フランスまでボートで7分 大人のリゾート スペイン・オンダリビア
文: 相原恭子(文・写真)

オンダリビアの街並み
スペインのサンセバスチャンからバスでオンダリビアに到着。北東部のバスク州に位置し、マリーナにもなっている河川港で、フランスと国境を接しています。オンダリビアとはバスク語で「砂の浅瀬」という意味。スペイン語名はフエンテラビアです。
街なかでまず目につくのは、城を改装した、パラドールと呼ばれる国営の宿泊施設。厚い壁に小さな窓があり、見るからに堅牢な城塞(じょうさい)です。

パラドール
980年に建てられ、16世紀にさらに堅牢な要塞(ようさい)に改造されました。
中へ入ると吹き抜けや中庭などに華やかな雰囲気があり、宮殿でもあったことを実感します。チェックインした部屋からは、対岸のフランスの町アンダイエが見えます。

歴史を感じさせる細い路地

海岸のプロムナード
町を散策すると、70代という熟年カップルに出会いました。パリに自宅があり、オンダリビアにフラット(メゾネットタイプの住戸)を持っているそうです。「月に2回くらい来るわね」と奥さん。「パリは便利だけど、ここは静かでリラックスできるよ」とご主人。

あか抜けた住宅地が続きます

海を眺めると、たくさんのヨットやボートが出ています
住宅街を歩くと、30代後半というカップルが声をかけてきました。ボルドーでIT関係の仕事をしていて、両親の別荘があるので週末はここで過ごすそうです。「近いけれど、外国へ来た!という開放感が気分転換になるわね」と奥さん。「ピンチョス(小さなパンに食材を載せた軽食)を食べて、ヨットを楽しむんだよ。フランスより物価が安いからうれしいね」とご主人。

ピンチョスは格別。串がささっているものと、ささっていないものがあります
漁師町でもあるオンダリビアは、ピンチョスがおいしいことで知られます。小さなバルへ入ってみるとカラフルなピンチョスがずらり。「おいしそう!」。タコやイカ、アンチョビなど魚介類はもちろん、フォアグラも人気上昇中とのこと。パンの厚み、塩かげん、具の大きさなどのバランスが絶妙です。さすが本場。

対岸のフランスの町、アンダイエへボートで出発
たったの7分でフランスに到着。ボートは1日に何本も出ていますから、手軽に行き来できます。

アンダイエのマリーナ

アンダイエの海岸でサーフィンする人達
アンダイエにもオンダリビアにも、マリーナがありヨットがたくさん停泊し、ビーチではサーフィンする人もいます。派手でなく、日常の延長にある優雅な大人のリゾート。リッチなライフスタイルがうらやましくなります。

アンダイエの海岸通りにはホテルやフラットが並ぶ

爽やかなシードル。アンダイエのバルにて
バスク地方ではのどが渇いたら、まず飲みたくなるのがシードル(りんごの発泡酒)です。対岸のアンダイエもしかり。ウェーターが写真のように注ぐと、不思議に爽やかさが増しておいしく感じます。店によって多少味わいは異なりますが、酵母の香りとかすかなリンゴの酸味が気に入りました。海を眺めながらシードルを飲むとストレスはどこへやら。癒やされた気分になります。

パラドールで、朝食のケーキにもバスク州の州旗
一夜明けて、ホテルの朝食。毎朝、スペインの国旗でない旗がケーキに立っています。これはバスク州の州旗です。旅していると家の窓などに、この旗が出ているのをよく見かけます。地元の人に聞いてみると、自分たちはスペイン人である以前に「バスク人である」と認識しているそうです。バスクのアイデンティティーは日本人が想像するより強いです。
国境を越えて、1杯のシードルを飲みに、ピンチョスを食べに外国へ行く人々。国境地帯というのはどこかアナーキーな雰囲気があり、それも魅力です。
【取材協力】
「パラドール総代理店イベロ・ジャパン」
https://ibero-japan.co.jp/
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