あの街の素顔

熊本・天草を歩く 潜伏キリシタンの足跡をたどって 

12の資産で構成されている「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が今年、世界文化遺産に登録された。島原・天草一揆(1637~1638年)の後、江戸幕府によりキリスト教が禁じられている中で、信仰を続けた「潜伏キリシタン」が育んだ独特の文化的伝統を示す遺跡群だ。構成資産の一つである「天草の﨑津集落」や、その周辺を巡る旅をした。

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﨑津教会

熊本市内からレンタカーを走らせて、およそ2時間半。ようやく天草の﨑津集落にたどり着く。こぢんまりとした港町という印象だが、世界文化遺産登録もあって、街は活気づいている。平日にもかかわらず観光客の姿をあちらこちらで見かけた。

集落のシンボルである﨑津教会。木造の教会の老朽化に伴って、長崎出身の建築家・鉄川与助(1879-1976)が、フランス人宣教師・ハルブ神父の依頼を受け、1934年に建てた。ゴシック様式の教会で、内部は国内でも数少ない畳敷きだ。禁教期に「絵踏」(えぶみ)が行われていた庄屋役宅跡に建てることで、「復活の象徴としたい」という思いが込められたという。

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﨑津教会の敷地内にある聖母マリア像

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﨑津諏訪神社

﨑津教会から徒歩2分ほどのところにある﨑津諏訪神社。1647年の創建と伝わる。潜伏キリシタンが発覚した「天草崩れ」(1805年)の舞台となった神社で、代官所の役人は取り調べの際、信心具を境内に設置した箱に捨てるように指示したという。

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﨑津諏訪神社の狛犬(こまいぬ)

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﨑津諏訪神社から「教会の見えるチャペルの鐘展望公園」へ続く階段

﨑津諏訪神社の中を進むと、急な階段が突如現れる。「教会の見えるチャペルの鐘展望公園」へ続く、約500段の階段。うっそうとした森の中を、息を切らせながら、休み休み登る。頂上まで行くと、﨑津教会や漁港が見下ろせる絶景が広がっていた。体力に自信がある人はぜひ登ってみてほしい。

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神道、仏教、そしてキリスト教が一体となった御朱印

世界文化遺産登録を記念した御朱印を見つけた。神道、仏教、そしてキリスト教のものが並ぶ珍しい御朱印である。左の御朱印は﨑津教会、中央は曹洞宗の普應軒、右は﨑津諏訪神社のもの。3宗教が支えあってきた歴史がある天草らしい御朱印だろう。

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「海月」の握りずし

﨑津のランチでおすすめしたいのは、﨑津教会のすぐ近くにある「海月(くらげ)」。表通りから一本入った場所にあり、おしゃれ隠れ家のようなたたずまい。天草の新鮮な魚介を生かした絶品のすしが味わえる。注文したのはおまかせ握りずし。大将が一貫一貫丹精込めて握ってくれる。その魚をどうすれば一番おいしいのか、握り方、あぶり方、しょうゆや調味料にまでこだわりを感じた。久々にうまいすしを食べたと大満足だ。

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﨑津地区で見かけた小道「トウヤ」

集落では民家の軒先で注連縄(しめなわ)を見ることがあった。これはキリシタンだと疑われないための禁教下の工夫という説もあり、独特の景観だそうだ。また、幅約90センチの小路「トウヤ」も﨑津らしい景色。民家の軒と軒に挟まれた小路で、海へと続く。漁村の生活に密着した交流の場にもなっているという。

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大江教会

﨑津集落から車でおよそ10分のところにある大江教会。キリスト教解禁後、天草で最も早く建てられた教会だ。現在の建物は1933年に建てられた。私が訪れた時は、老齢の女性が静かに祈りを捧げていた。

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大江教会の敷地内で見かけた聖母マリア像

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天草ボタン

天草西岸地域で掘り出される天草陶石からつくられた「天草ボタン」に一目ぼれした。なんとも可愛らしい手作りのボタン。宿「石山離宮 五足のくつ」で、自分へのお土産用に購入した。きっとこのボタンを見るたびに、この天草の旅を思い出すのだと思う。

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天草四郎像

天草にはミュージアムが数多くある。天草市立天草キリシタン館では、キリスト教伝来以降の南蛮文化や、島原・天草一揆の資料、潜伏キリシタンの遺物などを展示していた。歴史背景を知ってから街を巡ると、見えるものがまた違ってくる。時間があればぜひ立ち寄ってほしい。

PROFILE

「あの街の素顔」ライター陣

こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、松田朝子

五月女 菜穂(そうとめ・なほ)

ライター
1988(昭和63)年生まれ。東京都出身。朝日新聞記者として地方を転々とした後(新潟→青森→京都)、2016年からフリーライター。2017年1~3月に弾丸世界一周。
公式HP

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