魅せられて 必見のヨーロッパ

大いなる静けさ 聖なる山「オローパ」 イタリア・ピエモンテ

飛行機の窓から雪と氷に覆われたアルプスの山々の美しさに見とれます

飛行機の窓から雪と氷に覆われたアルプスの山々の美しさに見とれます

ドイツのミュンヘンから、イタリアのトリノへ約1時間15分のフライト。アルプスの上空を飛行中、山々の頂が手が届きそうなほど間近に見えました。その昔、アルプス越えがいかに難関であったかが想像できます。

その雄大なアルプスのふもとにひっそりとした礼拝堂群がたたずむのが、ピエモンテ州の「聖なる山(イタリア語でサクロ・モンテ)オローパ」です。列車でトリノ駅から、サンティア乗り換えでビエッラ・サン・パオロ駅まで約1時間15分。そこから車で15分ほどのところにあります。

朝夕、山々が霧にかすんでロマンチックな風景

朝夕、山々が霧にかすんでロマンチックな風景

山々に囲まれた雄大な自然の中に、堂々とした礼拝堂群がゆるぎなく建っている情景にまず圧倒されます。キリスト教徒でない私も神々しさを感じ、信仰心が目覚めるような気がしました。

大いなる静けさ 聖なる山「オローパ」 イタリア・ピエモンテ

山に囲まれています。ピエモンテとは山のふもとという意味です

山に囲まれています。ピエモンテとは山のふもとという意味です

16世紀から17世紀、イスラムのオスマン帝国は強大な国力を誇り、周囲の国々の脅威となりました。キリスト教徒にとっては聖地エルサレムへの巡礼は誇りであり、貴族たちにとってはステータスでもありましたが、オスマン帝国の支配下にあったエルサレムへ赴くことができなくなったために、人里離れた山中に数多くの礼拝堂や聖堂を建立して巡礼の地としました。

俗世界とは異なる「聖なる世界」が、その先にあるような錯覚にとらわれます

俗世界とは異なる「聖なる世界」が、その先にあるような錯覚にとらわれます

それらの礼拝堂群は、静かな自然環境と建造物群が美しく調和していることが評価されて、ここオローパ、オルタ・サン・ジュリオ、クレアなど9カ所が「ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ(サクロ・モンテの複数形)」として、世界遺産に登録されています。

オローパには12の礼拝堂が散在しています。13世紀初頭に、ここに聖母マリアと聖バルトロマイをまつる教会があったと文書に登場しています。時と共に巡礼者が増え、規模も大きくなりました。17世紀~18世紀にかけて地元のビエッラの地域からの寄進が増えて、さらに礼拝堂が建てられ、聖像も造られました。

緑の中に散在する礼拝堂

緑の中に散在する礼拝堂

礼拝堂を巡るルートの道案内が立っています

礼拝堂を巡るルートの道案内が立っています

標高約1200メートルの澄んだ空気を吸いながら歩いて礼拝堂を巡ると、空に映える山々や風にそよぐ木々の枝、鳥の声など、「自然」の息吹を肌で感じます。自分の心が、浄化されていくかのようです。

マリア像

マリア像

霧が晴れると、山々がくっきりと姿を現します

霧が晴れると、山々がくっきりと姿を現します

オローパにはトレッキングルートがあり、巡礼しながらトレッキングを楽しむヨーロッパの人々が少なくありません。2005年、オローパのサクロ・モンテ特別自然保護区として、標高750~2388メートルの約1500ヘクタールが認定されました。何百種類もの植物が自生しており、整えられた山道をルートマップを見ながら歩くことができます。

アルプスの山々に自生するハーブを使ったジェネピー(リキュール)

アルプスの山々に自生するハーブを使ったジェネピー(リキュール)

山々に自生するハーブなどを使ったリキュール「ジェネピー」はアルプス地方の名物です。オローパにあるショップやビエッラの街で買ってみました。爽やかな口当たりですが、アルコール度数は40%あります。甘みのあるものはカクテルにしても良いし、アペリティフ(食前酒)やディジェスティフ(食後酒)に向いています。

オローパには宿泊施設が整い、滞在することもできます。約300室あり、エレガントなしつらえのスイートルームも完備されています。

町側の眺め。ここに立つと、俗世界とは一線を画す「結界」にいるような気がしました

町側の眺め。ここに立つと、俗世界とは一線を画す「結界」にいるような気がしました

帰る朝、霧に包まれた町側を眺めながら階段を下りて行くと、「聖域」から「俗世界」へ一歩一歩戻って行くような不思議な気持ちになりました。

「サクロ・モンテ オローパ」
http://www.santuariodioropa.it/db/en/
「レイルヨーロッパ」
www.raileurope.jp

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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