太公望のわくわく 釣ってきました

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、釣りライター安田明彦さんの「カツオのケンケン漁」同乗記。漁船で目にした漁の秘密とは。

ケンケン漁は和歌山名物のトローリング

やってみたいことが、この世の中には、いっぱいありすぎます。釣りの世界でも同じです。とりわけ、漁師の漁法には、特別やってみたいことがいっぱいあります。今回は、そのやってみたいことが、半分実現しました。

和歌山県の春の漁と言えば、ケンケン漁。ケンケンカツオというブランドがあるぐらい有名な漁法です。ケンケンの意味は、諸説あるのでここでは省きましょう。漁としては、ルアー(疑似餌)を使ったひき縄漁、つまりトローリングです。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

ケンケン漁をする船は、操縦室付近から前方に向けた2本の長い竿がセットされている。漁の時は、この竿を真横に向ける

春、水温の上昇とともに南から黒潮に乗ってカツオが北上してきます。その、上りのカツオを狙うのがケンケン漁なんです。出船した港には日帰りするので、生のままの、新鮮なカツオが手に入るのです。

半分実現したというのは、ケンケン漁をする山本久生船長の久丸には乗せていただいたものの、漁師のケンケン漁船でアマチュアが漁をすることは規則でできないため、見学だけさせてもらったからです。

久丸には3本の長い竿(さお)がセットされています。左右に1本ずつ、トモ(船尾)に1本、が通常パターンです。左右の竿はアウトリガーとも呼ばれ、それぞれに3本の仕掛けをセットし、船を動かしていくのです。(ケンケン漁のイメージはこちら

仕掛けが絡まない工夫とは

私が知りたかったことの一つは、カツオが仕掛けにかかったことをどうやって知るのか。普通の釣りでは、魚がかかった時のアタリは糸や竿から手に伝わってきますが、この漁法ではアタリが分かりません。

もう一つは、アウトリガーにつけた仕掛けをどうやって取り込むのか、です。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

ロープを巧みに操り、前を向いていたアウトリガーを横向きに

早朝5時に田辺港を出た久丸は、20分ほど進むとアウトリガーをセットしました。長さ6、7メートルはあろうかという竿を船首と垂直方向に向けるのですが、山本船長はロープを巧みに操り、慣れた手つきでセットしていきます。

まず、二つ目の謎が解けました。アウトリガーには、先端、中央部、船に近い根元付近の3カ所に、仕掛けをつける場所があります。それぞれの場所から伸びた細いロープが、山本船長の手元で束ねられていました。これをほどいて、長さの違う仕掛け3本を取り付けます。仕掛けは片側3本、左右で6本。これで、トモにある3本の竿に1本ずつ、合計9本の仕掛けを流してカツオのアタリを待つのです。

で、このロープを手繰り寄せることでカツオを取り込めるようになっているのです。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

カツオの首根っこをつかむと作業がしやすくなる

面白いのは、真ん中の仕掛けです。

先端の仕掛けにかかったカツオを取り込むとき、隣にある真ん中の仕掛けが邪魔になり、絡んでしまうことがあります。もたもたしていては数が釣れません。ましてや仕掛けを絡ませれば時間のロス。水揚げに影響します。

そこで、先端の仕掛けにかかったカツオを取り込むときは、真ん中の仕掛けをいったん途中まで引き上げて、絡まないようにする仕組みになっています。カツオを取り込んだら、すぐさま仕掛けを放り込むと、自動的に先端までロープが持っていってくれます。真ん中の仕掛けを通過したら、途中まで引き上げてあった真ん中の仕掛けを降ろしてやれば、また、3本の仕掛けを流せる、というわけです。

この作業の順番を間違えようものなら、船上がぐちゃぐちゃになること間違いなしです。

カツオのアタリを知る方法とは?

「昨日は、手前でよう掛かった」と山本船長。しかし、この日は反応がありません。無線からは、僚船の何本、何本という声が流れてきます。1回で何匹仕留めたかを連絡しているようです。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

船が向きを変えたり、トモに船長の姿があるときは、カツオが掛かっている

釣れている場所の緯度、経度も聞こえてきます。そのポイントに近づいた時、久丸に待望のヒット。

そして、一つ目の疑問、どうやってカツオがかかったことを知るのか。

山本船長に尋ねると、「転げるからすぐにわかる」とのこと。実際、掛かったカツオは、水面でコロコロと転げるように跳ねていたので、納得しました。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

仕掛けに取り付ける潜行板。船をひくと水中に潜りルアーを左右に動かすが、カツオが掛かると裏返って浮上し、水面でカツオが転げる

ロープを手繰り寄せる、カツオを取り込む、ハリを外す、ハリを海に投げ入れる、カツオの尾をつかみ船べりに頭を打ちつける、海水を張った水槽へカツオを放り込む――。一瞬の早業とはこういうことを言うのでしょうか。みるみる水槽にカツオがたまっていき、久丸から僚船に「12本」と連絡します。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

イケスに入ったのは12本の新鮮なカツオ

カツオを釣るには仲間の情報が頼りなのだそうです。だから久丸が釣れた時も必ず情報を流す。それがしきたりのようでした。

僚船の動きも見逃しません。方向を替えると、久丸もすばやく同じ方向へかじを切ります。方向転換はカツオが掛かった証拠。近づいて正解でした。しばらくすると、2度目のラッシュ。6本のカツオを取り込み、計18本でこの日の漁を終えました。翌日は70本と爆釣していたようです。

仕留めたカツオをおすそ分けしていただき、帰宅して早速造りに。日帰り漁で捕れたカツオの素晴らしい歯応えを感じつつ、しめはカツオのにぎりずしを食ったら、爆睡していました。

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

造りのもちもちっとした食感は、日帰りカツオだからこそ

カツオのケンケン漁をめぐる二つの謎 漁師の船で確かめた 和歌山沖

美味なカツオのにぎりずし

遊漁船登録もしてケンケン漁をしている船では、実際にケンケン漁を体験できるようです。

PROFILE

釣り大好きライター陣

安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

安田 明彦

釣りライター

1959年大阪市生まれ。父親の影響で子供のときから釣りが大好き。大学卒業後、釣り週刊誌の記者、テレビの釣り番組解説者などを務め、「やっさん」の愛称で親しまれる。あらゆる釣りを経験するが、近年は釣って楽しく、食べてもおいしい魚だけを求めて行くことが多い。釣り好き、魚好きが高じて、大阪市内で居酒屋「旬魚旬菜 つり宿」を営んでいる。

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