永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(13)永瀬正敏、振り返って何を撮った? 南仏の電車の中で

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。南仏の鉄道で撮ったこのひとコマに込められた思いとは。

(13)永瀬正敏、振り返って何を撮った? 南仏の電車の中で

© Masatoshi Nagase

海外では電車やバスに乗るのが好きだ。国籍も違う見知らぬ方々の、いろんな人生が乗っているからかもしれない。タクシーでの移動は便利だけれど、中は僕たちだけの空間になってしまう。その点、電車やバスなら、思わぬ出会いもある。

この写真は、南フランスのカンヌから、近郊にあるアンティーブという街に出かけた際の電車の中だ。薄汚れたガラス窓に映る、後ろに座る手前右側の男性がいい雰囲気だったので、思わず立ち上がって振り向いて撮った。

カメラにズームレンズをつけていたので、男性だけに寄せた写真も撮れた。でも、そうせずに引いた写真にしたのは、いろんな人の何かが乗っている、という奥行き感がよかったのだろう。直感的に撮った写真が、案外よいものになることがある。

僕も出演した河瀨直美監督の『あん』がカンヌ国際映画祭で上映された2015年、自由行動の日に、近くの街まで写真を撮りに出かけた時のひとコマだ。人混みは苦手だけれど、こういう空間は、なかなかいい。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、公開中の甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(12)「眠れない街」に放っておかれて 永瀬正敏が撮ったカンヌ 

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(14)ピカソの見つめる先が不思議 永瀬正敏が撮った南仏

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