楽園ビーチ探訪

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

スティーブ・マッカリー(ナショナルジオグラフィック誌の表紙を飾ったアフガニスタンの少女を撮影した報道写真家)の、ドラマチックな竹馬漁の写真を見た時、思わず「あ!」と声が漏れました。実はそれ、以前スリランカの南部を車で移動時に「なんだろう?」と気になりながらも、通り過ぎてしまった風景だったのです。竹馬漁というものなのか!

竹馬漁とは、浅瀬に立てられた竿(さお)の高い位置に設けられた座面に漁師が座り、日がな一日漁をするというもの。場所によってはその竿が何十本も海に立つ、不思議な光景となります。見た目は伝統的な漁法のように思えますが、実は始まったのは第2次世界大戦の頃。食糧難と釣りスポットの混雑から、少し沖に出ればいいのではと考えた漁師がいて、最初は難破船などの上で釣っていたのが、竿を利用するようになったそうです。かつてはスリランカの幅広いエリアで行われていましたが、今では南部のウナワトゥナからウェリガマにかけての約30キロの間でみられるくらいです。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

サーフスポットとしても有名なウェリガマ。幅広い年齢層のサーファーが集まっています

マッカリーの写真を見てから数年が経ち、竹馬漁を見にウェリガマへ。サーファーが波乗りしている隣の浜の浅瀬で、2人の漁師が釣り糸を下げています。
「釣れましたか?」
「朝7時からやっているけど、まだだね」
話を聞いたのは、昼近く。16歳の時から37年間竹馬漁を続けているというリラーラットさんは、ペットボトルとお弁当を竿に引っ掛け、気長に魚がやってくるのを待っているようです。

海岸線を車で走っていると、竹馬漁の看板を発見。こちらは観光客向けで、写真を撮るには500ルピーを請求されますが、いろいろ説明もしてくれます。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

数本の竹馬漁の竿が並ぶ、こちらは観光向け。「一緒に撮影する?」とサービス満点

それによると、釣り針には餌がついておらず、キラキラと反射する光に誘われて近寄ってきた魚を引っ掛ける漁法。釣り針は携帯電話の修理に使うリチウム棒を焼き、輝きを強めてあるのだとか。海に竿を立てるのは影を最小限にして、魚を警戒させないためだといいます。
「500ルピーで竹馬漁の竿に座らせてあげるよ」
観光客のための記念撮影も、収入源になっているようです。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

キラキラ光るよう加工した竹馬漁の釣り針

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

ウェリガマのメリッサビーチ。夕刻のオンザビーチのレストランはサンセットを迎える客でにぎわっています

ふたたび車で海岸線を行くと、沖に小さな島が浮かんでいるのが見えてきました。タプロバネ・アイランドという、1組しか滞在できない島リゾートです。
この島は、もともとはイギリスの造園家にして家具職人のカウント・ド・マウニー(モーリス・タルバンド)が、1920年代に自分のための楽園を造ろうとした場所です。コブラの捨て場だった島を整備して木々を植栽、邸宅を建て、家具や備品まで造ったそうです。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

丘から見たタプロバネ島。満潮時だったからか、意外と水深がありました

事前にタプロバネ・アイランドと連絡がつかなかったので、陸地から30メートルほど離れた小島を見つめながら「どうしよう?」と悩んでいたところ、ガイドさんが「行きましょう。ここまできてあきらめてはだめです」と、ずんずんと海に入っていきました。お迎え(象や輿<こし>に乗るらしい)がないので、腰まで海につかりながら海を渡り、ずぶぬれになって島に上陸します。

ガイドさんが交渉してくれたおかげで、幸いにも島内を見ることができました。おわんを逆さにしたような島は、濃密な緑に熱帯の花々が色を差す美しい庭園が広がり、小道や階段が高低差を生かしてめぐらされていました。中央の高台の「蓮(はす)のホール」と呼ばれる八角形のドーム形施設からは、木々の向こうに海がちらちらと望めます。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

カウント・ド・マウニーの「蓮のホール」。現在、彼の作った家具はないのが残念

実はここ、米国の作家ポール・ボウルズが所有した時期もあったとか。次回はずぶぬれではなく、きちんとゲストとして訪れたいステキなリゾートでした。

竹馬漁と英国造園家が手がけた楽園 スリランカのウェリガマ

陸地が見える木々に包まれたインフィニティプール。ゲストの多くは滞在中、この島から出ることなくのんびりと過ごすそう

取材協力/エスティ・ワールド
https://stworld.jp/
トラベルファクトリー・ジャパン
http://www.tf-jpn.com/

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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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