心に残る旅

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

いつもと違う場所で風に吹かれた経験は、折に触れて思い出すもの。そんな旅の思い出を各界で活躍するみなさんにうかがう連続インタビュー「心に残る旅」。第2回はタレントのふかわりょうさんです。

(聞き手:渡部麻衣子、写真=山田秀隆)

旅の行き先は毎回トーナメントで決定

 ―――ふかわさんはアイスランド好きとして知られていますが、今回「心に残る旅」の思い出の地として挙げたのはポルトガル。少し意外でした。

「アイスランドは本当に大好きで、5回行った段階で『風とマシュマロの国』(幻戯書房)という本も出しました。旅行先を決めるときは毎回自分の中でトーナメントを開くんですけど、アイスランドは常にシード。準決勝から現れる強豪です。あの国の羊たちの引力は強すぎるから、優勝回数が多くなる。でも、2009年春のトーナメントでは、初登場のポルトガルが優勝しました」

―――ヨーロッパ大陸の西端にあるポルトガルの、どんなところにひかれたのでしょうか。

「まず、ヨーロッパの中でも少し彩りが違う国に行きたいという思いがベースにあって、さらにそこに『温暖な場所に行きたい』という当時の心境が重なりました」

「旅の行き先を決めるときは何かきっかけとなる単語がまずあって、そこからいろいろ調べているうちに、いつの間にかかなり深いところまで引き込まれてしまうことが多いです。ポルトガルの場合は、『モンサラーシュという村では、沈黙の音が聞こえる』という紹介文を見つけて、その表現に完全にやられてしまいました」

―――期待通りの国でしたか?

「夜に現地の空港に着いてバスで市内に向かっているときは、『今回はちょっと間違えちゃったかな』と不安になりました。というのも、バスから見える風景が、ちょっとこう、廃れた色みだったんですよ」

「でも、翌日燦々(さんさん)と輝く太陽のもとレンタカーを走らせたら、その思いは一転しました。オリーブ畑や背の低いコルク樫(かし)の木々の間を縦断するように走るのが、ものすごく気持ちよかった。緑が多くて、草原や畑をぶわぁっとなでていく風の姿まで見えました」

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

ポルトガルは「太陽を感じる国」

―――特に印象に残っている旅のエピソードを聞かせてください。

「どれか一つというのは難しいです。まず、アライオロス。丘の上にある村なんですが、建物の外壁は真っ白で、そこにカラフルなしま模様のカーペットがダラーンとぶら下がっている。そして街中を行き交う、黒い服を着た地元のおばあさんたち」

―――皆さん黒い服をきているんですか?

「喪服ではないのですが、商売をしている人以外はなぜかみんな黒い服を着ていました。黒い服に白い壁、そしてカラフルなカーペット。そのコントラストがとても映えるんですよね」

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

アライオロス(getty images)

「『沈黙の音が聞こえる』というモンサラーシュも白壁の家屋が立ち並ぶ美しい村で、やっぱり黒い服の人たちがいっぱいいました。建物の外壁にちょっとした出っ張りがあって、そこに腰掛けてみんなぼーっとしたり、おしゃべりをしたり」

「村はとても静かで、鐘の音が鳴り響く。泊まったホテルのテラスから夕日が沈む様子が一望できたので、中庭になっていたレモンの香りに包まれながら、その光景をずっと眺めていました」

モンサラーシュ(getty images)

モンサラーシュ(getty images)

―――ほかにも、心に残った光景はありますか?

「モンサント村ですね。巨大な岩に家がへばりついてるんですよ。なぜここに住んでいるんだろうと不思議に思うくらいユニークな光景でしたが、岩の間から差し込む陽光が印象的でした。この村もとても静かで、日が暮れる頃には放牧から戻ってきたヤギが首につけているベルの音さえも耳に届くほどでした」

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

モンサント(getty images)

―――ふかわさんはアイスランドを「風とマシュマロの国」と表現しましたが、ポルトガルを一言で表す言葉はありますか?

「『太陽を感じる国』でしょうか。旅に出るときはいつもその国をイメージしたコンピレーションCDを作って持っていくんですけど、その中の1曲が、『Gary B』の『Step Into the Sunshine』。この曲がまさに旅を象徴していて、ポルトガルではずっと太陽と一緒に旅をしているような感覚でした。太陽って、日本で見てもポルトガルで見ても同じものなのに、夕日にしても朝日にしても、まるで違って見えた。もちろん、いつものお酒も旅先で飲んだらよりおいしく感じるのと一緒で、旅先ならではの『トラベラーズハイ』というのもあると思うんですけど」

