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再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

はたして同じ予算で辿(たど)ることができるだろうか。12万円という予算で世界を歩いた『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)。約30年後のいま、再び挑戦している。アメリカ編は、飛行機ではなく、グレイハウンドバスに乗って、アメリカを一周する旅。

4回目は2泊3日でシカゴから冬ざれの風景のなかをシアトルに向かって、バスに乗り続けることになる。しかし、すでに予算は完全にオーバー。なんとか節約しなくては……。スーパーで買ったパンやチーズでなんとか空腹を埋め、バスが寝場所になるつらい旅は続く。

【前回「アメリカ編3」はこちら】

今回の旅のデータ

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

シカゴからシアトルへ

グレイハウンドバスでは、どんなものを食べながら旅をするのか。かつてはそれほど選択肢が多くなかった。大きなバスターミナルには、必ず売店があり、そこにハンバーガー屋が併設されていることが多い。ハンバーガー用のパンやパテを焼き、野菜やサラダを指させば、それを挟んでくれる。ほかには電子レンジで温めるピザ。あとは菓子類といったところが一般的。

しかし最近のグレイハウンドバスは、ドライブインを使うことが多い。そこに切符売り場もある。ドライブインに入っているのは、サブウェイ、バーガーキングなど、日本でもなじみが深いチェーン店が多い。ときどき地元のチェーン店も出店していて、30年前よりはバリエーションがある。どこもセットで8ドル~15ドルといったところ。僕らには縁遠いことだったが。

長編動画


うっすらと雪が積もった牧草地が延々と続く。撮影はサウスダコタ州。人を寡黙にしてしまうような風景を静かに眺めてください。これもアメリカです。

短編動画


12月初旬。そろそろこの一帯はスキーシーズン。街や道路に雪は少ないが、ゴンドラで山頂に向かえば滑走できるようだった。本格的なにぎわいまであと1カ月?

シカゴからシアトルへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

シカゴのバスターミナルに1時間遅れで姿を見せたのは、トレイルウェイズとボディーに書かれたバスだった。ここから先は、グレイハウンドが手放した区間だ。車中のひと晩が明け、デモイン、アルバートリーといった街でバスを乗り換えていった。道はしだいに雪で覆われていった。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

デモインで乗り換えたバスはジェファーソン・ラインズのバスだった。このバス会社は、グレイハウンドが撤退した後を引き継いだアイオワ州のバス会社。ここからスポケーンまでお世話になった。ターミナルの規模も小さくなり、ときに、こうして路上での乗り換えも珍しくなかった。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

気温が下がり、人の密度が低くなり、バスの便数も減っていく。ジェファーソン・ラインズの発券事務所も、途中のチェーン店の片隅を借りていることもあった。ジャクソンのオフィスはバーガーキングのなか。ローカルバスの趣が漂ってくる。こういうバス旅、僕は嫌いじゃありません。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

スーフォールズのターミナルは少し立派だった。ジェファーソン・ラインズの運転手はベテランが多く、威厳がある。注意事項を伝えるときも、通路に立って、マイクを使わず肉声で。笑いをとるジョークも忘れない。30年前のグレイハウンドの運転手をほうふつとさせる。古きよき時代のバス? 心地よかった。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

家が消え、人を寡黙にさせるような風景のなかに入っていく。アイオワ州からミネソタ州をかすめ、バスはサウスダコタ州へと入っていく。つい数日前、車窓に広がっていたのは、サボテンが点在する砂漠だった。バスのスピードは飛行機には及ばないが、アメリカの広さだけは実感できる。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

「写真を撮ってくれ」。パキスタンやインドでは、もう何回、頼まれただろうか。一緒に記念撮影させられたことも数えきれないほどある。アメリカはというと……。いました。そういう人。それほどいい景色ではないのに。アメリカ人もこのあたりまでくるとパキスタンやインドの人々と近い?

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

シカゴを夜に出発したバスに乗り、いくつか乗り換え、夜が明ける。そしてそれから約12時間、ただ、ただバスに乗っていると、夕暮れに突入していく。これがアメリカのバス旅。もううなだれるしかない。その間に使った金は、コーヒー1.07ドル、水0.95ドルで、計2.02ドル、約234円。ほめてください。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

ようやく風景が変わってきた。うっすらと雪が残る牧草地が延々と続き、アメリカの広さにうんざりとしてくる頃、バスはロッキー山脈に分け入っていた。この山脈を越えれば西海岸だ……。ダスティン・ホフマンの映画、「真夜中のカーボーイ」のラストシーンを思い出してしまった。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

ロッキー山脈を越えた。西麓(せいろく)の街、コーダレーンでジェファーソン・ラインズのバスは小休止。治安のよさそうな街並みを眺めながら、「ここなら暮らしてもいいかも」などとコーヒーを飲みながら考えていた。店に入っても、食べ物を買えないので、店頭でぼんやりしていただけですが。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

シアトル手前の大きな街、スポケーンにようやく到着。あとはコロンビア台地を越えれば西海岸のシアトル……、と街並みを眺めていると、「ん?」。飛行機が線路を走ってる? こうして飛行機を移動させることができるらしい。目的地はスポケーン空港?

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

ローカルのバス会社、ジェファーソン・ラインズが受けもつのはスポケーンまで。ここから西はグレイハウンドの世界になる。といっても、独立したバスターミナルは少なく、発券所はコンビニ風の店のカウンター横だった。たぶん店員がマニュアルを見ながら切符を売ってくれるんだろうなぁ。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

アメリカ一周のバス旅がはじまった2日目、第41代アメリカ大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ氏が死去した。目にする国旗は半旗になっていた。彼が就任したのは1989年。ということは、30年ほど前。その後、世界は大きく変わったが、僕は相変わらずバスの旅。少し落ち込んだ。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

スポケーンから西に向かい、コロンビア台地を越えると西海岸に出る。山のなかに刻まれた切り通しをバスが進んでいくと、凍りついた滝が。西海岸に向かって少しずつ気温があがってきたような気がしたのだが。乗客は黒人の割合が多くなってきた。シアトルまではあと3時間ほど……。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4
グレイハウンドバスは、しだいにシアトルに近づいていく。周辺の地形は入り組んでいる。街はピュージェット湾という海に面しているのだが、その手前でワシントン湖を越える。車の量も多くなってきた。どことなく漂ってくる都会のにおい。やっとバスを降りることができる解放感。わかってくれます?

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

シアトルに着くと、急にアジアが近づいてきた。グレイハウンドのバスターミナルから中華街は歩いて5分ほどだった。近くには日系スーパーの宇和島屋。その脇には紀伊國屋(きのくにや)書店。日本語が次々に目に入ってくる。ここで1泊。明日のバスに乗れば、翌日にはロサンゼルスに着く。

※取材期間:2018年12月5日~12月7日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回はシアトルからロサンゼルスへ。

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編4

ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅

このコーナーで長く連載が続いた「玄奘三蔵が歩いた道」が1冊の本にまとまりました。「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)。西安からスタートし、シルクロードを西に。中央アジアからパキスタン、インドへ。さらにそこから西安まで戻る長い旅。玄奘三蔵の歩いたルートを辿る現代版・西遊記です。

PROFILE

下川裕治

1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「『裏国境』突破 東南アジア一周大作戦」(新潮社)、「僕はこんな旅しかできない」(キョーハンブックス)、「一両列車のゆるり旅」(双葉社)など。「週末アジアでちょっと幸せ」(朝日新聞出版)に続く、週末シリーズも好評。最新刊は、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)。

フォトグラファー

阿部稔哉(あべ・としや)
1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」アメリカ編3

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