の喫茶店「菊しんコーヒー」

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京都・散りもみじの名所で、過ぎゆく秋を見送る

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