―――太陽の印象が強かったんですね。

「気候も影響しているのか、ポルトガルの人は気さくです。首都のリスボンを離れると英語がほとんど通じなくなるのですが、笑顔と『Bom dia!(おはよう)』だけでなんとかなりました。ほかのヨーロッパの国を旅するときって、単語をつなぎあわせてどうにか伝えたり、相手の言葉を拾おうとしたりするんですけど、ポルトガルは違った。『Bom dia!』って話しかけると、みんなニコニコしてくれました。笑顔だけで旅ができる感覚は、ポルトガルだけのものでした」

文章や音楽で味わえる2度目の旅

―――旅から戻ってくると必ず、見たことや感じたことをブログや本で発表していますね。

「旅した後に、文章にまとめるのが好きなんです。苦痛も伴うんですけど、それでもやりたいのは、たぶん追体験が楽しいからだと思います。言語化していく中で、もう一度あのときの光景、空気感を味わえる。2度目の旅ができるというか……」

「あと、向こうで流していたコンピレーションCDをしばらくしてから改めて聴くと、自分でも思いもよらないシーンや香りや色が、鮮やかによみがえってくる。その瞬間も僕は大好きなんですよ。写真もね、一応撮りますよ? でもね、カメラは基本、意識してレンズを向けたものしか残せないじゃないですか。一方、音楽は自分が意識していないことすらも取り込んでくれる」

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

―――こんなに何度も旅を追体験できる人って、そういないと思うんですが……。

「それはね、たぶん1人で行っているからです。1人で行くと話し相手がいないから、その国に集中できる。ポルトガル対僕の、1対1になるからどんどんポルトガルが入ってきちゃうんです」

「旅を笑いに変換したくない」

―――旅の途中で誰かと感動を共有したいとか、そういう気持ちは抱きませんか?

「ないです。僕は土産話を求められるのも好きじゃないんですよ。ある種社交辞令だとわかっていても、『お土産話楽しみにしてますね!』って言われるたび、「かいつまんで話せるようなことじゃないんだよ!」と思う。いわゆる失敗談とか文化の違いを笑うたぐいの話って、苦手で。『この国ではこんな風にモノを売ってました〜』とか、ハチャメチャ珍道中とか、そんなノリの旅もいいけれど、僕は旅を笑いに変換したくないんです」

―――旅の一部を切り取って、おもしろおかしく加工するのが好きじゃないんですね。

「その国に完全に染まってしまって帰国後の日常に支障が出ている僕が笑われる、みたいなのはいいんですけど、その土地の文化や風習や在り方を笑うみたいなのは、すごく嫌なんです。僕は、自分が触れた空気感とか匂いとかをそのまま届けたいから」
ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

旅は「僕だけのミュージッククリップ」

―――ふかわさんにとって、旅とはどんなものなのでしょうか。

「旅をするときの心境と映画を見ているときの心境って、なんかすごく似ているんですよね。出発から帰ってくるまでがロードムービーのようになっている。といっても、僕の場合は映画のように大きなできごとは起こらなくても良くて、ささいなできごとに心動かされることの方が多いんですけど」

「ただ、ロケで行く海外ではあんまり感動しない。人のお金でスタッフさんに誘導してもらってるから。身銭をきって、準備をして、不安もある中で足を運ぶからいろんなものが自分の中に深く入ってくるわけで。あっ、それから、僕の旅に音楽は欠かせません」

―――コンピレーションCDのことですか?

「音楽そのものが旅の動機になったこともあります。僕が初めて1人で海外に行ったのは、20歳のとき。行き先はアメリカのカリフォルニアでした。『The Mamas & the Papas』の『夢のカリフォルニア』を向こうで聴いてみたかったんです。振り返れば、僕の旅にはいつも音楽が寄り添っている。たとえば、ディズニーランドに音がなかったら。それと一緒で、僕の旅には絶対に音楽がつきものなんです。そう考えると、旅は『僕だけのミュージッククリップ』です」

ふかわりょうさんのポルトガル 「岩に家がへばりついてる」太陽が降り注ぐ国で見た不思議な光景

PROFILE

旅する著名人

家入レオ、ふかわりょう、HARUNA(SCANDAL)、福士蒼汰、加古隆、池内博之、吉田戦車、清水尋也、しりあがり寿

ふかわりょう

神奈川県出身。タレント。テレビ・ラジオのほか、ROCKETMANとしてDJや楽曲制作、TOKYO MXの情報番組「5時に夢中!」ではMCを務めるなど幅広く活動している。秋田の名産品「とんぶり」応援ソング「とんぶりの唄」を発表した。

■「とんぶりの唄」公式サイト

http://happynote.jp/sp/tonburi/index.html

■ブログ

https://ameblo.jp/fukawa–ryo

 

家入レオさんのラスベガス エンタメの本場、大きな視野くれた

一覧へ戻る

「SCANDAL」HARUNAさんのニューヨーク 知らない自分に会えた1人旅

RECOMMENDおすすめの記事