永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(3) 風が止まっていた 風車の羽も 永瀬正敏の青森 

(3) 風が止まっていた 風車の羽も 永瀬正敏の青森 

© Masatoshi Nagase

風が止まっていた。風車の羽根も。それと、このなんともいえない雲。空と雲と大地と止まっている風車のコントラストが、単純に格好良かった。偶然に出合った風景だった。遠くから見かけて気になり、近づいていったと思う。

青森県へ、写真を撮りに行ったときのひとコマだ。撮影のときは、いろいろ考えながら出かける。狙っているものはあるけれど、まったく違うものが撮れることもある。だいたい、僕の頭の中からはみ出たもの、予想していなかったものが、写真としてはおもしろい。

もしかすると、ここでは光を撮ったのかもしれない。僕はモノクロ写真が好きで、この撮影旅行ではモノクロ写真をできるだけ多く撮影しようと心がけていた。モノクロはコントラストが大切だ。そのコントラストにもいろいろあって、奥が深い。

気になる風景を見かけて、撮りたいと思うまではタイムラグがある。車だと200メートルくらい進むから、「戻ってもらえます?」とお願いすることになる。撮りたい場面に出くわしてカメラを持っていないか、構えていなくてチャンスを逃すことも、いっぱいある。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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