京都ゆるり休日さんぽ

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

一口でいただける愛らしいサイズ。こちらはタイの昆布じめ

「どうぞ、つまんでいって」。京都で、立ち寄り先でお菓子を出していただいたとき、そんなふうに声をかけられることがあります。和菓子のように、指先でちょんとつまめるほど小さくて愛らしい「つまみ寿(ず)し」は、北山の和食店「花梓侘(かしわい)」の名物。折り目正しく木箱に並んだ手まりずしは、色も意匠も一つひとつ違い、じっくり眺めてからいただきたくなるたたずまいです。桃の節句をはじめ、さまざまなお祝いの食卓を彩るお取り寄せとして、北山のお店でのみいただける少しぜいたくなランチとして、メニュー誕生から20年近く愛されてきました。

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

店頭には古美術品から作家の品までさまざまな和食器も並ぶ

つまみ寿しは、オーナーの柏井順子さんの娘・梓さんのアイデアから。うつわと和食の店としてコース料理などを提供する中で、「コースの前菜のひと品のような上品さがありつつ、もっとカジュアルに、色んな味を少しずつ楽しむ料理をお出しできたら」と考案しました。鮮魚が手に入りにくかった土地柄、保存性を高めた素材を用いてきた京ずしの文化に習い、ネタの多くは昆布や酢でしめたり、煮付けたりとひと手間加えたもの。そこに、お漬物、湯葉、生麩(ふ)など京都ならではの食材をちりばめ、多彩な味を一度に楽しめる一箱になりました。

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

「つまみ寿し15貫」(3,132円・税込み)

15貫の木箱に並ぶのは、タイの昆布じめやしめサバ、スモークサーモン、京都の老舗「ゆば長」の湯葉や「半兵衛麩」のよもぎ麩など。春先はタコに桜の香りをまとわせて煮付けるなど、季節を感じられる工夫も忘れません。京ずしではシャリを甘めに作ることが多いですが、花梓侘では砂糖を控えて赤酢であっさりと仕上げ、ネタの香りや食感を引きたてます。

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

「くみあげ生湯葉のお料理」(540円・税込み)

つまみ寿しのランチには赤だし、5種類から選べるデザートが付くほか、追加で単品料理を組み合わせることも可能。くみあげ湯葉に季節の味覚を添えた一品のほか、才巻エビの天ぷら、おばんざい盛り合わせなど。ほっとする家庭的な献立ながらも、和食器の店ならではの繊細なうつわ使いと手間ひまをかけた奥行きのある味わいに、リピーターも数多く訪れます。

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

古伊万里の並ぶ棚。料理のうつわ使いも参考になる

「古伊万里が好きで、1985年にうつわの店をオープンしたのが始まりです。料理とともにうつわの良さを感じていただきたくて、1995年に気軽に楽しめる和食の店をスタート。娘はイメージをふくらませるのが得意で、つまみ寿しをはじめ、こんな見た目や組み合わせはどうかとよくアイデアを出してくれて。母娘で試行錯誤しながら、自分たちがおいしいと思う味をかたちにするのは楽しかったですよ」と柏井さんは話します。

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

モダンなインテリアの空間で気軽に和食を楽しめる

背筋を伸ばしてカウンターでいただく高級ずしではなく、母と娘で、家族や友人で、お祝い事やお花見の席で「どれから食べる?」と話しながらいただくおすし。つまみ寿しという名前からは、そんなにぎやかな食卓の風景が浮かんでくるようです。手のひらにのるほどの小さな口福を、おひとつつまんでみませんか。
(撮影:津久井珠美)

おひとつつまんで。和菓子のような「花梓侘」のつまみ寿し

京都・北山エリアの閑静な住宅街の中にたたずむ

花梓侘
http://kyotojapon.co.jp
※ランチ、持ち帰りともに予約がベター

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

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