心に残る旅

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

いつもと違う場所で風に吹かれた経験は、折に触れて思い出すもの。そんな旅の思い出を各界で活躍するみなさんにうかがう連続インタビュー「心に残る旅」。第6回は俳優の池内博之さんです。

(聞き手:渡部麻衣子、写真:高嶋佳代)

20代前半まではバックパッカー、タイとネパールの旅で学んだこと

――現在ひかりTVで配信中のドラマ『逃亡料理人ワタナベ』で、池内さんは主人公の天才料理人を演じています。妻殺しのぬれぎぬを着せられたワタナベは刑事から逃れるために旅に出ざるを得ない状況ですが、池内さん自身は旅にはよく出る方ですか?

「旅は好きです。今すぐどこかに行けるとしたら、イタリアかスペインで何かおいしいものを食べたいですね。若い頃はお金がなかったので、今とは旅の仕方も全然違いましたけど」

――若い頃というと、モデルとしてデビューした10代の頃でしょうか。

「20代前半までは、よくバックパッカーをしていました。その頃の思い出で1番心に残っているのは、3カ月かけてタイとネパールを回ったときのことです。タイって、きれいなビーチがいっぱいあるじゃないですか。その中でも1番のビーチを見つけようと、『きれいな水を求めて』を旅のテーマに定めて、1人で行ってみたんです」

――きれいなビーチは見つかりました?

「いや、それが……。僕、そのころ石にハマったんですけど」

――えっ、石? 鉱石ですか?

「当時はなぜか石の力をものすごく信じていて、いろいろ買い集めていました。タイってね、海もきれいですけど、石も安く買えるんですよ。それで、ビーチを探すついでに石も見て回っていたら、たまたま現地で友人に出会って、ネパールで安くダイヤモンドが買えると教えられたので、すぐチケットを買って飛びました」

――「きれいな水」は、もういいんですか?

「テーマは、『石を求めて』に変更です。機内ではみんな暖かそうな格好をしていたので、もしかしてネパールは寒いのか?と不安を感じながらカトマンズの空港に降り立ちました」

――ちなみに、池内さんの服装は。

「半袖、短パンです。それでも昼間は大丈夫だったんですが、問題は夜。友人の薦めで向かったポカラはヒマラヤ山脈のすぐ近くにある町で、太陽が沈むととても冷える。慌ててフリースを調達しました」

――で、良いダイヤモンドは手に入ったんでしょうか。

「結局買えませんでした。ダイヤモンドどころか、ほかの石もなかった。ポカラではタクシーでも遠回りされそうになったし、散々でした」

「宿でもひともんちゃくあって、それまでは1泊500円の宿に泊まっていたんですけど、どうしても日本に電話したかったので、奮発して3千円くらいのホテルに泊まったんですよ。でもなかったんです、部屋に電話が。話が違う、キャンセルしてほしいって伝えたら、騒ぎになっちゃって……」

「事情を説明して解決しましたが、しっかり主張しないとだまされて終わっちゃうというのは、若い頃の旅で学びました」

僕にとっての楽園はメキシコの「イスラ・ムへーレス」

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

――ドラマのロケは、伊東(静岡県)や淡路島(兵庫県)、神石高原(広島県)などでおこなったそうですね。

「どこも素晴らしかったですが、淡路島が特に印象に残っています。山の高いところで揺れている菜の花の黄色と、その下に広がる瀬戸内海の青い海。朝日が昇る時間帯は絶景でした。食べものでいうと、伊東のキンメダイもおいしそうでしたね」

――「おいしそう」ですか? 「おいしかった」じゃなくて?

「スケジュールがタイトで時間がなかったので、僕は料理をするだけ。食べられなかったことが唯一の心残りです」

――池内さんはときどきインスタグラムで手料理をアップしていますが、料理が好きなんですか?

