楽園ビーチ探訪

美食と伝説に彩られたイタリア・アマルフィ海岸の小さな町へ

南イタリアのアマルフィ海岸は、ティレニア海に突き出したソレント半島の南岸一帯をさします。複雑に入り組んだ海岸線は、急峻(きゅうしゅん)な岩山が海へとなだれ込み、カーブの先に次の愛らしい街が開けるという展開が連続しています。そんな平地の少ない、ドラマチックな地形をいかし、日差しをたっぷり浴びる段丘に名産のレモンやオリーブの畑がつくられている。

土地が限られている分、人々は海へと繰り出す。9~11世紀に漁業や貿易で栄え、アマルフィ公国として最盛期を迎えた。かつての海運国の風情が今も残るエリアです。

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ネラーノのマリーナ・デル・カントーネ。切り刻まれたような岩山に段々畑が見えます

ローマからナポリを経由して、ソレント半島へ向かう友人との約5時間のドライブ。その間に友人はSNSで“求ム食情報”と呼びかけ、ミシュラン星付きレストランから地元メシまであらゆる情報が集まりました。ありがたい。

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ズッキーニのスパゲティの店「ダ・マリア・グラツィア」

まず向かったのは、ソレント半島の先端近くにある小さな町ネラーノ。古代ローマ時代に貴族たちが夏を過ごした海辺の町です。町の駐車場に車を止め、マリーナ・デル・カントーネの海岸へ。右手に小高い山がそびえる玉砂利の浜の左端近くにお目当ての店がありました。この町はズッキーニのパスタ“スパゲティ・アッラ・ネラーノ”が有名で、その元祖が、「ダ・マリア・グラツィア」。一見、海の家のような外観ながら、数軒の海沿いのレストランの中でダントツに混み合っています。

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マリーナ・デル・カントーネのビーチで唯一の人気レストラン。船着き場にもテーブルを置いてお客をさばいています

どのテーブルもオーダーしている一品が、ズッキーニのスパゲティ。太いもちもちした麺に、繊維状になったズッキーニが濃厚なチーズを絡めていて、芳醇(ほうじゅん)な味わい。バジルもちょっぴり香りますが、主役はチーズ。チーズ好きにはたまりません。この一皿は1901年にお店を始めたマリア・グラッツィアさんが生み出したもので、1952年にはこのかいわいの名物になっていたそう。母から息子へ秘伝のレシピは受け継がれ、大切に守られているそうです。

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黄色いパスタが、名物のズッキーニのスパゲティ。ズッキーニの姿はなく、繊維となってチーズとバターを絡めるのに一役買っている?

お次はイタリア屈指のセレブ御用達のリゾート地、ポジターノへ。こちら、ギリシャ神話に登場する海の神ポセイドンが愛する妖精パシテアに贈ったという伝説があります。

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岩山が背後に迫り、家並みが山肌を埋めるイタリア屈指のリゾート地、ポジターノ。岩山が神々しい

急峻な丘には、れんが色やレモンイエローのカラフルな家が張り付いています。細い路地や階段がくねくねとビーチへと降りていき、「行きはよいよい、帰りは……」なアプローチです。

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街を見守るポジターノのサンタ・マリア・アッスンタ教会。内部にはイオニア式の柱がそびえています

やがてレストランやショップが連なる華やかなビーチに出ます。背後を振り返ると、建物群の中で頭ひとつ飛び出しているのが、マヨルカ焼きタイルのキューポラが美しいサンタ・マリア・アッスンタ教会。店先でよく見かけたのは綿の白いシャツやワンピース。これはイタリア語でモーダ・ポジターノと呼ばれる1960年代に一世を風靡(ふうび)したスタイルなのだそうです。ファッションも誕生したリゾート地なのですね。

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まだ水の冷たい4月でも、ポジターノのビーチは大にぎわい

そして、アマルフィ海岸の中心地アマルフィへ。ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが、他界した、愛する妖精をこの世で最も美しい地に葬り、街を切り開いたという伝説があります。

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アマルフィのビーチの4月。夏になると、海水浴客でびっしりになるらしい……

街のアイコンとなっているのは、ドゥオーモ。階段を上った上にそびえるアマルフィ大聖堂はロマネスク建築やイスラム建築、ゴシック建築など、街が歩んできた歴史が建築様式として築かれているようです。アマルフィの守護聖人が眠る壮麗な地下礼拝堂や、イスラム建築と地中海風庭園が融合した天国の回廊など、昔年の栄華がしのばれます。

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アマルフィのハイライト、ドゥオーモ。階段を上った左の「天国の回廊」や美しい地下礼拝堂など、荘厳な気持ちに

アマルフィでは、スイーツの「デリッツィア・デル・レモーネ」を食べ比べ。レモンクリームの入った、おわん型のスポンジに、さらにレモンクリームをかけたもの。通りに面したテーブルで食べていると、頭上から「あら、おっぱいのようなケーキよ」との日本語が。たしかに、そうなのですが、そう言ってしまうと身もふたもない……。あちこち食べて、大聖堂のふもとにあるカフェ「パンサ」が評判どおりに美味。上品な甘さに爽やかなレモンの香り、いくつでも食べられそうな名物です。

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「デリッツィア・デル・レモーネ」

■取材協力
ホテル・サンタ・カテリーナ
www.LHW.com/scaterina

■日本での問い合わせ先/
ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド TEL0120-086-230

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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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