太公望のわくわく 釣ってきました

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

「海のギャング」と呼ばれるだけあって、サワラの顔はいかつく、歯は鋭い

釣り人から「よっしゃ!」という言葉が思わず出てしまう瞬間といえば、手練手管の技で魚を針にかけた時。しかも、針を付けた餌が本物ではなく、小魚に似せた鉛のジグの時はなおさらです。鉛のジグを小魚のように動かし、狙った魚をだまして、うまく針掛かりさせることができれば、アドレナリンが一気に出る。そんな快感を求めて、横浜市磯子区からジギング船に乗ってきました。

今回のターゲットは「海のギャング」と呼ばれるサワラ。鋭い歯が特徴で、太いハリスもサワラの歯に触れれば簡単に切れてしまうほど。かつては主に瀬戸内海で釣られる魚でしたが、近年では東京湾でも釣りのターゲットになりました。東京湾の釣りでは冬が中心ですが、「魚」へんに「春」と書くサワラを釣って、早々と春の訪れを感じたいところです。

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

JR根岸駅から徒歩10分。横浜市磯子区の市街地にある鴨下丸

2月下旬にお世話になったのは「鴨下丸」さん。JR根岸駅から歩いて10分。横浜市の中心部に近い都会の船宿です。出船は午前7時。海を40分ほど南下すると、神奈川県横須賀市の観音崎沖に既に多くの船が集まっていました。そのほとんどがタチウオを狙う船。サワラはその周囲にいるはずです。

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

タチウオを狙う遊漁船が観音崎沖に集まる。サワラもこの周囲にいる

ジギングは、鉛を魅力的に動かさないと魚が食いついてこないので、腕の差がはっきり出る釣りでもあります。私は餌釣り中心で、ジギングの腕はいま一つ。なので、ジギンガーの釣友・松村北斗さんに同行してもらい、釣り方を教えてもらうことにしました。

水深は60~80メートル。「海底から30メートルまで誘って」と船長さん。さっそく釣り開始です。鉛を小魚に見せる技の一つが、「ワンピッチ・ワンジャーク」という動作。分かりやすく言えば、竿(さお)を1回しゃくる(ジャーク)と同時に、リールを1巻きする。また1回しゃくって、1巻き。リズム良く続けると、竿を上にしゃくった分だけ、鉛の小魚が上へ上へと泳いでいくように見えます。

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

どの色や形のジグをサワラが好むかはその日次第だ

松村さんの滑らかな動作をまねしようとするのですが、これが難しい。竿を持つ右手に意識がいくと、リールのハンドルを握る左手がおろそかになり、左手に集中すると右手が……。ギクシャク、ギクシャク。私の鉛の小魚は、海の中では、ロボットのようなぎこちない動きかも。

ギクシャク、ギクシャク。「桃太郎さん、桃太郎さん♪」と歌いながらしゃくるとリズム良くいきますよ、と教わるも、なかなかうまく行きません。鉛の小魚は、突然泳ぎ出したり、止まったり。こんな鉛の物体を、餌と間違うサワラが果たしているのでしょうか。

でも、どこの世界にも、うっかりものはいるものです。辛抱強くしゃくり続けて、およそ1時間半。突然、ガツンと竿先が曲がりました。あわててリールを巻く私。竿がしなり、先がガガガ、ガガガと揺れます。ハンドルも重い。サワラかも!

「海のギャング」サワラを鉛の小魚で幻惑せよ! 神奈川・観音崎沖

サワラ(サゴシ)と格闘する筆者。リールが壊れて、糸をたぐることに……

ところが、ここでトラブルが。頑丈なはずの某米国メーカーのリールから突然、歯車が滑るような異音が聞こえてきました。次第にハンドルを回しても糸を巻き取れなくなり、最後の15メートルは道糸やハリスを手でたぐることに。周囲の釣り人からの視線を感じる私。恥ずかしい。

でも、サワラ(サゴシ)は何とか海面に現れ、無事タモに。全長55センチ。東京湾ではサゴシと呼ばれるサイズですが、それでも私にとっては貴重な1匹となりました。

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何とかサワラを確保して満面の笑みの筆者

指導役の松村さんは、相変わらず滑らかな竿さばきでジグを動かし、1匹、2匹、3匹と釣果を伸ばしていきます。時々、しゃくりを止め、道糸をゆるめて、糸ふけ(スラッグ)を出すと、上へ上へと泳いでいた鉛の小魚が、その時だけヒラヒラと落下します。この瞬間に、サワラが食ってくるとのこと。

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先生役の松村北斗さんの竿が大きくしなる。これはでかい

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ついに海面に浮上し、船長のタモに

午後1時前。ついに松村さんの竿が大きく曲がりました。ドラグがジジジジジと出ていきます。海面に現れたのは、1メートル近くある大きなサワラ。おそらく、この日の船中で最大。3.5キロもある迫力満点の1尾でした。これは、ひときわ脂が乗っていておいしそう!

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見事に、約1メートル、約3.5キロのサワラを釣り上げた松村さん

サワラは鮮度落ちが早いので、その場で血抜きをして内臓を取り除いてからクーラーにしまうのが、おいしく食べるコツ。翌日の夕飯で塩焼きにすると、スーパーで売っているサワラとはまるで別物といっていいぐらいの美味でした。身は軟らかく、繊細で何とも上品。塩がその味わいを引き立てます。

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この日は私が持っていない緑金がヒットカラーに

それなりに魚信がある餌釣りと違って、技術が無いと魚がアタックしてこないジギングは、修業のような釣りでもあります。結局、私が釣ることができたのは、最初の1匹だけ。その後は、何事も起こらない竿先を見つめながら、6時間しゃくり続けることになりました。

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ギリギリの高さの橋脚をくぐって船宿へ戻る

この日、5匹を釣り上げて船中トップだった松村さんですら、前回同じ船に乗ったときには1匹も釣れなかったとのこと。でも、だからこそ、釣れたときの「よっしゃ!」がやみつきになるのです。こんなにアドレナリンが出ることなんて、日常生活ではまずありませんから。

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脂の乗ったサワラは皮を炙って刺し身に

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焼いたサワラ。ふわふわの身はすっきりとした味わいだ

鴨下丸
横浜市磯子区原町8-31
045-751-3654

PROFILE

釣り大好きライター陣

安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

西田健作(にしだ・けんさく)

朝日新聞記者
1971年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。15年ほど前に千葉県浦安市に引っ越し、ディズニーランドのすぐ近くで魚が釣れることを知り、釣りにはまる。朝日新聞社では文化くらし報道部で美術担当、映画担当などを務め、現在は同部次長(デスク)。外に出られない平日のモヤモヤから、ますます週末の釣りにのめり込んでいる。

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