永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(1)雪にハネト

(1)雪にハネト

© Masatoshi Nagase

冬の青森の雪原に横たわるのは、夏のねぶた祭りのハネト衣装を着た女性だ。青森県立美術館で2012年に開催された、青森を撮った僕の写真展「Aの記憶〜Memories of A」で、縦6.4メートル、横8メートルの大きさで展示した。

ある土地で写真を撮ることになったら、僕の「想像のイメージ」を一つは残したいと思っている。どんな場所でも、写真1枚でその土地を切り取るのは難しい。お城や代表的な観光地を撮るのではつまらないな、と思っていたら、このアイデアが、ふっと出て来た。

白い背景にハネト衣装、というだけなら、スタジオでも撮れる。土地の記憶として残したくて、地平線の見える場所を探し、五所川原市で撮影に臨んだ。薄着で雪に横たわり頑張っていただいたモデルさんには、本当に申し訳ないことをしたけれど……感謝しています。

雪原に夏の衣装という、ありえない組み合わせ。でも、ある青森出身の映画監督さんに「この写真は青森県人にとって間違いじゃない。夏のねぶたの熱を、長い雪の季節に持っていき、厳しい冬を乗り切るのだから」とおっしゃって頂いたことが忘れられない。

国際的に活躍する俳優・写真家の新連載「永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶」が始まりました。永瀬さんが世界各地を回って撮りためた写真を、撮影や作品にまつわるエピソードとともに紹介します。「自由に見てほしい」。そう語る永瀬さんが切り取った街の姿、人の表情、光と影のコントラストをお楽しみください。
(作品名は編集部が便宜的につけたものです)

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、公開中の甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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