京都ゆるり休日さんぽ

新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具

京都で作家のうつわや道具を扱う店として14年。うつわ好きの間で知られる「木と根」は、引っ越しや新生活のお祝いの品を選ぶとき、日々の食卓やお茶の風景にちょっと変化が欲しいとき、「ここなら素敵なものが見つかるかも」と頼りになる存在です。店主の林七緒美さんが自身の眼で選び、「必ず一度は料理を盛ったり、洗ったりしまったりして使ってみるんです」と話すうつわは、見た目の美しさはもちろん、その実用性も確か。サイズ感はどうか、欠けやすくないか、注ぐ時に漏れないか、シミになりやすくないか……。手仕事の味わいとして許容できる以上に気になる点があれば、作家と一緒になって考え、もの作りに伴走することで長く店を続けてきました。

新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具

陶磁器を中心に、木工、金工の作品や古物も並ぶ

店を開くことになった際、最初に声をかけた作り手は、井山三希子氏、石川若彦氏、市川孝氏など5人ほどの陶芸家。今では個展のたびに整理券を配るほど人気の作家です。さらに、若手の作家を発掘したり、京都の工芸店の職人とオリジナルの道具を作ったり、人気の料理家を招いて作家のうつわで料理をいただく会を開いたりと、多彩な取り組みで着実にファンを増やしてきました。

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うつわはどれも、店主がその使い心地に納得したもの

月1度ほどのペースで開かれる作家の個展には京都府外や国外からも多くの人が足を運びますが、さまざまな作り手の品が組み合わされた普段の店内は、リアルな食卓の参考にするには最適です。食器棚がすべて同じ作家や素材ばかり、という人はいないはず。異なる作風や素材を組み合わせて、ふだんのテーブルをちょっと新鮮に、上質に彩るアイデアが「木と根」の棚にはたくさん潜んでいます。

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京都の「鳥井金網工芸」に別注したオリジナルの水切りかご。台所に出しっぱなしでも美しいたたずまいが魅力

例えば、朝食や軽く済ませたい昼食などに活躍する一人膳の組み合わせ。手になじむめし碗(わん)、漬物や卵焼きなどちょっとしたおかずを添える小皿、湯呑(の)みと一緒に丸盆にのせれば、簡素な食事もごちそうになります。スッと先の細い箸は、京都・長岡京市の竹工芸専門店「高野竹工」のもの。口当たりが繊細で、食事をいっそうおいしく感じさせる力があります。

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めし碗と湯呑みは松村英治氏、小皿は伊藤聡信氏のもの

ポットや菓子皿は、来客時のおもてなしやギフトにもぴったり。端正なフォルムと柔らかな白が印象的なポットは、日本茶だけでなく紅茶やハーブティーにも似合います。小皿はサイズをそろえれば、異なる作家の品を組み合わせても統一感が感じられるもの。2客、5客とそろえなくとも、サイズや色を共通項にしてさまざまな作家の品を少しずつ取り入れるのも、うつわの楽しみの一つです。

新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具

角田淳氏のポットに、中坊優香氏の輪花皿、中西申幸氏の象嵌(ぞうがん)の小皿を。菓子切りは高野竹工に別注したオリジナル

「人の手で作られたもののいびつさやぬくもり、使うほどに変化する風合いや、食卓に置いたときの存在感は、量産品にはけっしてないものです。作家ものを買ったことがない方や若い世代のお客様にもその魅力を伝えられるよう、手に取りやすい価格の作品も提案していけたら」。そう話す林さん自身、初めての作家もののうつわは、雑貨店で作家名も知らず購入したもので、それ一つでテーブルの表情が豊かに変わることを実感したそうです。まだあまり知られていない作家や若手の作品も柔軟に取り入れ、誰かのもの選びが変わる小さなきっかけになればと願っています。

新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具

季節の花や、つり下げられた道具のたたずまいも美しい

食事やお茶の時間は、日々くりかえす生活の一部。だからこそ、湯呑み一つ、めし碗一客でいつもの食卓が心うるおう風景に変わったら、暮らしそのものが豊かで味わい深くなります。まずは、店主の確かな眼で選ばれた手仕事の品々のなかから、自分の手と暮らしにしっくりなじむ一つを選んでみてはいかがでしょう。(撮影:津久井珠美)

新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具

因幡薬師近くの路地奥。最寄りは四条駅でアクセスも良い

木と根
http://kitone.jp

PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

フォトグラファー

津久井 珠美(つくい・たまみ)

1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。
http://irodori-p.tumblr.com/

季節に寄り添い、一輪の花に野山を見る京都の花屋「みたて」

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