あの街の素顔

大人の社会科見学 “プレモル”ビール工場は驚きの連続だった

「ビールの約9割は水。だからこそ、サントリーのビールは自然の地層によって濾過(ろか)され、地下深くからくみ上げた天然水100%を使用して醸造しています」

「えっ、ビールって9割が水なの!?」

恥ずかしながら、こんな初歩的な驚きからスタートした「サントリー<天然水のビール工場>東京・武蔵野ブルワリー」のガイドツアー。同社の看板ビールである「ザ・プレミアム・モルツ」(以下、「プレモル」)の製造工程を見学し、終了後に注ぎたてのビールを試飲できて「無料」という人気ツアーだ。今年3月7日に内容を一新したと聞き、早速参加した。

(文・写真/干川美奈子)

エントランスは水をイメージ。水面を模した床部分に足を踏み入れると、水面が揺れる

エントランスは水をイメージ。水面を模した床部分に足を踏み入れると、水面が揺れる

ビール造りに重要だった「水」

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山に降り注いだ雨水が年月をかけて地層によって濾過(ろか)されて天然水に磨かれる様子を紹介

冒頭の驚きは、ビール造りの最初の工程となる「素材選び」での説明。ビールは日常的に口にしているもののビール造りについては知識ゼロだったので、ぶどうから作るワインのように、ホップが水分量の高い植物であったり、水以外の水分も入っていたりするのではと思っていた……。

「水と生きる」を標榜(ひょうぼう)している同社では、水にまでこだわり、国内のビールメーカーでは唯一、ビール造りに天然水を用いているそうだ。全国にある同社の四つのビール生産工場は、すべて良質な天然水が採水できるところを選んで建設していると聞いて、「天然水のビール工場」というネーミングにも納得した。

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チェコや周辺国で産出される「ダイヤモンド麦芽」の説明

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味見用に配られた「ダイヤモンド麦芽」

当然ながら、麦芽とホップにもこだわりがある。一般的なビールに使われている「二条大麦麦芽」に、希少な「ダイヤモンド麦芽」を混ぜることで、上質なコクとうまみを引き立たせているそうだ。ツアーではこのダイヤモンド麦芽を試食させてもらえた。甘くないポンポン菓子のように、香ばしくてサクサクした食感で、これだけでつまみになりそうだった。

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ホップは植物の状態だと青々としている

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ビールの素材用は固形になっていた

一方、私が勝手に「みずみずしい植物に違いない」と思っていた「ホップ」は、ビールの香りや苦味に必要なもので、プレモルでは「アロマホップ」と「ファインアロマホップ」を使用している。欧州産のホップを写真のような固形物(ペレット)にして輸入し、ビールにもこの形で使っているそうだ。香りをかがせてもらったところ、強めの牧草のよう!?

大麦もホップも植物だから、毎年出来は違う。醸造家は素材や酵母を調整しながらばらつきの少ない最高品質のつくり込みを図っているそうだ。完成形しか見ていなかったけれど、ビールも自然のものを使って、人の手で出来上がっているのだと実感した。

フォトジェニックなエリアもあった!

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巨大タンクが並ぶ「仕込」エリアは、未来都市に来たような気持ちになった

ビール造りの工程はその後、「仕込」「発酵」「貯酒」「濾過」「パッケージング」と続くのだが、ツアーの中で最もフォトジェニックなのが「仕込」エリア。ここでは五つの工程に分かれて麦汁が作られている。

天然水と麦芽で麦汁のもとになるものを作る「仕込槽」、それを煮出すことでビールの味を引き出す「仕込釜」、麦芽の殻を取り除く「濾過槽」、ホップを加えて煮沸(しゃふつ)する「煮沸釜」、ホップのカスなどを取り除く「沈殿槽」とタンクが分かれていて、中をのぞくことができた(タンクの中の撮影は禁止)。

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濾過した麦汁を一時的に保管する「麦汁受け槽」

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麦芽の殻を取り除く「濾過槽」。それぞれのタンクは中をのぞける

