永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(7) 永瀬正敏が撮った「愛」 カメラという思いを包む手

(7) 永瀬正敏が撮った「愛」 カメラという思いを包む手

© Masatoshi Nagase

これは、愛を撮ったつもりだ。そう言うのは照れくさいけれど。思いを包んでいる手を撮りたかった、と言ってもいい。

ベトナム戦争の報道で知られ、ピュリツァー賞を受けた写真家・沢田教一さん(1936~70)が使っていたカメラを、奥様のサタさんが持っておられるところだ。沢田さんのお宅にお邪魔して、お話をうかがいながら撮らせていただいた。

遺品のヘルメットの中に、小さなお守りが入っていた。沢田さんはカンボジアで取材中に、銃撃されて亡くなった。「その時は、かぶっていなかったのよ」。そうおっしゃったサタさんの、何とも言えない表情が忘れられない。

撮影をしながら、「思いを断ち切られてしまうつらさ」を、ひしひしと感じた。写真を仕事にしていたのに終戦後にカメラを持ち逃げされ、撮れなくなってしまった僕の祖父の気持ちも、一緒に伝わってきていた気がする。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(6) 黒鳥の湖、いや、心の飛翔 永瀬正敏が撮った青森

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(8) 駆けだした笑顔 すかさず切り取った永瀬正敏

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