魅せられて 必見のヨーロッパ

紺碧の海と空に映える城塞 マルタ共和国・バレッタ

グランドハーバーの風景。紺碧(こんぺき)の海と空を眺めていると、美しさに時を忘れてしまいます

グランドハーバーの風景。紺碧(こんぺき)の海と空を眺めていると、美しさに時を忘れてしまいます

ドイツのフランクフルトから2時間半あまりのフライトで、マルタ共和国の首都バレッタに到着。旧市街から海を眺めていると、初夏の風が私を包んで快く吹き抜けていきます。

港を見晴らすと、マルタ島が堅牢な城塞(じょうさい)であったことを実感します

港を見晴らすと、マルタ島が堅牢な城塞(じょうさい)であったことを実感します

紺碧(こんぺき)の海と空を背景に、目立つのはマルタストーンと呼ばれるハチミツ色の石灰岩で建てられた堅牢な建物です。島を守るように立ち並び、まさにバレッタのシンボル。市街全体が世界遺産に登録されています。

市街の細い路地には小さなレストランなどがあり、散策も楽しめます

市街の細い路地には小さなレストランなどがあり、散策も楽しめます

ボートに乗って海から市街を眺めました。オスマン帝国軍を退けたという建物群はさすがに威圧感があり、圧倒されます

ボートに乗って海から市街を眺めました。オスマン帝国軍を退けたという建物群はさすがに威圧感があり、圧倒されます

堅牢な街並みは、1565年にオスマン帝国の攻撃を撃退した聖ヨハネ騎士団が造ったものです。この戦い(マルタ包囲戦)は、団長ジャン・パリゾ・ド・ラ・バレット率いる聖ヨハネ騎士団が勝利をおさめました。バレッタという都市名は、彼の名に由来します。

マルタならではの港の風景

マルタならではの港の風景

クルーズ船が停泊

クルーズ船が停泊

聖ヨハネ騎士団長の宮殿の中庭。涼風が吹き抜けます

聖ヨハネ騎士団長の宮殿の中庭。涼風が吹き抜けます

市街には聖ヨハネ騎士団長の宮殿が残っています。団長の公邸であり、総司令部でもありました。当時、現在のフランス、イタリア、ドイツ、スペインなどの地域を中心としたヨーロッパの名門貴族たちにとっては、キリスト教精神にのっとり、息子たちに騎士としての教育を受けさせ、聖ヨハネ騎士団に入団させることは名誉でした。親たちは競うように騎士団に寄進したため、マルタには富が集まりました。その経済力で壮大な城壁や建物群を建てることが可能だったのです。

聖ヨハネ騎士団長の宮殿。内部

聖ヨハネ騎士団長の宮殿。内部

聖ヨハネ騎士団長の宮殿に入ると、その荘厳な豪華さに圧倒されます。17世紀末にペレロス騎士団長が織らせたアフリカやインドの風俗を描いたタペストリーや、オスマン帝国との戦いの戦果を描いたフレスコ画などが残り、美術品としても価値があります。兵器庫には当時の甲冑(かっちゅう)などの武器も展示されており、騎士団長バレットの甲冑も見ることができます。

騎士団施療院(病院)の内部

騎士団施療院(病院)の内部

騎士団施療院(病院)も忘れてはなりません。船から負傷者を一刻も早く搬送するためにグランドハーバー沿いに設立されました。ガイドのジュスティーさんによれば、騎士たちが入る病棟には壁画が描かれ、900以上のベッドに1人に1つのトイレが設置されていたそうです。手術といえば麻酔もありませんでしたが、術後の生存率は7割。治癒した人も少なくないといいます。十字軍の負傷者たちの保護・救済が重んじられていたことがわかります。

「国立考古学博物館」の展示品

「国立考古学博物館」の展示品

マルタの歴史は騎士団の歴史ばかりではありません。マルタ島では30基以上の巨石神殿が確認・調査されており、考古学の発掘でも知られます。16世紀の騎士の宿舎の建物を利用したバレッタの「国立考古学博物館」には、マルタ考古学にとって重要な紀元前5200~2500年の発掘物が展示されています。豊満な女性像のおおらかさには、心が和みます。

マルタは長い歴史がありますが、独立したのは1964年に英国からでした。地中海地方唯一の英語圏です。このため、北ヨーロッパやロシアなどから陽光を求めてビーチリゾートや観光を楽しみながら、英語を学ぶ若者やシニアが増えており、40ほどの英語学校があります。

撮影した数々の写真を眺めていると、街並みや海、出会った人たちがありありと思い出されて、またマルタへ旅したくなります。

マルタ観光局 https://www.visitmalta.com/jp/
マルタ航空 https://www.airmalta.com/

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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