楽園ビーチ探訪

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

ホエールウォッチングは、沖縄や小笠原など日本国内でも体験できます。けれど、アイスランドは特別です。なんたって、相手はクジラの王様、世界最大の動物であるシロナガスクジラ。大きいものでは体長30メートルにも達し、まるでコンボイトラックのような巨体が北極海の波間に現れるシーンを想像しただけで、神々しささえ覚えます。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

クルーズシーズンは4~11月。シロナガスクジラと遭遇する確率が高まるのは5~6月または秋という(C)Belen Ovlde – Gentle Giants

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

大きいものでは体長30メートル。きっと至近距離では視界に収まりきらないでしょうね(C)Peter Walti – Gentle Giants

シロナガスクジラとの出会いの場は、アイスランドのフーサヴィーク。人口約2300人の小さな町ながら、 別名“ホエール・キャピタル”と呼ばれ、暖かい春から夏は世界中からクジラ好きが集まります。

アイスランド第2の都市アークレイリからフーサヴィークを目指し、車に乗ること1時間あまり。訪れた4月は、冬の名残と春の訪れが重なった季節でした。車窓から見る風景は、雪の下から露出した茶色の土や、黒っぽい溶岩の大地、あるいは氷河が削った灰色の岩壁、ところどころに点在する白い残雪など、渋い色合い。空を雲がびゅんびゅんと流れ、雲間から差す太陽の光も力強く、スケールの大きな自然を感じます。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

フーサヴィークへのドライブは、アイスランドの雄大な自然を満喫できます

到着したフーサヴィークは人通りがあまりなく、閑散としていました。「町の人は一体どこにいるの?」と思ったら、温水プールやバーは大にぎわい。暖かく居心地のいい交流の場に人は集まるようです。

さて、お目当てのホエールウォッチング。4月とはいえ、そこは北極海。海へ繰り出すには完全なる防寒対策が必須です。ウォータープルーフの厚手のつなぎに、分厚い靴底の長靴、温めておいた手袋にゴーグル、ニット帽。できるだけ肌が外気に触れないよう、きっちりとカバーします。そして、座面がサドルのような形をした特別仕様のゴムボートに乗り込み、スキャウルファンディ湾からシロナガスクジラが待つ海へ。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

北欧の愛らしい町を背に出船

出港してすぐに愛らしい海鳥パフィンの群れを見かけ、テンションも上がります。が、湾から外に出た途端、北極海は本性を現してきました。ゴムボートはあらゆる角度からのうねりに翻弄(ほんろう)され、そのたびに首はガクンガクン、腰はグリングリンと、まるでロデオゲームのよう。しっかりとサドルを股で挟み、ハンドルにつかまっていないと振り落とされてしまいそう。しかも、氷のように冷たい海水がじゃぶじゃぶと顔にかかります。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

きっちり防寒対策を行って乗船。けれど、春まだ浅い北極海は厳しかった……

船長は周囲の船と無線で情報交換をしながら、シロナガスクジラの姿を求めて針路を右に左にと転換しますが、一向に現れる様子はありません。こちらは、海水を避けるために顔を下に向けながらも、クジラの第一発見者になりたくて視線だけは上げ気味の姿勢。けれど視界に入るのは、うねる波とそびえる雪山。シロナガスクジラと会うためにはこのくらいのハードルは乗り越えなくては、と必死です。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

船長は探索中、クジラの生態をレクチャーしてくれます。けれど寒さとの闘いに、それどころではないのが本音

とはいえ、酷寒の北極海で2時間も過ごせば、分厚い手袋をしていても指先はちりちりとしびれ、奥歯もガチガチ鳴ってきます。粘った船長も、やむなく航海を断念。全員に配られたハーブ入りのお酒を胃に流し込み、少し生き返った気持ちで港へ戻りました。

今回は残念ながら会えませんでしたが、シロナガスクジラとの遭遇率が高いのは5~6月と秋だそう。他にもネズミイルカやザトウクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラ、シャチも出没するとか。いつの日かリベンジを、と誓うのでした。

アイスランドは最果ての国のイメージがありますが、フィンランドのヘルシンキで乗り継げば、所要時間14時間40分。実は、想像よりもずっと近い存在です。

シロナガスクジラに会いたい! 「クジラの首都」アイスランド・フーサヴィーク

「フーサヴィーク・クジラ博物館」で、骨格標本になったシロナガスクジラと対面。クジラ一体ずつに名前を付け、大切に保管しています

取材協力
フィンエアー
http://www.finnair.co.jp/

インスパイアド・バイ・アイスランド
https://www.inspiredbyiceland.com/

バックナンバー

>> 連載一覧へ

PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

セーシェル・ラディーグ島の絶景ビーチで超大陸へ思いをはせる

一覧へ戻る

20年ぶりのタイ・サメット島。バイクでビーチホッピングがおすすめ

RECOMMENDおすすめの記事