にっぽんの逸品を訪ねて

天領として栄えた飛驒高山、町歩きで訪れたい老舗4軒

天領として栄えた飛驒高山、町歩きで訪れたい老舗4軒

歴史的な街並みが続く飛驒高山。例年5月には藤の花も咲く(画像提供:岐阜県観光連盟)

飛驒高山に春が訪れ、町歩きが楽しい季節が始まった。高山では春は一気にやってくるそうだ。木々が芽吹いて4月の中ごろに桜が咲くと、やがてツツジやフジなどの花々が咲き継ぐ。

天領として栄えた飛驒高山、町歩きで訪れたい老舗4軒

高山陣屋は全国で唯一残る郡代役所の主要建物(画像提供:岐阜県観光連盟)

飛驒高山とよばれる高山市は、周囲を北アルプスや白山など3千メートル級の山並みに囲まれている。木材や炭、金、鉄などの資源が豊富だったことから江戸時代は幕府直轄の天領として栄えた。市内には、徳川幕府が派遣した代官や郡代が政務を行った陣屋とよばれる役所が今も当時の姿を留めている。

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かつての城下町の中心であり商人町として繁栄した町並みが残る

飛驒高山には、時間をさかのぼったような伝統的な町並みも残っている。上三之町や下二之町など上町と下町それぞれの三筋の通りを中心に、江戸時代から昭和までの各時代の町家が続く。高山一帯は古くから優秀な木工技術者集団「飛驒匠(ひだのたくみ)」の里として知られる。軒の深い出格子の商家や、酒ばやし(杉の葉を球形に束ねてつるしたもの)が下がる造り酒屋など重厚な建築が続くようすは、さすが飛驒匠の里だと思わせる。町並みには新旧のさまざまな店が商い、そぞろ歩くのが楽しい。

上二之町で訪ねたい焼き物店と老舗そば屋

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風情ある店構え。「渋草焼」ののれんがかかる

高山陣屋にほど近い上二之町には、江戸時代末期から続く渋草焼を継承する芳国舎の直営店がある。渋草焼は、江戸時代末期の1841(天保12)年に、郡代の豊田友直(藤之進)が地元に新たな産業を興そうと半官半民で窯を開かせたのが始まり。地形や環境が陶房に適した市内の「渋草」に窯を築いたのでこの名が付いた。

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芳国舎の店内。渋草調の作品が並ぶ

店内には、気品あふれる作品が並んでいる。瀬戸の陶工と加賀九谷の絵師という本場の職人を招いて作られた焼き物は「渋草調」とよばれる独自の様式を生み出した。御用窯だったが、献上品から日用品まで幅広い品が作られてきた。地元の家庭でも、冠婚葬祭など特別な日に使うために、渋草焼の器が大切に受け継がれてきたという。

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繊細な絵付けもすべて手作業

芳国舎では渋草にある陶房で、作陶や絵付けなどのすべての工程を手作業で作り上げている。絵模様は伝統的なものが多いそうだが、現代でも全く古さを感じないことに驚く。真っ白でありながらどこか温かみを感じさせる白と、凜(りん)とした青の取り合わせが美しい大小の皿、細密な赤絵を施した器、大胆な模様の大皿など、どれも格調高くモダン。優れた様式は時代を超えて人の心を引きつけることを実感する。

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創業時の面影を今も伝える「恵比寿」

上二之町には、明治時代に飛驒高山最初のそば専門店として創業した「恵比寿」本店もある。ひときわ目を引く屋根上の看板には、創業当時のガラスをそのまま使用しているという。店内も明治期の町屋独特の造りを残し、大戸や通り土間、坪庭が見られる。

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そばの風味が香り立つ。量もたっぷりだ

そばには、ひきたてのそば粉が七割から七割五分の割合で含まれ、毎日そば職人が手打ちする。打ち方は初代から代々受け継がれる恵比寿独特の手法。そばつゆもうまみを引き出すために一定期間じっくりと熟成させた秘伝の製法だ。そばの実をはじめ、だしや薬味、天ぷらの素材である山菜にもこだわっている。

酒蔵を利用した日本酒バーでひと休み

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飛驒牛あぶり寿しは新しい名物

上二之町から一本西へ入った上三之町の通りは、ひときわにぎやかだ。
名物の飛驒牛にぎり寿司(ずし)がテイクアウトできる店も2軒ほどあって、行列ができている。目の間で飛驒牛をさっとあぶって甘辛のタレを塗り、ワサビを添え、薄焼きせんべいにのせて渡される。気軽に食べられるが、味は本格的。霜降りの甘い脂が口の中で溶けていくようだ。

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店内の土蔵にも歴史を感じる舩坂酒造店

清流に恵まれた飛驒高山は古くから酒造りが盛んで、まち中に6軒の造り酒屋がある。上三之町にある舩坂(ふなさか)酒造店は、江戸末期の創業以来、約200年の歴史を刻む酒蔵だ。

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人気の試飲コーナー

店内には代表銘柄「深山菊」や「甚五郎」をはじめとする日本酒の試飲コーナーがあり、その奥に蔵を改造した日本酒バーもある。試飲して好みの日本酒を見つけたら、その場で注文して1杯350円くらいから日本酒バーで飲むことができる。

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日本酒バーでほっと一息

重厚な扉や高い天井、使い込まれた黒く太い梁(はり)や柱が、蔵の長い歴史を伝えている。土蔵内は音が遮断されるのでとても静か。守られているような安らぎも感じる。つまみとして置かれた塩とともにゆっくりと日本酒を味わった。

お土産を買うなら和菓子店へ

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鍛冶(かじ)橋の近くにある稲豊園本店

飛驒高山は昔からお茶と菓子を楽しむ文化があり、市内に和菓子店も多いという。そのうちの一軒が100年あまりの歴史をもつ和菓子処「 稲豊(とうほう)園」だ。名物はネコの顔をかたどった「猫子(ねこ)まんじゅう」。和菓子の文化に若い人も親しんでほしいと、本格的な製法で現代のニーズに合わせてデザインした。

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「招福猫子まんじゅう ふむふむ」は5種類の味

「招福猫子まんじゅう ふむふむ」では、紅茶生地に粒あん、黒ゴマ生地にこしあんなど組み合わせを変えた猫の顔のまんじゅうと、求肥(ぎゅうひ)でイチゴあんを包んだ肉球餅など5種類の味が楽しめる。お土産にも喜ばれそう。

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季節限定の「萌えいづる」(画像提供:GiFUMATiC -ギフマチック-)

季節限定の和菓子もあり、4月末までは貴重な白あずきを使った「萌えいづる」を販売。一気に萌え出づる飛驒の春と、春を待ちわびる飛驒の人の思いを表現している。美しいサクラ色もほんのりとした甘さも上品な一品だ。

【問い合わせ】

高山陣屋
https://www.pref.gifu.lg.jp/kyoiku/bunka/bunkazai/27212/

渋草焼 芳国舎
http://www.shibukusa.co.jp/

恵比寿
http://www.takayama-ebisu.jp/

舩坂酒造店
https://www.funasaka-shuzo.co.jp/

稲豊園
https://www.tohoen.com/

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

1000年続く祈りの時間 長谷寺の朝の勤行体験 奈良県桜井市

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