あの街の素顔

テキーラ飲み放題の豪華列車「クエルボ・エクスプレス」でテキーラ村へ

テキーラというお酒をご存じだろうか? リュウゼツラン(アガベ)を原料とするメキシコを代表する蒸留(じょうりゅう)酒「メスカル」の中でも、ハリスコ州とその周辺で造られるものをテキーラと呼ぶ。そんなテキーラの里であるテキーラ村とメキシコ第2の都市グアダラハラを結ぶ観光列車「クエルボ・エクスプレス」が人気を集めている。

列車内は、テキーラ大手のホセ・クエルボ社のテキーラが飲み放題。同社のラ・ロヘーニャ蒸留所を見学後に高級テキーラもテイスティングできる。さらにマリアッチのショーや踊りも楽しめる、愉快この上ないテキーラまみれの列車ツアーだ。

(文・写真・動画/鈴木博美)

豪華列車で行こう

白シャツに赤いバンダナ、テンガロンハットでカウボーイ風にキメる乗客

白シャツに赤いバンダナ、テンガロンハットでカウボーイ風にキメる乗客

朝8時、グアダラハラの駅は、すでに大勢の人でにぎわっている。見回すと乗客の8割はメキシコ人といったところだ。おそろいの服装でキメているグループや3世代の家族連れなどが乗車していたが、なかでも女子グループ客が目についた。聞くとグループ内に結婚を控えた女性がいて、独身最後の女子旅でハメを外すために参加したという人が多かった。

ホームには黒塗りの豪華列車が待機している。「クエルボ・エクスプレス」だ。座席はカテゴリーにより3タイプに分かれるが、どのクラスでもテキーラは飲み放題。今回は中間の「プレミアムワゴン」に乗車した。

列車内でスタッフによるテキーラのレクチャーが行われる

列車内でスタッフによるテキーラのレクチャーが行われる

テキーラを炭酸で割ってライムをのせたロングカクテル。スタートの1杯にぴったりだ

テキーラを炭酸で割ってライムをのせたロングカクテル。スタートの一杯にぴったりだ

朝9時、列車はグアダラハラの街を離れ、約60キロ先のテキーラ村をのんびり目指す。さっそく座席にはテキーラベースのカクテル、マルガリータが運ばれてきた。その後もテキーラのソーダ割りなど次々と運ばれてくる。朝からテンションが高くなる。

しばらくすると、車内ではスタッフによるテキーラの正しい飲み方やカクテルの作り方などのレクチャーが始まる。テキーラは小さなショットグラスに注ぎ、塩やライムの搾り汁と一緒に一気に飲み干すものだと思っていたが、それはアメリカ人の発想だそうだ。

高品質のテキーラはワインやウイスキーと同じように視覚、嗅覚(きゅうかく)、味覚を楽しむ。スペイン語と英語での説明だが、理解できなくても全く問題ない。アガベ畑が広がる景色とおいしいタコス、車内の楽しい雰囲気だけでもいい気分だ。

テキーラ蒸留所を見学

山積みになったピニャ。ピニャはスペイン語でパイナップルを意味する。形状が似ていることからそう呼ばれている

山積みになったピニャ。ピニャはスペイン語でパイナップルを意味する。形状が似ていることからそう呼ばれている

午前11時。テキーラ村に到着すると、マリアッチによる演奏で出迎えられる。テキーラ村一帯は「リュウゼツランの景観とテキーラの古い産業施設群」として世界遺産に登録されている。専用のバスで、ラ・ロヘーニャ蒸留所に向かい、テキーラマイスターと一緒に工場見学だ。

まずはテキーラの原料となる「ピニャ」と呼ばれるアガベの茎部分を蒸し焼きにする。試食するととても甘くて繊維質が多い。まるでふかし芋だ。それを搾汁し発酵、蒸留したものがテキーラとなる。さらに樽(たる)熟成の長さによって色も呼び方も異なるのだ。

