「生きるレシピ」を探す旅 ―志津野雷―

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

動画は、&TRAVELの連載「生きるレシピを探す旅」筆者の志津野雷さんが監督した“旅を重ねて成長していくフィルム”『Play with the Earth』の予告。自然や人々の営みに向ける独自の視点とその美しさに引き込まれる。

映画は、12月27日(木)に逗子文化プラザなぎさホール(神奈川県)でライブ演奏と共に単独上映される予定だ。志津野さん自身に作品に対する思いを寄稿してもらった。

志津野雷(しづの・らい)

写真家、シネマ・キャラバン主宰、「逗子海岸映画祭」発起人。自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続ける。ANA機内誌『翼の王国』や、ロンハーマンなどの広告撮影を中心に活動。2016年初の写真集「ON THE WATER」を発売。

なぜ、映像作品を作るのか?

この問いを自分自身に投げかけてみた。

自己アピール? 正義感? 仕事を見つけるプレゼンテーション?

改めて考えてみるとなかなか難しい。

周りからは「ストレスなさそう、自由でいいね」などとよく言われる。写真と旅を切り口に、様々な国や土地を訪れ、多様な文化や生業を見ている。その土地ならではの良い点、悩んでいることや改善していることなど、今を生きる人たちの話を聞くことができる。美しい自然に身を置くことも多く、そうした中で仕事ができるのはありがたい。

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

オーストラリア・ベルズビーチ。朝の光がとても美しかった

ただ、人生そんなにうまくはいかない。

昔は知らぬことばかりで、知識を吸収したり体験したりするだけで精いっぱいだった。それで良かったのだが、“旅=非日常の体験→楽しい”にはならないケースも多々ある。

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

ペルー・アンデス山脈。マチュピチュに向かう途中、人々がバリケードをはって通行人に政治への不満を訴えていて、場所によっては緊迫していた

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

南インド・ケララにあるヒンズー教寺院に来た参拝者のための食堂。一日約1500人分もの昼食を用意する。笑顔が素敵な女性だ

世の中に突き抜けた感性や経験の持ち主は山ほどいる。「こんな生活をしたい!」とぼんやりしたイメージは持っているのだが、旅をする中でそれを体現している人や成立させている場所を目の当たりにし、「俺はまだまだ何もできていない」と急に自信を失うこともある。

旅の道中、海や山といった自然に向き合っている時など不便な状況の時にでる、自己中心的な本音や本性。それを仲間に指摘してもらうことで自分は成長してきた。

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

米カリフォルニア・ベニスビーチのスケートボードパーク。いい仲間はお互いを高め合う

色んな体験を経て、現段階で何ができるのか? 何を学びたいのか? どう生きたいのか? 10歳の子供もいる。後ろめたい生き方はしたくない。例えば10年先の近い未来や何百年先の遠い未来を考える上で、いま、何が残せるのだろう?

自分の中にある考えに胸を張り、自分なりにやってきた結果や、旅した場所や出会った人から得た“これからを生きる上でのヒント”を、みんなと少しでも共有できたらと心がけている。

社会は、みんなの共通意識、つまり常識(国や人が違えば非常識なことかもしれない)で成り立っている。旅の中で見て感じた様々な常識を押し付けるのでなく、写真や映像で視覚化し伝えていければと思う。

人が成長していき、自然の一部であることをもう一度頭に入れ、この美しき地球で共存していく。

隠し事をしたりだましあったり、少数者だけが優位に立つような考え方や、腹の中では何を考えているのかわからないような生き方はしたくない。人間の都合を優先するのではなく、まず水や酸素といった自然の環境ありきで生きられるよう、自らを見直す。

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

福島県。放射性物質を含んだ除染廃棄物が入ったフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)の山

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

岐阜県の白川郷。春の日差しに照らされたつららから水が滴っていた。この水の美しさは特別

人間は、水と自然の恵みである食べ物を口にしてできている。改めて自分たちも自然の一部だということ、地球という一つ屋根の下に住んでいることを理解したい。当たり前すぎて見失いがちだが……。

戦争、政治、ビジネス、社会貢献、地域活性、高齢化社会などいくらでも社会の課題はあるだろう。今の僕にできることは、批判に時間を割くのではなく、旅を重ねることで直感的に社会の情報を集め、まずは日常生活の中で意識を変えていくことだと思う。

写真家が世界を旅した記憶、映画『Play with the Earth』への思い

騎馬劇団「ZINGARO」の取材で出会った、ルーマニアの楽団。彼らはいつも笑顔で、周りにはいつも音が響いていた

話を戻すが、なぜ、映像作品を作るのか?

そのことがきっかけで頭を整理でき、アウトプットすることで、周りとの共通性も見えてくるからだ。

何が正解なのかはわからない。ただ自分にとっては、どうしていきたいかを形にするのは大事なことだと思うので、これからも旅をして写真や映像を撮り続け、微力でも地球のために役に立ちたい。

中国・桂林。水墨画のような風景

中国・桂林。水墨画のような風景

青森県・八戸漁港のカモメ。2011年の東日本大震災直後、六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場を状況確認に訪れた途上で

青森県・八戸漁港のカモメ。2011年の東日本大震災直後、六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場を状況確認に訪れた途上で

インド・ラジャスターン州の砂漠の夕日

インド・ラジャスターン州の砂漠の夕日

  

■Play with the Earth 公式HP
http://playwiththeearth.com

PROFILE

志津野雷

写真家、シネマ・キャラバン主宰、「逗子海岸映画祭」発起人。自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続ける。ANA機内誌『翼の王国』や、ロンハーマンなどの広告撮影を中心に活動。2016年初の写真集「ON THE WATER」を発売。

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