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再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

約30年前に発刊された『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)をなぞる旅の番外編はバングラデシュ。この国の村で10日間、暮らすことはできないだろうか。総費用はやはり12万円である。

【前回「バングラデシュ編1」はこちら】

向かったのは南部のコックスバザール。30年ほど前から小学校の運営にかかわっていた。長いつきあいになる現地の人たちが、家探しを手伝ってくれることになっていた。しかし家探しは難航した。村の人たちは、外国人に家を貸したことがなかったのだ。

そこで候補にあがったのは、ウキアやクトゥパロンだった。クトゥパロンには、隣国ミャンマーから流入したロヒンギャ難民向けのキャンプがあった。難民援助団体で働く外国人が家を借りているようだった。さっそくウキアとクトゥパロンに向かったのだが……。

今回の旅のデータ

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

コックスバザールからクトゥパロンへ

コックスバザールから南は、飛行機と鉄道はなく、公の交通機関はバスのみ。バスの終点は、ミャンマーとの出入国ポイントになっているテクナフという便が多い。テクナフまでは4時間ほど。この一帯に暮らす人にしたら、このバスを利用するしかないため、本数は30分に1本ほどある。予約をとる必要はなく、コックスバザールのバスターミナルに行けば、だいたい次の便の切符を買うことができる。

ホテルはコックスバザールから先は急に少なくなる。終点のテクナフまでの途中には、ウキア、クトゥパロン、ニラ村などにあるが、現地の人向けと思ったほうがいい。

長編動画

コックスバザールから南に向かうバスの車窓風景を。人口の多さを実感する街と、緑で埋まった水田地帯を進んでいく。道が狭いために起きる渋滞や悪路の揺れを想像しながら見てください。

短編動画

クトゥパロンの建設現場。砕いたれんがで建物をつくっていくらしい。ビルの強度が少し心配。れんが粉砕機が動いている間は話もできない。

コックスバザールからクトゥパロンへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

コックスバザールからウキアに向かうバスに乗る。運賃は100タカ、約133円。3時間ほどで着くという。バスは30分に1本ほどの間隔で走っていた。コックスバザールからウキアに向かう道は片側1車線の一本道。30分にひとつぐらいの頻度で村を通る。そこで起きる渋滞は長編動画で。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

席は自由。冷房はないが、この時期のバングラデシュはそれほど暑くない。以前は通路までぎっしりと客が立っていたが、本数が増え、快適バス旅。バングラデシュは着実に豊かになってきている……と実感してしまう僕は、バス旅に求める快適度レベルがかなり低い? 一般的にはきついバスだと思ってください。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

バングラデシュ南部には、70万人を超えるロヒンギャ難民が、隣国ミャンマーから押し寄せた。「難民キャンプに電気を送るための電柱ですよ」と同行してくれた知人が教えてくれた。コックスバザール沖の島では、日本の援助で火力発電所が建設中だという。難民はこれから何年も居続けると地元の人たちは思っているようだった。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

僕たちの進行方向とは逆のコックスバザールに向かう道はいつも大渋滞。理由は検問。ロヒンギャ難民をバングラデシュの都市に入り込ませないようにするためだ。同時にドラッグ類の検査も行う。渋滞のなか、車は意味もなくクラクションを鳴らすので、道はいつも大音響に包まれる。疲れる国だと、ため息ひとつ。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

ウキアに着いた。このアパートの2階と3階が貸し出されているという。しかし管理人からは、「空室? ありません。先月に埋まりました」という言葉が返ってきた。難民援助団体の欧米人が3人。難民援助団体は一般に給料が高く、そこで働くバングラデシュ人が20人以上。「難民景気」という言葉が脳裏(のうり)をかすめる。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

部屋を探してクトゥパロンに向かう。沿道には土管が積まれていた。クトゥパロンのキャンプには、少なくとも60万人以上のロヒンギャ難民が収容されている。周辺のインフラ工事を目の当たりにすると、この一帯に巨大なひとつの都市をつくる事業のように見えてくる。人口60万人。たしかに都市の規模。人口だけは。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

クトゥパロンに着いた。そのにぎわいにぼうぜんとしてしまった。8年ほど前、ここを訪ねていた。小規模だが、すでに難民キャンプがあった。キャンプの入り口付近に、5軒ほどの雑貨屋があるだけだった。それがいまや……。1000軒以上の商店がひしめいている。これはなんなんだ……?