製造工程を見学した後は、お楽しみのテイスティング。熟成期間のない無色透明のブランコ、熟成期間1年の薄いゴールドのレポサド、3年未満の琥珀(こはく)色のアネホ、3年以上の赤銅色のエクストラ・アネホを、テキーラマイスターの説明を受けながら、色と香りと味の違い、樽熟成によるまろやかな口当たりを楽しむ。テキーラ、実はとても奥が深いお酒だった。

テイスティングの後は、マルガリータを片手にテキーラ村を自由に散策する。広場ではパフォーマンスが繰り広げられテキーラ屋台が並び、ちょっとしたお祭り気分も楽しめる。

オレンジジュースで割る「テキーラサンライズ」

オレンジジュースで割る「テキーラサンライズ」

マリアッチの演奏や屋台が並ぶテキーラ村の中央広場

マリアッチの演奏や屋台が並ぶテキーラ村の中央広場

マリアッチショーで大合唱

半屋外の舞台で本格的なショーが楽しめる

半屋外の舞台で本格的なショーが楽しめる

午後4時。蒸留所内の特設会場で伝統舞踊とマリアッチショーを鑑賞する。いや、鑑賞というには場が盛り上がりすぎている。舞台と1000人以上の観客が一体となっての大合唱が始まり、まるで野外フェスティバルに来たような気分だ。メキシコ人のマリアッチへの深い愛を見せてもらった。マリアッチや伝統舞踊も素晴らしく見応えがあるショーだった。

カラフルで華やかな衣装も見どころの一つ

カラフルで華やかな衣装も見どころの一つ

アガベ畑でフィナーレ

アガベを刈り取る必殺仕事人ヒマドール

アガベを刈り取る必殺仕事人ヒマドール

午後5時半。ショーの後は専用バスでアガベ畑に移動して、収穫のデモンストレーションを見学する。テキーラに使用が許されているのはブルーアガベという品種のみで、収穫を迎えるまでに7年もかかるそうだ。

ヒマドールと呼ばれる収穫専門に携わる仕事人が、50キロほどある大きなアガベを掘り起こし、コアという独特の形をした専用の道具で球茎の周りの葉を切り落とす。熟練ヒマドールは1日に1トン以上のアガベを刈り取るという。ヒマドールに暇はないようだ。

アガベ畑で記念撮影

アガベ畑で記念撮影

メキシコ人と言えどアガベの畑は珍しいらしく、自撮りや記念撮影を楽しんでいる。畑の一角ではテキーラと軽食のパーティーが始まる。ここでもマリアッチが登場。飲んで歌って踊って、時間を忘れるほどラテンのノリに酔いしれた。

帰路はバスでグアダラハラへと向かう。バーテンダーも乗り込み、車中でもカクテルがサービスされるが、さすがに乗客の半分は眠りに落ちていた。午後8時、テキーラ漬けの一日ツアーはグアダラハラのコンベンションセンター前に到着し、終了となった。

テキーラのおいしさを学べることはもちろんだが、エンターテインメントも優れていて、お酒を飲まない人でも十分に楽しめる、想像以上に愉快なツアーだ。人気の「クエルボ・エクスプレス」は、毎週土曜日(一部日曜日)に運行している。

【動画】テキーラ飲み放題の豪華列車「クエルボ・エクスプレス」でテキーラ村へ

PROFILE

「あの街の素顔」ライター陣

こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、葛西亜理沙

PROFILE

鈴木博美(すずき・ひろみ)

旅行業界で15年間の勤務を経てフリーの旅行家に。旅を通じて食や文化、風土を執筆。日本航空機内誌のほか、新聞雑誌等に海外各地の旅の記事を寄稿。著書に一人旅に役立つ電子書籍「OL一人旅レシピ」インド編、カンボジア・ベトナム編、エジプト編、世界中のおいしい料理をおうちで作る「いつもの食材で作る世界の料理レシピ」。ブログ「空想地球旅行」で旅のあれこれを発信中。

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