ちょっと冒険ひとり旅

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している。はじっこ紀行2回目、今回はスペインのなかのイギリス、ジブラルタルへ。

<はじっこ紀行01 スペイン南端に近い町アルヘシラス>

突き出た「岬」の小国

スペイン南部にぽつんと位置するジブラルタルは、イギリスがいまも抱える海外領土のひとつだ。面積7平方キロ弱、人口3万人程度で「町」といっていいくらいの小ぶりな都市である。

いやむしろ、地図で見る限りジブラルタル海峡に突き出た「岬」だ。対岸はアフリカ、という軍事的にも商業的にも重要な土地だけに、18世紀初頭にイギリスが統治権を得たあとも、スペインは返還を要求し続けている。はじっこ好きとしては、この立地だけでも十分行く価値があるではないか。

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

バスの車窓からジブラルタルをのぞむ。大きな岩の塊のようだ

滞在していた港町アルヘシラスからジブラルタルへは路線バスを使う。バスは1時間に2、3本出ていて、運賃は往復5ユーロと、まさにご近所感覚で行ける外国である。

30~40分くらいかけて、路線バスの終点ラ・リネアまで行って下車。道を渡ると、小さな出入国管理事務所がある。ここが一応国境で、パスポートチェックを受けたあと、建物の反対側に抜ける。手続きには10分もかからない。出口横にあるゴミ箱に紙を捨てようと思ったら、そこには「LITTER(ごみ)」という表記。

おお、私はいま、イギリスに来た。

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両国の国旗が翻る、出入国管理事務所

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建物の向こうはジブラルタル。車用のレーンもある

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LITTERの文字が刻まれたイギリス式のゴミ箱。いっぽう、スペインの街角のゴミ箱はカラフルで巨大

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電話ボックスもイギリスのもの

フリーポート(自由港)でもあるジブラルタルは、どこでも免税価格で買い物ができる。国境から出ているバスに乗りメインストリートで降りると、周辺には土産物屋と「Tax free」看板を掲げた電化製品やジュエリーの店が並び、その間にブリティッシュパブやティールーム、イギリスでおなじみのスーパー「MARKS&SPENCER」が顔をのぞかせている。

壁が高く窓が小さな家が多いスペインの街並みに比べると、低めの建物が並ぶ街そのものの雰囲気がイギリスを思い出させる。通貨は、ポンドのレートだがイギリス本土では使えないジブラルタルポンドが使われており、そのほか多くの店でユーロも使える。

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

メーンストリート。大きな窓や低い建物が、なんとなくイギリス風だ

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パブは町のいたるところにある

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ランチはもちろんフィッシュ&チップス。海沿いの町だけに、魚が新鮮でボリュームたっぷり

標高420メートルを超える岩山「ザ・ロック」

これはいい崖! ジブラルタル最大の見どころは、標高420メートルあまりの岩山の「ザ・ロック」。切り立った崖が青い海に突き出し、野生のサルがそこかしこにたむろする風景はなんともかっこいい。

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ナイス崖!

向こうはアフリカか、と感慨に浸っていると、いきなりサルが肩に飛び乗ってきて、肩にかけていたトートバッグからポケットティッシュを奪って走り去った。ちょっと離れたところで仲間と一緒に座り込み、獲物が食べものでないことに気がついて憤慨した顔をこちらに向けている。

岩山のサルたちもジブラルタル名物。その昔、敵の襲来を早く察知するために、危険が近づくと騒ぐサルを見張り代わりに連れてきたとかで、ジブラルタルはやはり古来の重要な軍事拠点なのだ。

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

ザ・ロックの山腹にはいくつもの砲台が据えられ、軍事用の長いトンネルも掘られている。要塞(ようさい)都市だ

サルを追い払いつつ、上から崖を眺めているうちに日が暮れてきた。ザ・ロックからロープウェーで降りると、土産物屋のほとんどが閉店していたが、路地裏のパブにぽつぽつと明かりがともりはじめている。ユニオンジャックを掲げるパブも多い。スペインはイギリスに対して長年返還要求を続けているし、そりゃそうだろうとは思うが、この独特な雰囲気もまた捨てがたいと、旅行者としては思ってしまう。

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

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帰路、同じ出入国管理事務所を通ってスペインへ。歩いての国境越えはやっぱりちょっとワクワクする

スペイン南部、海峡に突き出た英領ジブラルタル はじっこ紀行02

アルヘシラスへのバス、車窓からはきれいな夕暮れが見えた

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PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

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