にっぽんの逸品を訪ねて

1000年続く祈りの時間 長谷寺の朝の勤行体験 奈良県桜井市

早朝に訪れた長谷寺は、澄んだ空気と静けさに包まれていた。僧侶が掃除をするほうきの規則正しい音だけがかすかに聞こえてくる。

仁王門から、長谷型灯籠(とうろう)が連なる399段の登廊(のぼりろう)を上ると、断崖絶壁に懸(かけ)造りされた本堂が現れた。

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登廊を進んで本堂へ

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崖にせり出す舞台のような造りの本堂

長谷寺は、奈良県桜井市の小初瀬山中腹に立つ真言宗豊山派の総本山。686年に道明上人が開山したと伝わる。日本有数の観音霊場として、また「花の御寺」としても名高い。

長谷寺では毎朝6時30分(冬季は7時)から朝の勤行(ごんぎょう)が行われ、十数人の僧侶がご本尊の十一面観世音菩薩(ぼさつ)を安置した本堂でお経を唱える。1000年以上続いてきたこの祈りの時間に、服装などの注意事項を守れば誰でも参列できる(30分前から受け付け、500円)。

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朝の勤行は本堂で受け付け

山腹に立つ本堂からは、周辺の山並みが見渡せる。しだいに明るくなる山の端や立ちのぼる朝霧、朝日に照らされるお堂など、朝の風景は厳かな美しさに満ちていた。

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しだいに山の端が明るくなってくる

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本堂の内舞台から山並みを望む

やがて朝の勤行が始まった。驚いたのは、僧侶たちの一心不乱な読経の姿だ。一言一句おろそかにすることなく、おなかの底から声を発する。一緒になって唱えていると、不思議な高揚感に包まれる。

お堂をふるわすほどの読経の声、打ち鳴らす大太鼓や拍子木。それらが体の芯に響き、染み入り、細胞の一つひとつから汚れを取り去ってくれるかのようだ。勤行のあとは生まれ変わったようなすがすがしい気持ちになった。

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経本などが用意されている。右上の五色線は「特別拝観」を申し込むともらえる

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声をそろえてお経を唱える

僧侶の1人が「我々にとってお経を唱えることは日常的なことですが、その普通のことを毎朝、一生懸命にするということが大切です。朝の勤行を体験して、何かを感じてくださる参拝者の方も多いです」と話してくださった。

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外舞台での礼拝も行われる

長谷寺では6月30日まで春季特別拝観を実施している。普段は立ち入ることができない国宝の本堂内で、ご本尊の足に触れながらお参りできる。平安時代から信仰を集めてきた観音様を仰ぎ見ると、そのお顔はほほ笑んでいるように見えた。

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ご本尊の間近で参拝できる

古民家で味わう山里の季節の料理

桜井市には、四季折々の地元の食材を大切にするレストランがある。のどかな山里に立つ「田舎茶屋 千恵」もその一軒だ。

訪れる人が実家に帰ってくるような気持ちになる店でありたいと、築およそ150年の古民家を移築した建物で、お店の方が「おかえりなさい」と迎えてくれる。

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懐かしい造りの「田舎茶屋 千恵」

昼も夜も、メニューは季節の野菜や山菜を使った「おまかせ膳」が中心で、価格によって2、3コースある。

この日のランチで食べたのは4860円の「おまかせ膳」。サクラのゴマ豆腐に始まり、前菜の盛り合わせでは切り干し大根の煮付けやだし巻き卵など、懐かしいおふくろの味がたっぷり。つくしの卵とじやよもぎ麩(ふ)など、目でも舌でも季節を感じられる。

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一品いっぴん丁寧に作った真心を感じる

刺し身の盛り合わせでは、イカだと思った透明な短冊は、奈良県名産のくずを使ったくず切りだった。

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透き通るようなくず切りに注目

食事の合間に、お店の方が「本日使っている野草です」とカゴに盛った材料を見せてくれた。ノビル、フキノトウ、ヤブカンゾウなどが並んでいる。

「豪華ではないですが、健康的でほっとする料理をお出ししたい」との言葉が印象的だった。

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旬の野草を食べると体が喜びそう

メレンゲとネギをのせたサワラの西京焼き、かまどで炊いたおこげのあるご飯、デザートまで、季節感あふれるコースだった。

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ご飯や漬物、ふきみそまで大満足

【問い合わせ】
長谷寺
www.hasedera.or.jp/

朝の勤行
http://www.hasedera.or.jp/free/?id=275

春季特別拝観
http://www.hasedera.or.jp/event/month_03.html#event_517

田舎茶屋 千恵
http://i-chie.jp/

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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