永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(10) 緒形拳さんを思い出した 永瀬正敏が撮った雪と漁船

(10) 緒形拳さんを思い出した 永瀬正敏が撮った雪と漁船

© Masatoshi Nagase

雪の漁港を撮りたいと思って出かけた青森県の外ケ浜町で、雪が積もった舟を見かけた。近くには、漁師さんが物置に使うような小屋もあった。改めて見ると、僕が主演した映画「赤い雪」の一場面を、どことなく思わせる。

青森の港町は、北欧っぽいと思う。この場所ではないけれど、壁とか屋根がパステル調の家が目についたからだ。雪が降っても目立つからかもしれないが、その色合いが、フィンランドやノルウェーの映画で見た景色に近い。

僕は、地方に行くと映画が撮りたくなる。僕が九州の中でも田舎の方の出身で、東京生まれの東京育ちではないからかもしれない。地方の方が、色っぽいな、と感じるのだ。ちょっとした風景を見ただけで、物語が頭に浮かんでくる。

映画「魚影の群れ」で緒形拳さんが演じたような漁師さんがいて、奥さんとは早くに死に別れている。けがで長いこと漁に出られないが、準備は怠らない。そこへ都会から若い女性が訪れて……。実に、想像力をかき立てる風景だ。

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> (9)何を待つのか
> (8)駆けだした笑顔
> (7)思いを包む手
> (6)心を解き放て
> (5)音をまとった男

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(9) 永瀬正敏、子供の頃にタイムスリップ 青森の駅舎撮った

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(11) この男女、始まり?終わり? 永瀬正敏が撮ったカンヌ

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