京都ゆるり休日さんぽ

焙煎したてのコーヒーと古道具が彩る 人気カフェWIFE&HUSBANDの新拠点

焙煎したてのコーヒーと古道具が彩る 人気カフェWIFE&HUSBANDの新拠点

七条堀川南にたたずむビル。COFFEEの文字が印象的

京都駅から西に15分ほど歩いた堀川通沿い。古びた3階建てビルの外壁に、ある日、「COFFEE」のサインが掲げられました。通り過ぎる人の目に留まることもほとんどなく、時間が止まっていたかのようなビルが、再び時を刻み始めたのはそのころからです。アンティークの美しい観音扉のガラスには、見覚えのある文字でこう書いてありました。「ROASTERY DAUGHTER(ロースタリー・ドーター)」「GALLERY SON(ギャラリー・サン)」(以下D&S)

焙煎したてのコーヒーと古道具が彩る 人気カフェWIFE&HUSBANDの新拠点

焙煎したてのコーヒー豆が並ぶ「ROASTERY DAUGHTER」

ここは、市内の人気カフェ「WIFE&HUSBAND(ワイフ&ハズバンド、以下W&H)」が手がける焙煎所(ばいせんじょ)&ギャラリー。1階は、大きな焙煎機と新鮮なコーヒー豆が並び、2階は店主の感性で集められた古道具が展示販売されています。扉の文字に見覚えがあったのは、北大路にあるカフェのドアに記された「WIFE&HUSBAND」の書体と同じだったから。店主の吉田恭一さん・幾未さん夫妻が2人で始めた店の新拠点として、「娘と息子」を名前に入れた店が昨年12月に加わりました。

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夫婦で始めたW&H。新店舗は自然と子どもにちなむ店名に

「カフェの小さな焙煎機では、焙煎できる量に限界がありました。もっとたくさんのお客様にコーヒーをお届けしたい。そう思いつつも、理想の物件にめぐり会えないまま1年半が経ちました。そんなとき、偶然通りかかったこの場所で、このビルが目に留まったんです」。帰宅した幾未さんが早速恭一さんに話すと、恭一さんもネットで見つけて気になっていた物件だということが判明。その直感は、実際に建物を見たとき確信に変わりました。

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販売スペースの隣には大きな焙煎機が

焙煎機が入り、アンティークの扉が付き、古い道具や照明が次々と運び込まれ、2人のイメージする、コーヒーの香りと古道具の詩情に満ちた空間が少しずつ形になっていきました。外壁に「COFFEE」のサインを付けた理由を尋ねると、恭一さんはこう答えました。「COFFEEの文字って、英語が母語じゃなくても、ひと目で伝わるでしょう? 国や言語に関係なく、ふと通りかかった人が扉を開けてくれたらなと思って。ただ、よくカフェと間違われてしまうんですけどね」

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端正な紙箱のコーヒー豆が並ぶ(200g 1512円・税込み)

棚には、ギフトにしても、そのままキッチンの片隅に置いても美しい、ネイビーの箱に入ったコーヒー豆が並びます。W&Hを始めたときに作ったオリジナルブレンド「DAUGHTER」と、この焙煎所&ギャラリーのオープンに合わせて作った新ブレンド「SON」、そしてシングルオリジンの豆が数種。どれも吉田さん夫婦が好む深煎りで、酸味が少なくコク深い味わいに仕上げています。香り高く後味がすっきりとしたDAUGHTERに比べて、SONはよりコクが深くミルクに合うどっしりとした風味。「実際は……、娘の方が強いかなぁ(笑)」と、2人は自分たちの子どもを思い浮かべて目を細めます。

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ショーケースにはグリーンの簡易包装のコーヒー豆、赤い箱に2〜3種を詰めたギフトセットも

また、この焙煎所ならではのコーヒー豆のパッケージが、箱ではなくグリーンの薄紙でくるりと包んでお渡しするというもの。自宅用にコーヒー豆を求める常連のお客様の「箱はもったいないから、簡単な包装でいいですよ」という声がきっかけでした。この「紙で包むだけ」というアイデアは、幾未さんが商店街の精肉店で買い物した際、ぶら下げた薄紙をピッと引きちぎり、ササッと包む仕草を見ていて思いついたとか。たくさんコーヒー豆を作るようになっても、どこかアナログで、手から手へと渡される感覚を大切にする――。2人の思いが形になったような方法です。

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GALLERY SONには恭一さんの目で選ばれた古道具が並ぶ

ギャラリーに並ぶのは、カフェでも使っているフランスのテーブルウェアやヨーロッパの古着、恭一さんがコツコツと骨董市(こっとういち)に通って見つけた古道具やパーツなど。W&HとD&S、二つの店を彩る物語のカケラを一つひとつ集めてきたような空間です。用途のわからない金属のパーツや本来の姿を失った道具を、お客様と一緒に「どう使いましょうか?」と話す恭一さんの姿が「何より楽しそう」と幾未さんはほほえみます。

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子ども服、紙箱の束、卓球ラケット。古道具談義が楽しい

「人と話すことが好きなんです。だから、店を増やしても、経営に徹するのではなく、いつもプレーヤーでいたい。お客様の喜ぶ顔を目の前にするとうれしくて、その瞬間、喜ばせていただいているのは僕らの方だなと思うんです」。2階の窓から通りを見下ろしながらそう語る恭一さんの視線の先には、大きなバックパックを背負って扉を開く外国人のお客様の姿がありました。焙煎したてのコーヒーの香り、時を経た古道具たちの美しさ、端正なデザインのコーヒー豆。言葉などなくても伝わる喜びを一つひとつ集めたこの場所で、これからどんな物語が奏でられてゆくのか、楽しみでなりません。(撮影:津久井珠美)

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昨年12月オープン。京都駅からの散歩がてら立ち寄りたい

ROASTERY DAUGHTER & GALLERY SON
(ロースタリー・ドーター&ギャラリー・サン)
http://www.wifeandhusband.jp

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

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