旅空子の日本列島「味」な旅

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

日本一の長流、信濃川の河口にひらけた新潟は江戸時代、日本海西廻り航路の寄港地。幕末には外国船が出入りした開港五港として栄えた町。その名残を伝える豪商邸宅や行政建物、高級料亭が今も本町や古町、西大畑に残っている。

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

六連アーチが目をひく市のシンボル萬代橋

「堀と柳と美人の町」と呼ばれたこのエリアへは、新潟駅前から徒歩10分の信濃川に架かる長さ306メートルの萬代橋を渡って行く。

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

黒御影石に刻まれた「新潟ブルース」

渡った橋のたもとの黒御影石に、「思い出の夜は 霧が深かった 今日も霧がふる 万代橋よ……」と、50余年前に美川憲一が歌ってヒットした『新潟ブルース』(山岸一二三作詞)の歌碑があった。橋は六連アーチの鉄筋コンクリート造りで、クルマやバス、人の往来が絶えない新潟の大動脈である。

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

本町アーケード街に露店が並ぶ本町市場

アーケードでは野菜や花などの露店がずらりと並ぶ本町市場が市民の台所的存在。この本町・古町界隈で目に付くのは名物「笹だんご」などの菓子店。その1軒の大阪屋に入って新潟銘菓「万代太鼓」を味わった。筒形に巻いたバウムクーヘン生地の中にクリームを詰めた、ふわりとした歯応えにとろりとした舌触りの洋風焼き菓子である。

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

大阪屋の看板菓子「万代太鼓」

古町花街の料亭、鍋茶屋から西へ歩くと税務署、美術館などが集まる西大畑町。高級料亭の行形亭(いきなりや)の前でタクシーを降りる芸妓の姿に、昼どきながらつやめきを感じた。この料亭の北側にかつて新潟刑務所があったことから、この間の道は今でも地獄極楽小路と呼ばれている。

また表通りには漆喰(しっくい)壁の蔵や板塀が連なる白壁通があり、回遊式庭園と建築美が見られる豪商の旧齋藤家別邸や、大地主・伊藤家から寄贈された別邸を公開した北方文化博物館新潟分館が向かい合って情緒豊かな道筋をつくっている。

「堀と柳と美人の町」 往時の華やぎ残す新潟市

豪商の別邸や高級料亭が並ぶ白壁通

界隈には会津藩士の「殉節之碑」や作家・坂口安吾生誕碑のある新潟大神宮、スイス人設計によるロマネスク・ルネッサンス折衷の木造建築のカトリック新潟教会など、和洋文化が織りなして栄えた時代を伝えている。

駅に向かう柾谷(まさや)小路の、高さ125メートルあるNEXT21の展望ラウンジで360度の眺望を堪能した。今しがた歩いてきた古町や西大畑のすぐ向こうに日本海が近かった。夕日がさぞかし見事だろうと思ってしばしたたずんだ。

〈交通〉
・JR新潟駅下車
〈問い合わせ〉
・新潟観光コンベンション協会 025-223-8181

PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

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