「体づくりをしているときは、鶏肉のメニューを中心によく作ります。ただワタナベは和食の料理人だから和包丁を使うでしょう? それは使ったことがなかったから、かつらむきの練習はかなりしっかりやりました。撮影前、自宅の冷蔵庫は大根だらけで、大量の大根はきんぴらやサラダにして消費していました」

 

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ご指導ありがとうございます🙇‍♂️ #かつらむき #料理人ワタナベ

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――ジャッキー・チェン主演の「レイルロード・タイガー」やジョン・ウー監督の「マンハント」など、池内さんは中国の作品への出演経験も豊富ですよね。日中で、撮影の仕方に違いはあるのでしょうか。

「中国には台本がない。それが1番大きな違いです。日本だと台本を読み込んでキャラクターを理解して本番を迎えますが、中国は1週間くらい前に監督からこんな感じの役と聞かされるだけで、当日現場にいくまでセリフはわからない」

――当日までセリフがわからないと、演じるのも大変そうですが。

「でも、それはそれでおもしろいんですよ。監督とディスカッションしながらセリフが決まったり、ときにはエンディングまで変わったりするから。台本があってもなくても、演じる上でキャラクターをつかむことはとても大切なので、作品を撮っている間は常に役のことで頭はいっぱい。全力を出し切るから、撮影後はいつも空っぽになります」

――燃え尽きるんですね。

「そんなときです、旅に出たくなるのは。これまで旅した中で1番好きな場所は、メキシコのイスラ・ムヘーレス(ムヘーレス島)。自転車で1周できてしまうくらいの小さな島なんですが、ものすごくロマンチックな場所です」

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

イスラ・ムヘーレスの海 ©池内博之

「古い建物がいっぱいあって、夕方になるとどこからかギターの音色が聴こえてくる。で、ちょっとビーチの方に行くと、みんなハンモックに揺られながらテキーラを飲んでのんびりしている。遠浅の海もめっちゃきれいで、魚が足をツンツンしてきたりなんかして……。僕にとってはまさに楽園で、かなりリフレッシュできました」

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

イスラ・ムヘーレスのビーチ ©池内博之

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

イスラ・ムヘーレス滞在中は自転車で移動。これは自撮りに失敗したそう ©池内博之

――仕事で空っぽになった自分を旅でリセットして、また次の仕事へ。池内さんにとって、俳優とはどんな仕事ですか?

「作品を見た人を喜ばせたり、勇気づけたりする、ある種職人のようなものだと感じています。歌手や料理人も、人の心を動かす仕事ですよね」

――ワタナベも料理で誰かを元気づけたり、背中を押したりしています。

「ワタナベは、演じていてとても楽しかったです。“逃亡料理人”だけあって、毎回ラストはどこかに逃げているんですけど、泳いで海を渡るとか、ヘリコプターで飛び立つとか、逃げ方もバラエティーに富んでいておもしろかった」

「あと、ワタナベは良い食材と出合うと興奮して、脳内で様々な妄想を繰り広げるんですよ。ニヤけながらカニと混浴したり、原始人の姿で獲物を追い回したり……」

「僕はこれまで悪そうな男の役が多かったから、妄想シーンの撮影は毎回楽しみでした。このドラマでは今までにない、やわらかい感じの池内が出せたので、ぜひみなさんに見て欲しいです」

池内博之さんのイスラ・ムヘーレス「ものすごくロマンチックな場所です」

上に着たシャツ ¥24,000(税別) MONCAO/モンサオ(BEAMS ROPPONGI HILLS/ビームス 六本木ヒルズ)
パンツ ¥38,000(税別) PT01/ピーティーゼロウーノ(BEAMS ROPPONGI HILLS/ビームス 六本木ヒルズ)
ヘアメイク:上地可紗、スタイリスト:荒木大輔
その他 すべてスタイリスト私物

ドラマ『逃亡料理人ワタナベ』予告編

・著名人に聞く「心に残る旅」 記事一覧

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PROFILE

旅する著名人

家入レオ、ふかわりょう、HARUNA(SCANDAL)、福士蒼汰、加古隆、池内博之、吉田戦車、清水尋也、しりあがり寿、高畑充希、松本穂香、江國香織

池内博之

茨城県出身。俳優。高校時代から雑誌モデルとしてキャリアをスタートし、1997年にドラマ「告白」で俳優デビュー。2006年には「13の月」で映画監督デビューも果たす。近年は「イップ・マン 序章」「レイルロード・タイガー」「マンハント」といった海外作品にも多数出演。現在ひかりTVで配信中のドラマ『逃亡料理人ワタナベ』で主演を務めている。

■ドラマ『逃亡料理人ワタナベ』公式サイト
http://ryourinin-watanabe.com/

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