楽園ビーチ探訪

タイムトリップしたような異文化体験 インドネシア・スンバ島

タイムトリップしたような異文化体験 インドネシア・スンバ島

スンバ島はグッドウェイブのスポットとしてサーファーの間で有名

異文化というものには、どこか遠い秘境で出会えるものだと思っていました。だから、おなじみのインドネシア・バリ島から空路約50分の島で、500年前の慣習を守っている人たちと会えるとは想像もしていませんでした。“知られざる極上のサーフスポット”くらいの知識しか持ち合わせずに訪れたので、驚きもひとしおです。

インドネシアのスンバ島はバリ島の2倍のサイズがありながら、人口は6分の1ほどの75万人。島内を車で走っていても、村から一歩出ると乾燥した丘や低木が少々生えた平原が続き、人の暮らしをあまり感じません。けれど、最初のヨーロッパの船がこの島を訪れた16世紀頃は、今とは様子が異なっていたようです。サンダルウッド(ビャクダン)の森が島を覆い、かつては“サンダルウッド島”と呼ばれていたほど。上質な木材を手に入れるための伐採につぐ伐採で、今のような丸裸になってしまったとか。

タイムトリップしたような異文化体験 インドネシア・スンバ島

美しい伝統的な織物、イカットもスンバ島の名産

最初のヨーロッパ人は上質なイカット(織物)をまとった誇り高き人々のことや巨石の墓についても記録したそうです。そして、今も村に残る光景はその人が見たものと、そう変わらないものでしょう。

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村に残る伝統的な“マラプ(精霊)の家”。現代風の家でも屋根をこの形にしているところも

村に入ってまず目を引くのは、とんがり帽子のような“マラプ(精霊)の家”の連なり。チガヤの葉でふいた屋根の突き出た部分は、天国に近い“橋”のシンボルで、精霊たちのための場所。家ごとに高さを競って建て、高いものでは10メートル以上もあるとか。このマラプのためのスペース、家の中で最も神聖な場所で、先祖代々の家宝もここに置きます。また、床は竹を粗く編んであり、食事中に食べ物が落ちたら軒下で飼っているブタたちの食事になるよう工夫がされています。

そして、村の中や道路脇でも見かけて驚いたのが、巨石の墓。平均6トン、大きいものでは20トンを超えるという巨石がどすんと鎮座しているのです。かつては妻や奴隷、ブタや牛などの家畜も家長と一緒に埋葬されたとか。

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道路脇に置かれた巨石の墓。墓の規模は一家の繁栄の象徴

かつてスンバ島の輸出品でサンダルウッドと並ぶメインの品だったのは、スンバ馬。小柄で足腰が強く、暑さにも強いスンバ馬は人気が高かったといいます。馬は交通手段としても重宝されていますが、とりわけ重要な役を果たすのが毎年2~3月に開催される「パソーラ」の儀式です。これは豊作を願って行う、村対抗の騎馬戦。ひとつの村につき100人以上のチームが編成され、槍を手にスンバ馬にまたがって戦います。毎年負傷者が続出し、時に死者が出てしまうことも。お祭りなのだから安全第一にと思ってしまいますが、この島では流れた血が多いほど、血が染み込んだ土地は豊かになり、豊作が期待できると考えられているのです。

タイムトリップしたような異文化体験 インドネシア・スンバ島

小柄ながら丈夫なスンバ馬。“パソーラの儀式”に欠かせない存在

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通りすがりの小学校で見かけた、伝統舞踊の練習風景

昔からの慣習が色濃く残る島ながら、セレブ御用達の隠れ家リゾートもあります。南西部にあるニヒ・スンバは、ファッションブランド「トリー・バーチ」の元取締役クリストファー・バーチが前オーナーから引き継ぎ、次世代的エコリゾートを実現。「Travel + Leisure」誌の2016年と2017年ワールド・ベスト・ホテルに選出されました。2.5キロも続くビーチのサーフスポットは、ゲストだけで貸し切り。すべてデザインが異なる1~5ベッドルームのヴィラが27棟(部屋貸しOK)あり、すべて執事サービスつきです。あのベッカム一家もバカンスで訪れたことがあります。

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27棟すべてのヴィラのデザインが異なるニヒ・スンバ

収益は前オーナーが設立したスンバ財団を通して、地元の暮らしに還元されているそうです。病院建設や小学校の給食、100カ所以上の井戸建設、マラリア予防など、貧窮が問題だった島の暮らしが少しずつ改善されているとのこと。ニヒ・スンバでは異文化体験&ネイチャー体験をしながら、気持ちよくラグジュアリーな貢献もかなえられるのです。

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約2.5キロのビーチがリゾート前に広がる。敷地内にはスンバ馬の厩舎もある

ニヒ・スンバ
http://luanallc.com/nihi.html

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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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