ところで、ビール工場の見学はどこのメーカーに行ってもだいたい同じ、というわけではない。素材が違ったように、「仕込」工程でもプレモルならではの製法、「ダブルデコクション製法」と「アロマリッチホッピング製法」を採り入れていた。前者はより濃厚で香ばしい麦汁を抽出するために一部の麦汁を2回煮出す製法で、後者は引き締まった苦みを「アロマホップ」で、上質で華やかな香りを「ファインアロマホップ」で出すために、それぞれを時間差で投入して煮沸するといった製法。

プレモル自体、1989年に前身の「モルツ・スーパープレミアム」から14年あまりの研究の末に発売した商品だが、アロマリッチホッピング製法を開発するまでにも10年を費やしたと聞いたら、気軽に「とりあえずビールでいいよね」などと言っていたことを反省した。

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酵母が加えられる「発酵」エリア。ここでアルコール約5%の「若ビール」ができる

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昭和の時代に使われていた貯酒タンクの中を通り抜ける

その後、麦汁に酵母を加えると発酵がはじまり、約7日経過後、一定期間貯酒され、濾過をしてビールが出来上がる。かつて使われていた貯酒タンクをくぐったり、パッケージングの様子を見学したりしてガイドツアーは終了。

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役目を終えた酵母を取り除く「濾過」の設備展示

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「パッケージング」が行われているエリア

「泡」の不思議を体感

のどもカラカラになったところで、注ぎたてのビールで乾杯!と思ったら、この日の特別体験として運ばれてきたのは、ミニグラスに入った「泡」!? 正直、全く期待せずに飲んだところ、あまりのおいしさに驚いた。一緒に参加した人たちからも歓声が上がっている。驚くほどクリーミーでさらっとしていて、泡であって泡感はゼロだ。のどにすっと入ってくる香りの高いビールを飲んでいるようだった。

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お待ちかねの試飲エリア

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この日、特別に提供されたのは「泡」。これが想像をはるかに超えるうまさ

この泡(同社では「神泡」)の試飲だが、通常はガイドツアーの「発酵」工程で神泡の説明があり、代表者何人かが体験できるそうだ。ほか、同工場でガイドツアーと別に開催している「ザ・プレミアム・モルツ講座」では、全員が試飲できる。

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その後、しっかり注ぎたてのビールも試飲

「泡は炭酸ガスの気泡と気泡がくっついてできますが、その元となるのは、麦芽由来のたんぱく質やホップの苦み成分であり、酵母が元気に働かないといい泡はできません。そのビールがどんな素材でできているのかは泡にあらわれると醸造家は考えています」とガイドさん。

ということは、きれいな泡が立つビール=酵母がちゃんと働いているビールで、泡を飲めば味や香りが分かるということ。これからは缶ビールでもちゃんとグラスに注いで泡を立てようと心に誓った。

その後、しっかり「ザ・プレミアム・モルツ」「ザ・プレミアム・モルツ 〈香るエール〉」「ザ・プレミアム・モルツ~MASTER’S DREAM(マスターズドリーム)」の試飲もさせてもらい、ほろ酔いで工場を後にした。

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工場オリジナルのおつまみなどが買えるブルワリーショップ

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門をくぐってすぐの窓からは「仕込」エリアが見える

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無料シャトルバスは「分倍河原」駅南口ロータリーから出発

「サントリー<天然水のビール工場>東京・武蔵野ブルワリー」の最寄り駅は京王線、JR線の「分倍河原(ぶばいがわら)」駅。新宿から京王線特急で約30分と、遠さは感じなかった。分倍河原駅南口ロータリーからは無料シャトルバスがあり、約10分で工場につく。工場ガイドツアーは約70分で参加費無料。公式HPか電話で要事前予約(年末年始、工場休業日以外は平日も開催)。英語、中国語、韓国語の音声ガイドもある。
https://www.suntory.co.jp/factory/musashino/info/

PROFILE

「あの街の素顔」ライター陣

こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

PROFILE

干川美奈子(ほしかわ・みなこ)

編集者・ライター
10代後半から英語が公用語でない国を中心に海外チープ&ディープ旅をスタート。情報誌、海外ウェディング誌、クルーズ専門誌、女性向けビジネス誌などで旅記事を執筆。「プレジデントFamily」「プレジデント」をはじめとした編集部在籍経験を活かし、普段はビジネス、芸能、マネー、子育て、インタビューなど、雑誌・WEBの一般記事の編集・執筆に携わる。

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