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

次々に食料や物資が運びこまれていた。聞くと、買いにくるのは、難民キャンプ内の商店主だという。キャンプ内には難民が開いた店が何百軒もあるそうだ。彼らが仕入れのために、キャンプの前に広がるクトゥパロンにやってくる。つまりクトゥパロンの店はどれも問屋だったのだ。1000軒以上の問屋……。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

問屋街の道は迷路。まるでタイのバンコクにあるサンデーマーケットのよう。携帯電話ショップや金細工店、衣料品店も多い。ここには金のある難民もやってくるという。すべてが難民でまわっている街ができあがっていた。そしていまも増殖中。難民キャンプってなんなんだろう。混乱の街歩き。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

クトゥパロンではいま、10軒以上のビルが建設中だという。街の商店で働く人たち向けのアパートだという。すでにできあがったアパートのなかに、たまたまひと部屋、空室があるという。その部屋は、写真右側の建物の2階。さっそく下見に向かう。はたして部屋はみつかるかどうか……。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

部屋を見せてもらった。10日間だけなら5000タカ、約6650円だそう。コックスバザールより高いというが、予算的にはなんとかなりそうだった。ここにしようか……。思案していると、管理人がやってきてすす払いをはじめた。数日前まで人が住んでいたというのに。その住民は掃除をしなかった?

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

管理人が大家に連絡をとるという。返事がくるまで、アパート脇で待つことに。アパートの裏が、もう難民キャンプだった。眺めていると、子供たちがプロパンガスのボンベを転がしながら運んでいた。誰でもキャンプに入ることができる雰囲気。これでいいのだろうか。チェックポイントはキャンプ内にあるというが。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

難民キャンプ内は一応、区分けされ、それぞれに番号が振られていた。借りようとしていたアパート脇の一画は、この旗の番号のようだ。キャンプ内を歩いていると、大家から連絡が入った。答えはノー。外国人に貸すのは面倒だからだという。借りたいバングラデシュ人はいくらでもいるから……知人が説明してくれた。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

部屋がみつからない。理由は降って湧いたような難民景気。どうしようか……。ぼんやり眺めていると、難民キャンプとクトゥパロンの街の境にある空き地で、子供たちがクリケットもどき遊び。彼らも難民。しかし、それにしても子供が多い。その事情は追って知らされることになる。そのあたりは次回に。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

やはり難民キャンプをきちんと見てみたい。知人が奔走し、正式にキャンプにはいることが可能になった。入り口には、キャンプ内で活動を続ける援助団体が表示されていた。なかに入ると、その規模に圧倒されることになる。そこはキャンプというより街だった。次回で詳しく紹介します。

【次号予告】次回はクトゥパロンの難民キャンプからチョドリパラ村へ。

※取材期間:2019年2月12日~2月13日
※価格等はすべて取材時のものです。

■下川さんによるクラウドファンディング
「バングラデシュの小学校校舎の修繕プロジェクト」はこちら

 

■下川裕治インタビュー

#01 「読者が僕に求めているのはつらい目に遭うことだから……」

#02 相棒も共感できない特殊能力や癖とは?

#03 旅の一番のピンチ、それでも続ける原動力とは?

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編2

ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅

このコーナーで長く連載が続いた「玄奘三蔵が歩いた道」が1冊の本にまとまりました。「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)。西安からスタートし、シルクロードを西に。中央アジアからパキスタン、インドへ。さらにそこから西安まで戻る長い旅。玄奘三蔵の歩いたルートを辿る現代版・西遊記です。

PROFILE

下川裕治

1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

フォトグラファー

阿部稔哉(あべ・としや)
1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」バングラデシュ編1

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