日本橋ふくしま館で開かれた「ふくしま・いわき“食”の大交流会」に行ってきた

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旬の野菜が山盛りの「いわき食材のテーブルサラダ」

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福島県・いわき市の魅力をPRする「第30代サンシャインガイドいわき」の高島一奈さんの案内で、「日本橋ふくしま館MIDETTE(ミデッテ)」の特設会場に入ると、テーブルの上で大きなサラダが作られているところでした。みずみずしい野菜が山盛りになっています。
これは2019年3月9日に開催された「ふくしま・いわき“食”の大交流会」のオープニングの様子。福島県いわき市のレストランから出張してきた2人のシェフによる新鮮なサラダに、20人の参加者は満面の笑みで舌鼓を打ちました。

生産者とともに山盛りのサラダを味わう

「いわき食材のテーブルサラダ」と名付けられたこちらには、リーフレタスやルッコラのほか、ブロッコリー、プチトマト、真っ赤なイチゴなどとともに、脂の乗った豚肉とゆで卵も。
その名の通り、食材はすべていわき産。イチゴは「ふくはる香」という甘みが強い品種です。豚肉は幻の満州黒豚の血統を守る畜産家から取り寄せた珍しいもので、脂が乗っているのにさっぱりとした口当たりでした。
驚くことに上野台豊商店が販売しているメヒカリの開き干しまで乗っていました。こちらも脂が乗っていますが生臭さがまったくない淡白な白身魚なので、サラダにとても合います。

このサラダを作ったのは、いわき市のレストラン「Hagiフランス料理店」の萩春朋シェフと「La Stanza(ラ・スタンツァ)」の北林由布子シェフ。萩シェフのオリジナル「いわき丸大根のドレッシング」が素材の味を引き立てます。
萩シェフのあいさつの後には、いわきのサンシャイントマト100%使用のトマトジュースで乾杯。会場には、トマトのテーマパーク「ワンダーファーム」代表の元木寛さん、農薬や化学肥料に頼らない「ファーム白石」の白石長利さん、新規就農を目指し研修中の助川智洋さんといった生産者の方々も来場していました。
いわきワイナリーや日本酒「太平櫻」、コーヒー豆専門店ブラウンチップのコーヒーなどの飲み物も含め、いわきから持ち込まれた美味ばかりです。

料理への考えを変えた「地元野菜との出会い」

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上等な白身魚と野菜を使ったブイヤベース

サラダの後は、いわき産の魚と野菜を使ったブイヤベースが供されました。タイやクロソイ、アカムツ(ノドグロ)といった上等な白身魚の分厚い切り身が惜しげもなく入っています。
身をひと通り食べた後は、サフランライス(いわき産のブランド米「いわきライキ」と福島県産のサフラン)を追加してリゾットに。デザートは、いわき産イチゴのタルト三種。華やかに飾られた様子を、参加者は歓声をあげてスマートフォンで撮影していました。

イベント終了後に、料理を企画した萩シェフに話を聞くことができました。
1976年、福島県・いわき生まれの43歳。エコール辻東京を卒業後、都内のレストランでの修業を経て、24歳のときに独立し、いわき市内にフランス料理店を開きました。
お店の経営は順調でしたが、35歳のときに転機が訪れました。2011年の東日本大震災で客足はパッタリと止まってしまったのです。
暇を持て余してしまった萩シェフは、生産者との異業種交流の場に初めて参加。そこで地元で作られているトマトを食べて、その滋味に驚いたというのです。

「なぜこんな味がするのかと聞いたら、自然のままの農法で作っているというんですね。土を活かして、作物本来の力を引き出している。私の母の実家も農家だったんですが、昔のおいしい野菜の味がしたんです」

「一日一組の完全予約制」に切り替える

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萩シェフのセンスが光る三種のいちごタルト

以前は必要な食材は、料理に合わせて県内外から取り寄せていたという萩シェフ。生産者とのつながりもなく、直接買うことが難しかったという事情もあり、震災を機に地元の材料を使った料理を作ろうと決意。
「一日一組のお客様だけの、完全予約制に切り替えました。その日調理する野菜は、その日取りに行き、野菜を見てその日のメニューを決めます」

当初、萩シェフの胸には「お客さんに自分たちの都合を押し付けているだけではないか」と不安もあったそう。しかし、ボランティアでいわきを訪れて食事をしてくれる人たちは「せっかく福島に来たんだから、地元のものを食べたい」と萩シェフの思いに共感し、実際に食べて「とてもおいしい」と励ましてくれたそうです。

農家だけでなく、いわきの漁師や仲買人とも知り合いになった萩シェフは、どの時期に何が旬で、どんなよいものがあるのか、直接教えてもらうようになりました。
しかし、意外なことに「旬のものだけを使えばいいというわけではない」という考えに至ったのだそうです。その理由のひとつは、旬から外れていても「よい個体」があるということ。
「旬のときは全体がよいんですが、旬でないときでも、中には生命力にあふれる個体に出会うこともあるんです。そういうものを、生産者と近くなったことで入手できるようになったんです」

旬の食材だけが良いというわけではない

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「Hagiフランス料理店」の萩春朋シェフ

もうひとつの理由は、「旬のものだけが良い食材ではない」ということ。たとえば野菜は、出始めのときにはフレッシュな味わいがあり、生や軽く湯がいただけでおいしく食べられます。一方、旬の終わりには、フレッシュさが減る代わりに味が濃くなり、スープなどに使うと味わいが生きてきます。
これを、さらに新鮮な旬の魚介類と組み合わせて調理すると、萩シェフによれば「味覚がぶつかって暴れて新しいおいしさが生まれる」のだとか。

こういう考えになったのは、実はここ数年のことなのだそうです。
「脂の乗った旬のものだけが、一番いいものとは限らない。そのときどきの食材の活かし方があることに気づいたのは、震災を経て40歳を過ぎたころからですね。若ければいい、旬であればいい、というだけではない考えになれたのは」

そんな萩シェフがいま大事にしているのは、「たまたまの縁でつながった人たちと、目の前にあるものを大事にすること」。
そして料理人としても、生産者やお客さんたちとともに自然なままで育っていきたい、と考えているそうです。

(文・写真 相知 光)

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