心に残る旅

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた

いつもと違う場所で風に吹かれた経験は、折に触れて思い出すもの。そんな旅の思い出を各界で活躍するみなさんにうかがう連続インタビュー「心に残る旅」が始まりました。第1回は、シンガー・ソングライターの家入レオさんです。

(聞き手:&TRAVEL副編集長・星野学、写真:山田秀隆)

――一番心に残っている旅を教えてください。

「4年前、20歳を過ぎたころに行った、アメリカのラスベガスです。2012年に17歳でデビューして音楽でずっと走り続けていて、見聞を広めるまとまった時間がなかなか取れなくて。それを感じてくださった事務所の方が、『一緒に行こう』と言ってくださって」

――ギャンブルをしに?

「いえいえ(笑)。エンターテインメントの本場でショーを見ると刺激になると勧められたんです。自分では選ばない旅先ですが、行ってみたら、エンターテイナーのプライドや意識の高さに圧倒されて。街を挙げてのエンターテインメントへの愛情も感じました」

「たとえばセリーヌ・ディオンのライブは、歌声はもちろん、演出、衣装、どこにも妥協がない。日本ではライブは2日連続、3日連続が体力的に限界と言われているのに、彼女はほとんど毎日公演していて、のどのケアをどうしているんだろう、どうしたらあの高いクオリティを維持できるんだろう、と。日本のライブでは、セットリスト(曲順)の起承転結を大事にするアーティストが多い気がしますが、海外では、この流れだから次はこれ、という固定概念がなく、1曲1曲をそれぞれ楽しんでいる感じがしました」

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた
――刺激になったんですね。

「大きな視野から自分を見るようになりました。高いクオリティでライブをお届けするためにも、私は3日連続や4日連続のライブはしないのですが、毎日ライブをしている人がいるのだから、実際するかどうかは別にして、無理、と最初から決めつけるのはやめようと思いました」

「別の機会にカンボジアに行って、川で生活する人たちと触れ合う機会があって、そこでは学校も警察署も全部川の上なんですが、時計を見ている人がまずいない。太陽の動きでご飯を食べたり、笑いあったりするのを見ていたら、幸せの価値観が全然違うなと思いました」

――時計を見ている人がいないと気づいたんですか? すごい観察力ですね。

「東京にいると、便利なようで何かをどんどん失う気持ちになることが多くて。1日は24時間と限られているので短縮できるところはしていいと思いますが、私は、時間のかかるもののほうが、より好きなんです。メールも書くけれど、お手紙を書く方が好きだし、おだしもできれば粉末じゃなく、かつお節や昆布からとりたいし、そうすることで心も潤う」

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた

――4月17日に、6枚目のアルバム「DUO」を出します。

「いろいろなクリエーターと一緒に、『私にしか歌えない曲』をテーマに制作を進めました。たとえば、ドラマの主題歌にもなっている「Prime Numbers」(素数)は、作曲を『Jazzin’ park』の久保田真悟さんと私がして、歌詞は、ずっとご一緒したかった松尾潔さんに書いていただいた、『素数同士のつながりを歌った曲』です」

――素数、ですか。1とその数自身でしか割り切れない数。

「松任谷由実さんに初めてお会いしたとき、『あなた素数ね。どこにいてもなじめないでしょう』と言われたんです。何をしていてもずっと宙に浮いているような感じだった自分に名前をつけてもらったような、不思議な安心感を覚えました。私だけじゃなくて、実はみんなが『素数の要素』を持っているんじゃないかと思うんです。なじめなかったり、一生懸命やっているのに距離を感じたりとか。いろんな形があると思うんですけれど、そういう孤独を抱えている者同士、『素数』同士が出会ってひかれあっていくという感じが私らしいなと思って」

「一緒に制作したほかの方とも、密なやりとりをして曲を作っていき、私とその方との『デュオ』がたくさんできたんです。だから、このアルバムは、クリエーターやアーティストとのデュオでもあるし、私とリスナーさんとのデュオでもあるなと思っています」

――私と大勢、ではなく、1対1の関係がたくさんあるということですね。

「はい。みんな対私、という関係が得意ではなくて。ライブをしていても、ひとりひとりに届くように歌をうたっています」

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた

――家入さんの歌、主人公は「僕」のことが多いですね。なぜですか。

「私は生きていて性別を意識することがなくて、今まで好きになってきた人たちも、男性だから女性だからじゃなくて、人間としてその人を好ましいと思えるかどうかでした。女性である私が、歌うとき『僕』ということによって、男性性と女性性が五分五分になる気がしていて。人としての性(さが)を歌うことが、私はとても多いんです。どうして人は孤独なんだろうとか、どうして人は食べなくちゃ生きていけないんだろうとか」

――だとすると、家入さんにとって、音楽をすること、歌うことは、何ですか。

「生活ですね。ご飯を食べたり歯を磨いたりお風呂に入ったりするのと同じで。おうちでもずっと歌っているんですよ。料理している時もお風呂に入っているときも。人よりエネルギーがすごく強いみたいで、自分の中の感情を外に出していかないと洪水が自分の中で起こっちゃう。歌は、内にあるものを外に連れ出してくれる、大事なものです」

――生きている以上、孤独からは逃れられない。みんな『素数』なのかもしれませんね。

「私は幼い頃に引っ越しが多かったからか、幼少期の記憶に、人ってわかり合えないんだ、と感じたことがいろいろあるんです。たとえば、ご飯を食べていて、私の感じているおいしいと、目の前にいる人が感じているおいしいは、たぶん何かが違うんだろう、とか。(目の前にあった緑茶入りペットボトルを手に取って)このペットボトルも緑に見える人もいれば、ちょっと黄色っぽい緑に見える人もいると思うんです。完全に一致させることって、どれだけ言葉を尽くしても肌を重ねてもないんだな、と思って」

「でも、孤独だからわかってほしいと思って表現が生まれる。だから、人がちゃんと一人であること、自分が自分の椅子にちゃんと座っていることって、とても希望があると思うんです」

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた

PROFILE

旅する著名人

家入レオ、ふかわりょう、HARUNA(SCANDAL)、福士蒼汰、加古隆、池内博之、吉田戦車、清水尋也、しりあがり寿

家入レオ

シンガー・ソングライター

福岡県出身。2012年にメジャーデビューし、1stアルバム「LEO」がオリコン2週連続2位を記録。第54回日本レコード大賞最優秀新人賞ほか多くの新人賞を受賞。数多くのドラマ主題歌やCMソングを担当し、17年には初の日本武道館公演を開催した。18年にリリースしたドラマ主題歌「もし君を許せたら」(月9ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」主題歌)がロングヒットを記録する中、19年には映画「コードギアス 復活のルルーシュ」オープニング主題歌「この世界で」をリリース。5月10日からはニュー・アルバム「DUO」をひっさげての全国ツアーを予定している。

オフィシャルHP(新アルバム「DUO」情報はこちら)
http://leo-ieiri.com
オフィシャルBLOG
http://ameblo.jp/ieirileo
オフィシャルYouTube チャンネル
http://www.youtube.com/ieirileo/

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