永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(14) ピカソの見つめる先が不思議 永瀬正敏が撮った南仏

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。南仏でアートの巨匠に触発されたこの1枚、実は不思議な光景を撮っていました。

(14) ピカソの見つめる先が不思議 永瀬正敏が撮った南仏

© Masatoshi Nagase

この方は、アートの巨匠パブロ・ピカソ。南フランスのアンティーブにあるピカソ美術館の外壁にかけてあった巨大な写真と、すごい表情をした雲を入れて撮った。海岸沿いの古城を利用した、すてきな美術館だった。

あまりにもインパクトの強い肖像写真なので、顔半分でもじゅうぶん何かが現れる。空に放つ思いが感じられる視線。見据えているのは未来だろうか。実際、彼の作品は、現在も世界中の人々に大きな影響を与えている。

美術館へ来るまで、何度も道に迷ったため、中の展示品を見て電車でカンヌに戻ろうとすると、夜の仕事に間に合わない時間になっていた。残念といえば残念だけど、僕は、この1枚が撮れたからもう十分、という気持ちだった。

撮った時には気づかず、後で指摘されたのだけれど、ピカソの口のすぐ左、雲の上に、右向きでこちらに背中を向けた人が立っているようにも見える。もしかするとその「人」は、ピカソが呼んでくれたのかもしれない。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(13) 永瀬正敏、振り返って何を撮った? 南仏の電車の中で

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(15) 後光が差した、誰の像? 永瀬正敏が撮ったカンヌ

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