あの街の素顔

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

いま、料理人たちがこぞって「パーフェクト」と絶賛するアジが、宮崎県日南市の小さな目井津港で水揚げされているのをご存知だろうか? その名は「めいつ美々鯵(びびあじ)」。2017年にブランド化されると、たちまちそのおいしさが話題をよび、目井津を訪れる人が後を絶たないという。その味わいを確かめに宮崎へと向かった。

5月中旬、初夏の日差しがまぶしい「宮崎ブーゲンビリア空港」に降り立った。クルマに乗り、太平洋に面した長い海岸線を、ひたすら南下すること約1時間。日南市南郷町目井津は山々のふもとにある、青く澄んだ海が広がる美しい港町だ。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

目井津港。室町時代から漁業が続けられているという

港の沿岸から沖合周辺は、川から流れ込む森の栄養分と黒潮が混ざり合う恵まれた漁場となっているそうで、良質な魚・豊富な魚種が定置網漁で水揚げされている。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「めいつ美々鯵」は定置網で漁獲される

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

鮮度のよさがウリのめいつ美々鯵。漁獲から水揚げまでの初期冷却、その後の貯蔵、輸送まで徹底した温度管理が行われている

南郷町内の飲食店では、6月2日まで「めいつ美々鯵料理フェア」が開催されている。その中からさっそく、1900年創業、厳選した海の幸が自慢の「ホテル丸万」を訪ねた。

「わたしは大阪の料亭で修業していました。全国の魚を扱ってきましたが、目井津の魚はレベルが違う。絶品です。なかでも初夏のアジは最高ですね」と社長の松尾浩治さん。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

ホテル丸万の松尾浩治さん。目井津の四季折々の魚のよさを知り尽くし、絶品の料理に仕上げる

その日の朝水揚げされたばかりの「美々鯵 三ツ星」が目の前に並べられた。黄金色にきらめくその美しさは、まるで宮崎の太陽の光を吸い込んだかのよう。松尾さんが包丁を入れて開いた身もまた、美しい。見事な張り。そして指で押したら戻ってきそうなほどの躍動感にあふれている。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「めいつ美々鯵 三ツ星」。1匹1匹、脂質含有量を計測し、7パーセント以上のものだけを認定。今年からは、全国初の自動脂質選別機も導入し話題となった

「美々鯵はキチキチしてるね」と松尾さん。キチキチとは地元の言葉で「歯ごたえ」にあたる。
「ふつう、アジはやわい。これは歯ごたえがある」

ゴールドのタグが輝く三ツ星姿造りをいただいた。バツグンの脂のりだが、その脂は極めてマイルドで上品。弾力のあるむっちりした歯ごたえ。調味料はいらないほどの濃厚なうまみ。「アジ概念」が変わるほどの絶品だ。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「美々鯵 三ッ星」の姿造り。ほどよい脂のりと味のバランスのよさが魅力

美々鯵は加熱しても、じつにおいしい。煮付けは火を通してもなお、ふっくら、しっとり。凝縮したうまみが楽しめる。フライにすれば、大衆料理とは思えない「優雅」な味わいだ。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「美々鯵の有馬煮」。一度焼いてからじっくり炊いたアジはふっくら、ほっくり。サンショウの風味が美々鯵の味わいを引き立てる

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「美々鯵フライ」。かつては、かまぼこ店だったホテル丸万ならではのひと工夫で、美々鯵に魚のすり身をはさんでフライに

こんな美々鯵のブランド化は、ふたりの生産者の熱い思いからスタートした。目井津で大型定置漁業を営む新堀水産社長・元浦亮(まこと)さん。そして、東水産社長・東修さん。ともに家業を受け継いで社長就任後、競うように鮮度管理、選別方法の切磋琢磨(せっさたくま)を続け、ここ10年で品質がみるみる向上した。「なかでも春先から初夏にかけてとれるアジは、宮崎県内、そして築地市場(現・豊洲市場)で高い評価を得るようになりました」と元浦さんは語る。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

元浦亮さん(右)と東修さん(左から2人目)

