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再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

はたして同じ予算で辿(たど)ることができるだろうか。『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)が発刊されてから約30年。当時、グレイハウンドというバス会社のバスに乗って、アメリカ一周をしている。そのコースに再び挑むアメリカ編の3回目。

【前回「アメリカ編2」はこちら】

ついにニューヨークに到達したのだが、すでに予算は完全にオーバーしていた。なんとか節約しなくては……。

かつてはニューヨークに1泊している。1泊14ドルのユースホステルだった。しかし今回は泊まることもできなかった。ニューヨークはやはりホテルが高い。

1泊ひとり40ドルを切る宿がみつかったのはシカゴ。そこまで、エルパソ以来、夜はいつもバスの中というつらい旅が続く。

今回の旅のデータ

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

ニューヨークからシカゴへ

アメリカのホテルはやはり高い。フリーウェー沿いのモーテルがひと部屋2万円を超えることは珍しくない。そのなかでもニューヨークは最も高いエリアと思っていい。ネット検索すると、安いところもみつかるが、かなりの郊外。

なんとかシカゴで見つけたのはユースホステル。ツインといっても2段ベッド。このスタイルなら、ひとり50ドルを切ってくる。この後、シアトルでも同じタイプの宿に泊まった。

長編動画

2001年に起きたアメリカ同時多発テロ。崩壊した世界貿易センタービルの跡地に「グラウンド・ゼロ」を訪ねた。そこにある一本の木。がれきのなかから見つかった焦げ焼けたマメナシの木が再生。サバイバーツリーと呼ばれる。じっくりと1時間。

短編動画

「グラウンド・ゼロ」周辺は再開発の真っただなか。そのひとつ、ワールドセンター・モールの様子を。僕らはここで寒さをしのいでいました。

ニューヨークからシカゴへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

ニューヨークのポート・オーソリティー・バスターミナルに着いた。荷物を預け、外に出るとマンハッタンのど真んなか。零下の寒風にさらされたが、なぜかテンションが高まるのはニューヨークだから? 歩道を歩く人も皆、そんな顔をしているように見えてしまう不思議。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

タイムズスクエアもこうなっていました。李象群氏は、中国の著名な芸術家。彼の作品の展覧会が開かれるのだが……。こういう宣伝を目にすると、つい、中国の資金力に結びつけてしまうのは、僕のやっかみでしょうか。アメリカ人はあえてその下に星条旗を飾った? と深読みしてしまうのも……。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

ホテル代が高くて、ニューヨークに泊まることはできなかった。夜にはシカゴ行きの夜行バス。つらいバス旅ばかりでは悔しい……とアメリカ同時多発テロ事件で崩壊した世界貿易センタービルの跡地「グラウンド・ゼロ」へ。跡地に建設されたワン・ワールド・トレードセンターは104階まであるとか。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

崩壊したツインタワーの跡地にはサウス・プール、ノース・プールと呼ばれる記念碑が。周囲を囲む青銅板には、犠牲者の名前が刻まれている。しかしあまりに多すぎて、僕はその横にあるサバイバーツリーをずっと眺めていました。がれきのなかから生き残ったマメナシの木。長編動画はそのとき撮影。記念に落ち葉を1枚。大切にもっています。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

予算はオーバーしているが、なにか食べないと。で、寒さのなか、安い店を探して、7.99ドルのサンドイッチ。テイクアウトの店だが、隅にテーブルと椅子があった。メニューにポテト付きと記され、暖かいフライドポテトを期待したが、袋入りポテトチップスでした。7.99ドルだとこんなものなんです。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

ニューヨークには何回か来ているが、マンハッタンから自由の女神が見えることを知らなかった。そう阿部カメラマンから教えられ、海沿いのビル前につくられた公園へ。見えました。写真は望遠レンズを使っています。肉眼では小さな塔のようでした。海沿いは風が強く、早々に近くのビルに避難。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

「グラウンド・ゼロ」周辺は再開発の真っ最中。行くところもないので、ポート・オーソリティー・バスターミナルに戻った。そこの食堂で、非常食おにぎりとひとつ1.74ドルのカップ麺の寂しい夕食。日本からもち込んだ非常食も底を突きかけてきた。口に入るもののバリエーションは、今後、ますます少なくなっていく。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

シカゴ行きの夜行バスに乗り込む。車中で寝る旅が3泊も続いている。目覚めるとクリーブランド。バスはうっすらと雪が積もった冬ざれの野を、西へ西へと進んでいく。気温はかなり低くなってきた。出費を減らさないと、赤字はますます増えていく。寝不足の体に、寒さと財布の薄さはこたえますなぁ。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

バスは五大湖の南縁を進んでいった。トレドに着いた。グレイハウンドバスのターミナルと鉄道駅がひとつになっていた。かつて五大湖周辺の産業を支えた鉄道。そして全米を網羅したグレイハウンドバス。ともに衰退の道を進む交通機関。ターミナルがひとつになっても、この寂れ具合……。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

シカゴに着いた。翌日から乗るシアトルまでの切符を受けとる。グレイハウンドバスが路線を手放し、地元のバス会社が運行するためか、バスの乗り換えが多い。切符は区間ごとに発券されるので、この長さに。明日からまた2泊3日のバス旅。長い切符を手に、気分がなえていく。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

エルパソから車中泊が4日。さすがに限界。シカゴではベッドで眠りたい。といっても出費は最小限。見つけたのは、2段ベッド部屋のユースホステルで、ひとり1泊37.34ドル。狭いが揺れないだけで満足。僕らのベッドに対する要求は低くなっていた。切ない。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

近くのスーパーで翌日からの食料と、夕飯を買った。日本から持ってきた非常食はこれが最後。電子レンジで温めたブリトー。久しぶりに温かい食事。ビールも飲み、泥のように眠った。翌朝、阿部カメラマンは、「フラフラしますね」とひとこと。あまりに熟睡すると、人の体はふらつくものなのだろうか。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

シカゴからシアトルまでのバス切符を225.15ドルで買ってしまっていたから、もう、どうしようもないのだが、こっそりと、シカゴからロサンゼルスまでの飛行機の運賃を調べてみた。92ドル。それもLCCではなくユナイテッド航空だった。宿の入り口にあったメッセージをにらみつけてしまった。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

この日のシカゴは最低気温マイナス10度、最高気温マイナス3度。僕は宿でロサンゼルスまでの飛行機を検索するなどしていたのだが、阿部カメラマンはすぐ近くのミシガン湖畔のグランド公園へ。「人はまったくいませんが、ガチョウがいっぱいいました」。冬のシカゴらしい風景?

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

シカゴから先へ進む便も夜行を選ぶ。もちろん宿代を節約するため。で、夕飯はバスターミナルの売店に落ち着いてしまう。2ドルもしないカップ麺とパンという代わり映えのしないメニュー。カップ麺に湯を注ごうとするのだが、なぜか給湯口がこんなに高い。いくらアメリカ人は大柄だといっても……。

※取材期間:2018年12月4日~12月5日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回はシカゴからシアトルへ。

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅

このコーナーで長く連載が続いた「玄奘三蔵が歩いた道」が1冊の本にまとまりました。「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)。西安からスタートし、シルクロードを西に。中央アジアからパキスタン、インドへ。さらにそこから西安まで戻る長い旅。玄奘三蔵の歩いたルートを辿る現代版・西遊記です。

PROFILE

下川裕治

1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

フォトグラファー

阿部稔哉(あべ・としや)
1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編2

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