京都ゆるり休日さんぽ

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

「レモン」という言葉の響きや甘酸っぱいムードに、なぜか心惹かれるという人は多いのではないでしょうか。京都の繁華街に昨年オープンした「酒場檸檬」は、そんなノスタルジックな気分をギュギュッと詰め込んだ、いわゆる“大衆酒場”。京料理でも町家カフェでもかっぽう居酒屋でもない、ディープな京都を垣間見るユニークな一軒です。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

短冊のお品書きやお酒のポスターなど、酒場的アイコンが独特の “ダサかわいい”ムードを醸し出す

ガード下や横丁の飲み屋にありそうな「レモンサワー」「焼酎」「天プラ」などの文字が並ぶ看板。おそるおそるドアを開けると、お品書きの赤い短冊、ステンレスのテーブルにビールケースの荷物入れ、と予想を裏切らない酒場テイストに迎えられます。店内に流れるのは、30〜40代のハートにストライクの90年代J-POP。けれど、レモン、レモンとうたうお品書きをよく見れば、王道の酒場メニューにそこはかとなく漂うキュートな気配にも気づくはずです。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

酒場感たっぷりの外観だが、移転した系列店「シトロン ブレ」を改装した空間。ひとりでも入りやすい

この不思議な酒場の仕掛け人は、京都で「フランス菓子教室 シトロン」を主宰しながら、酒場檸檬のほか「ステーキビストロ シトロン ブレ」「ビストロ セー」の2店舗を経営する山本稔子さん。古都・京都でフランスのお菓子と料理をライフワークにしてきたスタイリッシュな経歴からは、意外すぎる新展開です。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

オーナーの山本稔子さん。フランス系の飲食店を経営する一方で「大衆酒場が好きで」と語る

「お酒が好きで、大衆酒場の雰囲気も好きなんですが、行くのは少し気が引けますよね。自分自身が肩ひじ張らずに行ける、気取らない飲み屋を作りたかったんです」と山本さん。「むしろ、今までの店よりここ(酒場檸檬)の方が私らしいかも」と話します。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

「レモンマーボー豆腐」(756円)と「レモンサワー」(500円)、いずれも税込み

酒場檸檬の名の通り、名物はレモンを使った創作料理。「レモンマーボー豆腐」は、しょうゆや中華系調味料を使わず、塩とゆずコショウのみで仕上げたさっぱりとした後口。レモンの果肉が入っているので、時折キュッと鮮烈な酸味がアクセントになります。長崎県・佐世保のご当地グルメを元にした「薄切りレモンステーキ」は、レモンの酸味に焦がしバター、ケッパーの風味があとを引く一皿。この「おしゃれとダサさの絶妙なさじ加減」が、山本さんが一番大切にしたポイントでした。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

「薄切りレモンステーキ」(1,080円・税込み)。風味豊かなソースが絶品

「おしゃれで上質な店もよく知る同世代の女性たちが、ここでは思い切りリラックスして飲めるように。どこか昭和感があって、それでいて『かわいい』とか『おいしそう』と思える要素もある、ギリギリのラインを模索するのが難しくて、楽しくて」

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

カウンター奥の棚に並ぶコップは山本さんのコレクション。飲料メーカーのノベルティーやキッチュな柄など

レモンサワーを頼むと、レモンの輪切りをグラスに掛けたモチーフのマドラーが付いてきます。ソフトドリンクやお冷やは、山本さんの私物のコレクションであるレトロなコップでご提供。懐かしくて、なんだかちょっとおかしくて、戻らない時間を思うと少し切ない。そんな甘酸っぱい記憶のスイッチが、この店にはあちこちに仕掛けられています。「この店で飲んで、カラオケに寄って帰る人も多いんですよ」と山本さんは笑います。

キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」

大衆酒場の雰囲気を大切にしながらも、清潔感があり居心地が良い

未熟さの象徴で、大抵は料理の脇役となり、けれどなぜか人の心を惹きつけてやまない魅惑の果実。誰の心にも眠るレモンのような思い出や気持ちを最高のアテに、酒場檸檬でこよいの一杯を楽しんではいかがでしょうか。(撮影:津久井珠美)

酒場檸檬
https://sakabalemon.owst.jp

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

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