しかし、地元住民はその評価を知らず、市場関係者の認識も「定置どれのアジ」のまま。「このアジに名前をつけて、目井津を代表するブランドにできないか。愛する目井津をアジで盛り上げたい」。ライバルでありながら思いを共有した元浦さんと東さんは協力して行動を起こした。

仲買業者、商工会、漁協に、日南市、宮崎県が加わって「めいつの魚ブランド化推進協議会」を結成し、元浦さんは会長に、東さんは副会長にそれぞれ就任した。日本全国のアジ産地を視察し、勉強会を重ねた。ブランド基準は、定置どれの強みを生かした徹底した鮮度管理、地元目井津港に水揚げされた3月から6月の旬のもの、大きさは90グラム以上に決定。魚を指す地元の幼児語「びび」に、目井津のアジの大きな魅力である「美しさ」を重ねた「めいつ美々鯵」と命名し、2017年3月にブランドを発表。メディアに取り上げられ、市場でも価値が高く評価された。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

ふたりのチャレンジは続いた。魚では珍しい「ハイグレードブランド」に取り組んだのだ。もともとの基準に加えて、1匹1匹脂質量を計測して脂質含量7パーセント以上のものを選別する、紫外線殺菌海水や低酸素海水で処理するなど、さらに厳しい基準を設けた。どれも大変手間がかかる。けれど「すべてにおいて間違いがないアジ」として昨年4月、ワンランク上の「めいつ美々鯵 三ツ星」が登場。県内外の料理人たちが「パーフェクトなアジ」と、こぞって大絶賛。南国の小さな港町のアジは、ますます注目を集めることになった。

食事処として地元で人気の「鈴之家旅館」の店主である鈴木安士さんも、「美々鯵としてブランド化してから、旬を待ちわびて訪れるお客さまが増えました」と語る。

鈴木さんは美々鯵のうまみをいかして抜群に美味しい調味料を生み出した。なんと「美々鯵のアンチョビ」である。美々鯵を塩漬けにして、オリーブオイルに漬けこむこと1年。完成したアンチョビは、濃厚なうまみがあるけれど、イワシのようなクセはなく、いたってさわやか。これをベースにさまざまなソースを作り上げ、美々鯵料理に添えている。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

きめ細かなパン粉を薄く付けて香ばしく揚げた「美々鯵のフライ」。美々鯵のアンチョビを使ったうまみいっぱいのトマトソースといただくと抜群のおいしさ

サックリ揚げたフライにトマトソース。こんがり焼いたムニエルにバーニャカウダ。美々鯵の美味しさをダブルで味わえる逸品をいただくと、倍増したうまみが鮮やかに口の中に広がった。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

「美々鯵のムニエル」。美々鯵のアンチョビに、たまねぎ、パセリ、隠し味にしょうがなどを加えた、濃厚な「バーニャカウダ」を添える

毎年5月の「めいつ美々鯵まつり」も大盛況だ。「いい魚を地元に水揚げし、地域に根差した地元の人に愛されるブランドを目指しています」と元浦さん。

料理人が絶賛する「めいつ美々鰺」 宮崎県日南市のブランド魚を訪ねて

美々鯵の格安販売や、寿司、刺身、フライをふるまう「めいつ美々鯵まつり」(2019年は終了)

その言葉のとおり美々鯵が目井津の元気につながり、誇りとなっていることは、町を歩けばすぐわかる。いたるところで「美々鯵ロゴ」の入ったポロシャツや、パーカーなどを誇らしげにまとった人々に出会うからだ。

きっと日本一、地元で愛されてやまない美しく、幸せなアジ。ぜひ目井津でその極上の味わいを堪能していただきたい。

めいつ美々鰺
https://fishtown-meitsu.jp/bibi/
めいつ美々鯵料理フェア2019
https://www.discover-miyazaki.jp/event/item_16058.html
ホテル丸万
http://hotel-maruman.com/
鈴之家旅館
https://www.kankou-nichinan.jp/tourisms/577

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PROFILE

「あの街の素顔」ライター陣

こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、松田朝子

池田 陽子

薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。
宮崎生まれ、大阪育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは?という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。著書に『​ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『サバが好き』(山と渓谷社)、『「サバ薬膳」簡単レシピ』(青春出版社)など。

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