あの街の素顔

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

今年は、イタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年。その節目にトリノでは、めったに公開されない彼の『自画像』が特別公開されています。その展覧会と、イタリア王国最初の首都だったこの街の宮殿を、トリノに22年間住む宮本さやかさんが巡りました。

ダ・ヴィンチ『自画像』、最後の見る機会??

レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年を記念して、各地で作品展が開催されている今年のイタリア。ダ・ヴィンチといえば、まず思いつく作品は『モナ・リザ』『最後の晩餐(ばんさん)』でしょうか。

では、これは?

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

ダ・ヴィンチが晩年の自身を描いたといわれる『自画像』 ©Musei Reali Torino

上記2作ほどメジャーではないものの、誰もが「どこかで見たことがあるかも」と思う作品ではないでしょうか? それもそのはず、この『自画像』は、イタリア国内にあるダ・ヴィンチ作品の中で重要度ベスト5に入ると言われます。

なのに知名度がいま一つなのは、通常は一般公開されていないから。いったい、どこにしまいこんであるの!と思いきや、なんと私の住むイタリアはトリノの、王宮図書館が所蔵していたのでした。台紙が著しく損傷しており、光などの刺激をこれ以上与え続けると完全に破損する危険があるとか。

ですが今年、没後500年を記念してトリノの王宮美術館で特別公開されています。この機会を逃したら、もう見ることはできないかもしれない??

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

「 世界一美しいデッサン」とも言われるダ・ヴィンチ作『少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作』も同時に公開されています©Musei Reali Torino

1861年、それまで小国の集まりだったイタリアが統一され、「イタリア王国」が生まれた時、最初の首都になったのがトリノです。初代イタリア国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は、トリノに居所を置き、フランスの一部やサルデーニャなども治めていたサヴォイア家の当主でした。そのお父さん、カルロ・アルベルト王が1839年に購入し、トリノの王立図書館に保存されてきたものが『自画像』と、同時に公開されている13枚のデッサン、というわけです。

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

「レオナルド・ダ・ヴィンチ 未来を描く」展ではダ・ヴィンチ作品約50点の他、同時代に活躍したミケランジェロやラファエロ、ボッティッチェッリなどのデッサンも展示され、見比べると面白い!

世界遺産の王宮、外は質素、中はゴージャス

話はちょっと逸れますが、第2代イタリア王ウンベルト1世のお妃が、マルゲリータ王妃でした。王夫妻がナポリを訪れた時、老舗ピッツェリア「ブランディ」のピザを召し上がり、その時、ある一つのピザを王妃がいたく気に入りました。モッツァレラチーズ、トマト、バジリコでイタリア国旗の3色を表したそのピザが、“ピッツァ・アッラ・マルゲリータ”と命名されたという逸話は有名です。

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

王宮広場にある「マダマ宮殿」

さて、トリノを州都とするピエモンテの人たちは、自分たちの富を外に見せるのをよしとしない気質を持っていると言われます。そのせいかトリノはずっと観光地化されず、情報も外に発信されませんでした。
そんな気質を端的に表すのが王宮です。外観は意外なほど質素です。

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

トリノ市民の憩いの場所として愛されている王宮広場。奥の白い建物が王宮

でも、博物館として公開されている王宮内に一歩足を踏み入れてみると内装は豪華で、そのギャップが楽しいのです。他のヨーロッパ諸国にひけを取らぬよう、当代の芸術家たちを招き、美しい城や館をどんどん作らせたということです。

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

王宮に入ってすぐの「名誉の大階段」は、イタリア統一を記念し、当時の有名な舞台芸術家に作らせたもの。まさに舞台のような広がりに圧倒されます

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新古典主義とギリシャ様式をミックスしたデコレーションが可愛らしくもゴージャスな「舞踏の間」。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世とハプスブルク家のマリア・アデライデ妃が、婚礼の舞踏会を開くために完成させたものと言われています

これが最後??ダ・ヴィンチ「自画像」公開 イタリア・トリノの世界遺産王宮

オリエンタルな装飾とバロック風天井画が華やかに詰め込まれた「中国風の小部屋」

王宮やマダマ宮殿の他、最初の国会議事堂として使われたこともあった「カリニャーノ宮殿」が王宮のすぐ周辺に、そしてトリノ市内と近郊にある離宮や別荘が「サヴォイア王家の王宮群」として世界遺産に登録されています。

そういえば狩りのための離宮「ヴェナリア・レアーレ」では、この秋、ダ・ヴィンチの有名作品「白貂(しろてん)を抱く貴婦人」展を開催する予定になっています。

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トリノ市内から10キロほど離れた郊外にあるヴェナリア・レアーレの宮殿©La Venaria Reale

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ヴェナリア・レアーレの宮殿の、美しい「ガレリア・グランデ(大広間)」©La Venaria Reale

長大なアーケード、王が造らせたのはなぜ?

サヴォイア家の都市整備によって、碁盤の目に整備されたバロック風の街並みが今も残り、その間をポー川がゆったりと流れるトリノ。雨の日でも王妃がぬれずに散歩できるよう、王が命じて造らせたと言われるアーケードは、合計11キロとも14キロとも言われ、今は雨の日のショッピングに役立っています。

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王妃様のために作られたアーケードの下を散歩します

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ポー川にかかる美しい眼鏡橋「ヴィットーリオ・エマヌエーレ橋」は、ナポレオンがトリノを占領していた時期に作らせたもの。ヴィットーリオ・エマヌエーレ1世は、市民が「過去の占領のシンボルを踏みつけにする」ことができるよう、橋の骨格を残しました

トリノに22年暮らしている私は、もはや心はトリネーゼ、夢中になってトリノの美しさについてお伝えしてしまいましたが、世界遺産や王家の歴史だけがトリノの魅力ではありません。何と言っても食べ物がおいしいこと、そしておいしいワインやお菓子も豊富なこと抜きには語れません。その話はまた、別の機会に。
(フードジャーナリスト・宮本さやか=在トリノ)

「レオナルド・ダ・ヴィンチ 未来を描く」展
トリノ王宮博物館内 サバウダ・ギャラリーにて2019年7月14日まで開催
博物館公式サイト(外国語)
https://www.museireali.beniculturali.it/

イタリア政府観光局(日本語)
http://visitaly.jp/torino-leonardo-500-3.html#

ヴェナリア・レアーレ
www.lavenaria.it

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PROFILE

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こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、松田朝子

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