167人のクリエイターが大堀相馬焼とコラボした「ちいさな豆皿」展

167人のクリエイターが大堀相馬焼とコラボした「ちいさな豆皿」展

「クリエイションギャラリーG8」の会場入り口

リクルートホールディングスが東京・銀座で運営するギャラリー「クリエイションギャラリーG8」と「ガーディアン・ガーデン」が、クリエーターと福島の窯元がつくる「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」という展覧会を2018年12月22日まで開催している(日曜休館)。

会場には167人のクリエーターがデザインした計167種類の豆皿を展示。気に入ったものは購入することもでき、収益金はセーブ・ザ・チルドレンに寄付される。クリスマスデートで立ち寄るにはぴったりの、心温まるイベントだ。

大御所もボランティアで参加

167人のクリエイターが大堀相馬焼とコラボした「ちいさな豆皿」展

展示に使われている木材も地元のもの

リクルートホールディングスは1990年から年1回、アートやデザインの楽しさを感じられるチャリティープロジェクトを開催している。2009年より「CREATION Project」と題し、2011~15年は東日本大震災の義援金として計1134万円、2016年は熊本地震の義援金として158万円を寄附(きふ)してきた。

今回、「クリエイションギャラリーG8」(リクルートGINZA8ビル1階)には、仲條正義、宇野亞喜良、浅葉克己、湯村輝彦、ユムラタラ、矢吹申彦、葛西薫、日比野克彦、ひびのこづえといった大御所106人の作品を展示。そこから徒歩3分の「ガーディアン・ガーデン」には、新進気鋭のクリエーター61人の作品が並べられている。

167人のクリエイターが大堀相馬焼とコラボした「ちいさな豆皿」展

食べ物を載せるだけでなく鑑賞用としても

イラストは、いずれもクリエーターのボランティアで制作されており、遊び心を生かしたオリジナリティーのあるものばかり。直径約8.3センチの小皿は刺し身しょうゆやおつまみを入れるのに適したサイズ。売り切れの場合でも会期中は、通販サイト「ポンパレモール」で予約注文を受け付けている。

土を練る音やゆう薬をする音、窯の中で焼き物にひびが入る乾いた音など、会場のBGMとして、音楽家の蓮沼執太が窯元で採取した「音」で構成された環境音楽が流れている。また、福島から取り寄せた木材を使って豆皿を展示し、現地の空気感を演出している。

地元の祭りでのワークショップが突破口に

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「十日市祭」でのワークショップのデザインを商品化した豆皿(写真提供=リクルートホールディングス)

大堀相馬焼のルーツは、江戸時代の元禄期にさかのぼる。相馬藩の献上用だったが、明治以降は藩の保護政策がなくなり、他の焼き物に対抗するために特徴を打ち出した。冷めにくいが、手で持っても熱が伝わりにくい二重構造の湯飲みに、縁起のいい左向きの馬の絵。緑色のゆう薬の原料となる砥山石を使い、貫入(ひび模様)に墨を入れて仕上げるというものだ。

浪江町からは良質な土とゆう薬が採れ、町内には25もの窯元があったが、震災の影響ですべて町外へ。10軒の窯元は県内の別の地域に拠点を移して窯を新調したが、土は帰宅困難区域にあるため町内から調達できず、現在は愛知県の瀬戸土を使っている。

一部地域を除く避難解除に伴い、昨年11月、7年ぶりに浪江町で伝統の「十日市(とおかいち)祭」が開かれた。300を超える露天が立ち並ぶ中、松永窯の松永武士さんは、新しい大堀相馬焼を切り拓(ひら)くことを目指したブースを設けた。

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松永窯の松永武士さん。大堀相馬焼のリブランディングによる活性化を目指す

「地元の人々に思い出の風景や特産物など絵を描いてもらい、それをもとに大堀相馬焼の新しいおみやげ品となる豆皿を作るワークショップを開いたのです。おかげさまで幅広い世代の協力を得て、2日間で合計200点ほどのデザインが集まりました」

福島大学の学生とデザインを整理し、伝統的な馬の絵のほか、「いくら」「いわな」「凍(し)み餅」「夜ノ森の桜」という四つの新しいモチーフをデフォルメ。これを地元の五つの窯元により、5枚セットの商品として完成させた。

新しい大堀相馬焼をいつか復興するために

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デザインの制作に臨む浪江町の子どもたち

「十日市祭」での成功を踏まえ、今年夏には浪江町立なみえ創成小・中学校で、本展の関連企画として豆皿デザインのワークショップを再び実施。このときに制作されたデザインも、子どもたちが笑顔で思い思いの絵を描く様子とともに、会場に展示されている。

松永さんは、いつか窯を浪江町に戻し、地元の土と釉薬で再び大堀相馬焼を復興させることを夢見ている。そのときに備えて、従来の伝統工芸品だけでない新しい焼き物づくりのノウハウを身につけることが必要だと考えている。

「今回の豆皿づくりは、私たちにとっても大きな挑戦でした。アーティストさんは平面、私たちは立体の仕事をするという違いもありますし、伝統工芸品の味として許されてきたタレや変色も、今回のような製品づくりでは許されません」

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日比野克彦・ひびのこづえ夫妻の作品も

これまで交流のなかったアーティストとのコラボによって、より厳しい水準の仕事が求められることもあったということだ。松永さんはこのような経験は、将来に向けて新しい大堀相馬焼を作っていくうえで欠かせないことだと考えている。

「震災から7年経過していますし、私たちも次のステージに進むべきでしょう。伝統工芸や被災地という困難を超えて、産地のステージを上げていく。これから大きな企業と取引することなどを考えると、試行錯誤しながら、これまでと次元の違う高いレベルでの仕事をすることは、とてもいい経験になったと思います」

(文・写真 相知 光)

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