旅空子の日本列島「味」な旅

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

南北に東北新幹線・東北本線、東に磐越東線、西に磐越西線、南東に水郡線が延びる郡山は、福島県の中央部に位置する鉄道の町。東北自動車道や国道4号、磐越自動車道など道路網も集まる東北有数の交通の要衝である。駅周辺にはオフィスビルやホテル、商業ビルが建て込み、バスやタクシー、クルマが発着して人口33万余の商工業都市としての活気を見せている。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

洋風校舎を保存活用した安積歴史博物館

だが旅先としてゆっくり町を見たことはなかったので、バスと歩きで巡ってみた。最初に訪ねたのは明治時代のモダンな洋風建築の安積(あさか)歴史博物館。安積高校の敷地に立つ旧福島尋常中学校本館で、正面玄関の上に鹿鳴館風のバルコニーを構えた国指定の重要文化財である。

復元教室や講堂、教育資料の展示に見入り、明治時代の評論家・高山樗牛や、夏目漱石門下で大正・昭和の小説家・久米正雄らが巣立った名門校だっことも知った。テレビや映画のロケにもよく使われるという。

近くには、猪苗代湖の水を郡山盆地に引き入れるためオランダ人技師の指導で完成した農業用水路の安積疎水の事業や歴史を伝える郡山市開成館がある。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

水辺を中心に花と緑の広大な開成山公園

その東側に広がる灌漑(かんがい)用の池であった五十鈴湖を中心とした広大な公園が開成山公園で、野外音楽堂や野球場、陸上競技場、屋内水泳場など市民のスポーツと憩いの都市公園になっている。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

開成山公園の施設の一つの野外音楽堂

ベンチに腰を下ろして、水鳥がつくる波紋の動きなど眺めながらしばし憩って、清掃作業の女性に声をかけると、ここにはソメイヨシノやヤマザクラなど1300本もの桜があって、4月中旬の満開時は心が浮き立つほど、6月初めのバラ園も素晴らしいと教えてくれた。

隣接して“みちのくのお伊勢さま”で親しまれる開成山大神宮や郡山ゆかりの文学者を紹介する「こおりやま文学の森資料館」もあった。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

昔から評判の人気菓子「薄皮饅頭」

駅へ向かうさくら通りで、名物の「薄皮饅頭(まんじゅう)」の開成柏屋に立ち寄って、饅頭を賞味した。1852(嘉永5)年、奥州街道郡山宿で、柏屋の初代が皮が薄く、こしあんたっぷりの、これまでなかったぜいたくな饅頭を考案・発売。大いに人気を呼んだ。

柏屋の薄皮饅頭は、志ほせ饅頭(塩瀬総本家=東京)と大手まんぢゅう(大手饅頭伊部屋=岡山)とともに由緒と歴史、美味で日本三大饅頭に数えられる。店舗の裏には萬寿神社が建っている。うやうやしく参拝した。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

菓祖を祭る「萬寿神社」

郡山にはこの饅頭に劣らぬ人気銘菓に、バター風味の小麦粉生地でミルク味のしっとりした白あんをくるんで焼いた三万石の洋風饅頭「ままどおる」がある。ふんわりとした皮としっとりしたあんの絶妙なおいしさにファンが多い。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

ほっこりおいしい「ままどおる」

郡山の三大銘菓のもう1品は、江戸時代後期に創製したかんのやの「家伝ゆべし」。うるち米の米粉の皮でこしあんを包んで羽ばたく鶴をかたどって蒸し上げたもっちりとしてきめ細かな甘さのもち菓子である。

鉄道・街道の要衝に生まれた活気ある商工都市 福島県郡山市

鶴の姿の「家伝ゆべし」

郡山は東北地方で屈指のおいしい銘菓の町でもある。

〈交通〉
・JR東北新幹線・東北線郡山駅下車
〈問い合わせ〉
・郡山市観光課 024-924-2621
・郡山市観光協会 024-954-8922

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

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