永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(12) 「眠れない街」に放っておかれて 永瀬正敏が撮ったカンヌ 

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。撮ったのは、南仏カンヌの花でした。

(12) 「眠れない街」に放っておかれて 永瀬正敏が撮ったカンヌ 

© Masatoshi Nagase

路地にある花屋には見えない建物の前に、歩道をふさぎ車道にまではみ出して置かれていた花たち。車が来たら引っかけてしまいそうなくらいに。2017年、国際映画祭開催中のカンヌの街で見かけた。

この映画祭では、ノミネートされた映画ごとのパーティーが1回は開かれ、国ごとのパーティーなどもあるため、映画祭参加者にとっては「眠れない街」になる。いかにも、そのパーティーを彩るためという風情の花だった。

花たちの、出番を待っている感じがいいなと思う一方で、出番が来るまで放っておかれているのがちょっと切ない。この時は、モノクロフィルムを入れたカメラも持っていたのに、モノクロでは撮っていない。これはカラーで、と思ったのだろう。

カンヌ国際映画祭の会場では、花をよく見かける。ゴージャスに飾っているところもあれば、一輪だけ差してあるところもあるが、生け方や置き方が粋なので感心する。花は、この映画祭の大事な「参加者」なのかもしれない。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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