旅空子の日本列島「味」な旅

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

高津柿本神社境内からの高津川の眺め

島根県の西部はかつては石見(いわみ)の国。益田は鎌倉時代、益田兼高が七尾城を築いて以来、この地方の中心都市として栄えてきた。

駅前の観光協会で福原あさみさんに、マップでアドバイスを受けたあと、東西に長い市街地をアシスト付きのレンタサイクルで回ることにした。

歴史の古さに敬意を払って、最初に市街の西方、清流の高津川を渡り、石見国府の役人として赴任したとされ、多くの和歌を詠んだ万葉歌人・柿本人麿を祭る高津柿本神社に参拝した。

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

柿本神社拝殿前にある万葉歌人の人麿座像

石段を上がった高台に建つ本殿は入り母屋造り・ひわだぶきの風格ある建物で、拝殿前には和歌の神様とあがめられる人麿座像があった。境内には、「鴨山の岩根しまける吾をかも知らにと妹が待ちつつあらむ」「石見のや高角山の木の間よりわが振る袖を妹見つらむか」など、石見を詠んだ歌の看板が立っている。展望所からは日本一の清流にもなったダムのない高津川や赤い石州瓦の益田の町も見下ろせた。

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

入り組んだ湖岸線が多様な趣を見せる蟠竜湖

社殿に隣接して人麿にちなみ万葉集に詠まれた植物が150種あまり植栽されている。人麿展望広場のある蟠竜湖(ばんりゅうこ)を含めて一帯は県立万葉公園になっている。諸説はあるが人麿が亡くなったのはここ益田の地、地震と大津波で海中に没したが、かつて中須沖にあった鴨島が終焉(しゅうえん)の地という説が根強くある。

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

萬福寺の本堂の前で出迎えてくれる雪舟像

一方、市街の東側、益田川の周辺は室町時代の画僧・雪舟ゆかりの地。城主益田氏の菩提(ぼだい)寺で、国の重要文化財指定の萬福寺には雪舟作庭の池泉回遊式兼観賞式の庭園がある。

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池泉回遊式兼観賞式の萬福寺の雪舟庭園

その先の医光寺は雪舟が住職を務めた寺で、池泉観賞半回遊式の雪舟庭園は趣深く、縁側に座してしばし庭に見入った。

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

住職を務めた医光寺に作った名勝の雪舟庭園

備中(岡山)生まれという雪舟の生涯も不明な部分があるが、晩年を過ごし、亡くなったのは市街北方の小高い丘にあった東光寺といわれる。焼失したのでこれを復興する形で建てられたのが大喜庵で、雪舟の墓がある。

隣接して雪舟が留学した明の天童寺を模して作品を展示する中国風の雪舟の郷記念館が建てられた。雪舟禅師像は高村光太郎の父の光雲の作だという。

和歌の神様の人麿と日本山水画の大成者の雪舟が晩年を送った益田の町。もう一度訪ねたくなった。

柿本人麿と雪舟ゆかりの史話に心ひかれる 島根県益田市

古くから益田名物土産の鶏卵堂の鶏卵饅頭(まんじゅう)

聞けば清流と荒海と田園からはアユやハマグリ、ユズ、ワサビなどの名産品がとれる。さらに12月~2月には市域北端の荒磯温泉近くの海に迫る台地の唐音水仙公園では、寒気の中に200万球を超える水仙が凜(りん)として、ふくいくとした香りとともに白い花のじゅうたんを繰り広げるという。人麿や雪舟とともに心ひかれることがまた増えた。

〈交通〉
・羽田空港から萩・石見空港まで全日空で1時間45分
・JR山陰本線・山口線益田駅下車
〈問い合わせ〉
・益田市観光協会 0856-22-7120
・益田市観光交流課 0856-31-0331

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

外浦と内浦の二つの海辺に暮らしが息づく石川県・奥能登

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蔵王を望む城下町の温泉街 山形県上山市

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