旅空子の日本列島「味」な旅

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

五浦海岸のシンボル、岡倉天心が建てた六角堂

上野駅からJR常磐線で北上すると、2時間近く経った磯原駅あたりからようやく海が見える。だが、ほどなく海を離れて、やがて大津港駅に着いた。駅名に港が付くが、海は東に数キロほど離れていて、タクシーで5~6分走ると、太平洋の荒波が打ち砕ける断崖と岩礁が入り江をなす変化に富んだ五浦(いづら)海岸があった。

1903(明治36)年、茨城出身の画家の案内でここを訪れた美術評論家の岡倉天心がこの地を気に入ってすぐに土地を購入。3年後に低迷期にあった日本美術院の研究所をこの地に移して、近代日本美術の復興を目指して本拠地とした。

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

暮らしぶりをしのばせる和風建築の天心邸

天心を慕う横山大観、下村観山、菱田春草ら新進気鋭の画家たちも家族とともに移り住み、芸術活動を展開する。切磋琢磨(せっさたくま)しながら制作にいそしんだ彼らは文展などに出品して高い評価を得て、ご存じのように後年、それぞれが大家となった。

小さな岬の突端の岩場に天心の設計で建てられた東屋風の赤塗りの六角堂(観瀾亭=かんらんてい)は茶室のしつらえで、日本と中国との折衷建築である。2011年の東日本大震災の折に津波に跡形もなくさらわれたが、早期に復元された。

入り口は「茨城大学五浦美術文化研究所」の看板のかかる長屋門。天心の屋敷跡で広い庭園や天心邸、天心記念館、六角堂が入り江に臨む園地に立っている。

ここから南へ15分ほど歩いた五浦岬公園からは、海と波を前にした赤塗りの六角堂や断崖の海岸風景が間近に見える。東日本大震災の展望慰霊塔に上がると紺碧(こんぺき)の太平洋や五浦海岸、小名浜、いわきの海岸など360度に視界が開けた。

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

五浦岬公園から見下ろす景勝の五浦海岸

南側にほっそりと立つのは東日本大震災の損壊から建て直された白亜の大津岬灯台。その先を西に回り込んだ先にアンコウなども揚がる大津港がある。

食事は断崖にせり出すように建つ五浦観光ホテルの「別館 大観荘」にあるレストラン椿(つばき)で、六角堂など眺めながら新鮮な魚介の刺し身などに舌鼓を打った。

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

レストラン椿(つばき)で味わった昼食の海鮮料理

食事の後に10分ほど歩いて茨城県天心記念五浦美術館に入った。岡倉天心の書簡や写真、遺品をはじめ横山大観や菱田春草ら五浦にゆかりの画家の作品も鑑賞できた。

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

レストラン椿(つばき)で味わった昼食の海鮮料理

潮風と美術が薫る入り江と岬の海岸美 茨城県・五浦海岸

天心記念五浦美術館横の展望所からみた海岸風景

海の景勝と近代日本絵画の揺り籠が織りなす五浦海岸や野口雨情の生まれた磯原など魅力が尽きない北茨城の一日だった。

〈交通〉
・JR常磐線大津港駅から六角堂までタクシーで約1000円
〈問い合わせ〉
・北茨城市観光協会 0293-43-1111

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

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