楽しいひとり温泉

温泉+忘我 秘境に湧く温泉の一夜 秋田県「夏瀬温泉 都わすれ」

温泉+忘我 秘境に湧く温泉の一夜 秋田県「夏瀬温泉 都わすれ」

「都わすれ」の貸し切り露天風呂

ここは、かなり秘境です。角館(かくのだて)駅で宿からの迎えの車に乗り、しばらくして踏切を渡り車は森の小道へと入っていきます。ガードレールもない山の道は、どうやってすれ違うのかと思うほど細く、車はどんどん森の中へと進んでいきます。「わあ、きれい」。ぽんと視界が開けると、夢のようなエメラルドグリーンの湖が見えてきます。「ここはダム湖になっているんですよ」と宿の方が教えてくれます。また、細い森の道を行き、ほどなく宿「夏瀬温泉 都わすれ」に到着です。

こんな森の奥に湧く温泉をいったい誰が見つけたのだろう……。この夏瀬温泉と呼ばれる秘境の名湯に入るため、古くから、みんな歩いてここまでやってきたそうです。

宿泊者は無料で50分間入ることができるぜいたくな貸し切り露天風呂があります。せっかくなので、明るいうちに独り占めしようと、チェックインしてすぐに予約をしました。風情あるこけむした屋根の湯小屋で着替え、さっそく温泉へどぼん。深めの岩風呂は首まですっぽりとつかることができて絶妙の温度。「チイチイチイ」と澄んだ野鳥の声が森に響き、湯の流れる音だけの静寂な時間。日常から解き放たれて、全てが温泉へ流れていくように感じます。

温泉+忘我 秘境に湧く温泉の一夜 秋田県「夏瀬温泉 都わすれ」

地元の人々にも古くから愛された夏瀬温泉

男女別の大浴場はかつての湯治場を思わせる木造りの湯小屋。湯船は二つに分かれていて、源泉の注ぎ方で熱めにしてある「あつ湯」と、ぬるめの「ぬる湯」になっています。

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内湯は源泉の湯量で熱めとぬるめに調整した湯船がある

源泉が注がれる湯口を見ると、温泉成分でオブジェのようになっています。これこそ、温泉好きには、いとおしくてたまらない光景。「いい湯だね。今日も湧いてきてくれてありがとう」なんて、思わず語りかけてしまうのです。泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉、pH8.3の弱アルカリ性。とろんとした柔らかさがたまらなく心地よくて、いつまでも入っていたくなる癒やし湯です。ひたひたと肌へ水分を運ぶ保湿系の温泉は、肌も心も潤してくれます。

温泉+忘我 秘境に湧く温泉の一夜 秋田県「夏瀬温泉 都わすれ」

ロビーラウンジでは果物やコーヒーを楽しめる

湯上がりはロビーへ。「こちらのフルーツはお好きな時に自由にお召し上がりください」と、チェックインの時に教えてもらいました。温泉の後は、ビタミンCを補給したいので、清見オレンジをひとつお皿にのせて、庭を眺めるソファでいただきます。小腹がすいたらバナナかりんごかな、なんて、フルーツに目がないわたしにとっては宝の山のおもてなしです。

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桜の木の皮を使った器は、桜の名所・地元角館のもの

この宿のもうひとつのお楽しみは食事。こんな秘境でこんな美食をいただけるのかと驚くほどのお料理は、地元秋田の食材がたっぷり。そして郷土料理もでてきます。前菜と一緒に置かれたせいろのふたをあけると、ほっかほかの温野菜。特製のごまだれやおみそをつけていただきます。

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「曲げわっぱ」に入った稲庭うどん

おしのぎは、つるつるの稲庭うどん。秋田名産の杉で作る「曲げわっぱ」という器ですが、そばちょこくらいの特製サイズ。このひと口サイズがうれしくておいしい。

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やわらかジューシーな秋田由利牛の石焼き

地元「秋田由利牛」の石焼き。ほどよい霜降り具合で、ジューシーで柔らかいのに赤身肉のうまみも感じられて絶品。一緒に焼いて食べたネギの甘さにも驚きました。

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宿の名物のひとつ「がっこサラダ」はおいしい進化をとげていた

これこれ。待ってました! もはや都わすれ定番となった「がっこサラダ」。秋田名物の“いぶりがっこ”は、たくあんを囲炉裏につるしていぶした保存食です。それを刻んで生野菜とまぜ合わせていただくのが「がっこサラダ」です。いつものおいしさと思いきや、これがなんと進化していたのです。「パルメザンチーズをおかけしますがよろしいでしょうか」「へー。チーズをかけるんですね。大好きです」。いぶりがっこの燻製(くんせい)のような芳しさに、チーズがシャキシャキした水菜と絡み、なんとまあ、ワインにもあう逸品になってしまうのです。

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部屋の窓からは幻想的な川の風景が見える

部屋は少しずつ雰囲気が違うのですが、それぞれ専用の温泉があります。ひとり宿泊の時には、部屋おまかせのプランがお得。どの部屋になるかな?というのも楽しみなのです。

温泉+忘我 秘境に湧く温泉の一夜 秋田県「夏瀬温泉 都わすれ」

自由気ままにいつでも自分専用の温泉につかれる

部屋から数歩で、自分だけの温泉に入れる幸せは、秘境ユートピアならでは。目線の先には、神秘的なエメラルドグリーンの川が流れています。朝には川霧がたちこめて桃源郷のような世界。源泉かけ流しの温泉に、ぼーっとつかる忘我のひと時は、宿の名のとおり、都へ帰ることさえ忘れてしまいそうです。

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.大きな貸し切り露天風呂を独り占め
2.部屋から数歩で自分だけの温泉へ
3.郷土料理もおいしくアレンジした美食

夏瀬温泉 都わすれ
http://taenoyu.com/natuse-top.html
*ひとり宿泊はHPから予約できます

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)ほか。新著「感動の温泉宿100」(文春新書)が10月に発売された。

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