カメラは旅する

心躍るアートの街、写真家が旅するサンフランシスコ

「街中にこんなにアートがあったんだ!?」

久しぶりのサンフランシスコだった。学生の時に住んでいた頃は、大学、アパート、アルバイトの往復生活で街の片隅しか知らなかった、と今更ながらに気づいた。写真家となった今、改めて旅してみると目に飛び込んでくる景色は新鮮そのもの。パブリックアートも増え、都市開発で雰囲気が変わった場所もある。美術館やギャラリーに足を運ぶ途中でも、街を歩いているだけでアートに出合い、心が躍る。

(文・写真/葛西亜理沙)

色鮮やかなミッション地区

ミッション地区はヒスパニック系の住民が多く暮らす。彼らのルーツを示すような色鮮やかな壁画でこの地区は彩られ、ストリートアートで有名になっていた。落書きなんてものじゃない。そのクオリティーの高さたるや、この地区全体がキャンバスのよう。

以前は外部の人をあまり寄せ付けないような地区だったが、現在はおしゃれなカフェ、雑貨、アパレルショップや高級レストランが並び、当時とはまるで印象が異なる。

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平和を訴えるものや、政治的なメッセージが込められた壁画が多い。次にくる時はこの壁画も変わっているだろう

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メキシコの画家フリーダ・カーロを描いた壁画。真っ赤な壁を生かした絵が目を引く

陽気な音楽がギャラリーから響いてきた。「パフォーマンスアートのイベントでミュージシャンが来てるよ! 聞いていきなよ!」と、気軽に声をかけてくれる。誘いにのって中まで入って行く。中は芸術家やアート好きの人たちの熱気であふれていた。アートは人の心をオープンにし、人と人をつなげるのかもしれない。

帰り道、人気レストランのひとつ「Foreign Cinema」で食事をとった。白黒映画が店内の雰囲気に彩りを添えている。天井が高く、外にいる気分になって気持ちのいい夜をむかえた。

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誘われるまま中に入ったギャラリー。中米や南米を思わせる音楽が流れ、観客は肩を揺らしリズムにのっていた

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「Foreign Cinema」の店内。毎晩、映画が上映されている

ユニオン・スクエアで出会ったアーティスト

翌朝、ホテルを出て近くにある広場、ユニオン・スクエアに行くと、「Red Umbrellas」という展示会が行われていた。そこで出会ったアーティストのドナ。

アメリカ人の彼女は、中国の水墨画に魅せられ、30年以上作品を描いているそう。「出会いが人生を変えるのよ。私のことかっこよく撮ってよね!」とチャーミングな彼女。この広場ではいつもイベントが行われている。立ち寄れば、素敵な出会いがあるかもしれない。

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アーティストのドナ。師匠が亡くなった後、その遺志を継いで水墨画を教えているのだという

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ギリシャ神話の勝利の女神ナイキ像は、ユニオン・スクエアの象徴

サンフランシスコ近代美術館は必見

アートと言えばアメリカ西海岸を代表する美術館、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)は欠かせない。作品の前で真剣に語り合っている人や、セルフィーを撮っている人、床に座ってスケッチをしている学生たちもいる。みんな自由にそれぞれのスタイルで鑑賞している。見るだけではなく、自由に写真を撮れるから楽しみも倍増。アート好きだったら、丸一日過ごしていられる。

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「snap+share」展。60年代〜現代までのスナップ写真や手紙の展示をしていた

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アナログ写真からデジタル写真へと変容していく様を存分に鑑賞した。その展示方法は興味深かった

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美術館の踊り場にある大きな窓際で読書している人。まるで絵画のよう

展覧会を終えて外に出ると、既に日が傾いていた。通りに人だかりが出来て、ストリートパフォーマーが観客をにぎわせている。チップをくれた人に「イタリアからきたの? イタリアから5ドルいただきましたー!」と叫んでいた。コンクリートの上で体を自由自在に動かしながら、ものすごいジャンプと回転力で踊っている。どう鍛えればこんなふうに踊れるのだろう。体にバネが入っているのではないかと、彼のダンスアートに圧倒されてしまった。

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夜のヘイズ・バレー、ひときわ目立つパブリックアート

ホテルに戻る頃は、すっかり夜になっていた。日が暮れるとサンフランシスコは日中とはまた全然違う雰囲気になる。ヘイズ・バレーにあるパトリシア・グリーン公園を通りかかると、突如カラフルなイルミネーションアートが見えた。単色で輝いているのかと思いきや、レインボーカラーなど様々な色合いに、刻一刻と変わって行く。

サンフランシスコ在住のアーティスト、チャールズ・ガデケンの『SQUARED』と呼ばれるパブリックアートだった。周りには窓明かりや街灯以外に光を放つものがなく、ひときわ目立っていた。周りの住民は、窓を開けたらこのアートを毎晩眺められるのだ。

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各キューブには12個~24個のLEDライトが設置され、数百万ものパターンで光を放つという

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高さが15メートルほどもあり、近づいて下から見上げるとさらに迫力を増す

刺激的で変わり続ける街、サンフランシスコ。美術館はもちろんだが、街を歩けばパブリックアートやパフォーマンス、ストリートアートに出合う。学生の頃に歩いていた場所はアートによって様変わりし、その場所を旅するというのは頭の中で記憶を塗り替えて行くような感じだった。次に訪れる時はどんなアートに出合えるだろう。

■取材協力

カリフォルニア観光局
サンフランシスコ観光協会
Galleria Park Hotel
住所:191 Sutter St, San Francisco, CA 94104 USA
電話:+1 415-781-3060

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宿泊したホテル「Galleria Park Hotel」。建物は100年以上の歴史があり、時代に合わせて内装を変えてきた。今はとてもモダンな雰囲気になっている。ダウンタウンの真ん中に立地していて、どの場所に行くにもアクセスがとても良い

PROFILE

葛西亜理沙

フォトグラファー。

横浜生まれ。サンフランシスコ州立大学芸術学部写真学科卒業後、写真家・坂田栄一郎氏に師事。その後、独立。東京を拠点に活動。広告や雑誌などで撮影する他、個人の作品を国内外で発表している。第63回朝日広告賞入賞。第16回上野彦馬賞「九州産業大学賞」受賞。

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