京都ゆるり休日さんぽ

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

今回訪ねたのは、窓いっぱいに琵琶湖疎水沿いの緑が輝く「essence kyoto(エッセンス キョウト)」。昨年秋にオープンした、日本の現代工芸作家のうつわと産地や品種を厳選したお茶を扱うギャラリーショップです。

料理や花を引き立てる、日本の作家のうつわ

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

ビルの2階に上がると、見晴らしの良い空間が広がる

光あふれるコンテンポラリーな空間に並ぶのは、シンプルながらも土や木の表情、窯の火の力や手仕事のぬくもりがにじむうつわ。日常使いに便利なサイズから、存在感ある大皿、ひと抱えもあろうかという大壺(つぼ)まで、一つひとつの余白を生かしてディスプレーされています。

「骨董(こっとう)から作家ものまで幅広くうつわが好きで。その中でも、今この時代を生きてものづくりをしている日本の作り手の作品を、国内はもちろん海外に向けて発信できたらと思ったんです」

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

ヒビの入った釉薬(ゆうやく)の表情がおおらかな尾形アツシのうつわ。7月6日(土)からは同店にて個展を開催予定

そう語るのは、ギャラリーを営む荒谷啓一さん。長らく海外を拠点に経営などの仕事に携わった後、妻の里恵さんと一緒にオープンするギャラリーの場所として京都を選びました。文化や工芸への関心が高く、国内外からさまざまな人が訪れる街。その願い通り、お客様の4割ほどは海外の方だと言います。

「日本のうつわは“使う”ことを前提としているので、料理を盛ったり花をいけたりしてはじめてその美しさが引き立ちます。色や形がシンプルなぶん、テクスチャーやディテールに作り手の美意識が宿っていて、海外の方は『一体どうやって作っているのだろう?』と真剣に見入られます」

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

左から、アンティークから着想を得た形を木工で表現した北山栄太のプレートとカトラリー、二階堂明弘の小鉢、尾形アツシのヒビ手皿、服部竜也の急須

取り扱い作家は、小野哲平、尾形アツシ、二階堂明弘などシンプルながらも質感や釉薬の表情豊かな作品で知られる陶芸家のほか、木工家・吉川和人、塗師・赤木明登など(すべて敬称略)。西洋や中国のうつわは磁器が主流のため、土や火の表情豊かな陶器や日本を代表する伝統工芸である漆器は、海外のお客様にはとりわけ新鮮に映るそう。和食だけでなくさまざまな料理に合うよう、端正でモダンな形をセレクトしているのもポイントです。

飲み比べて楽しみたい、希少なシングルオリジンのお茶

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

シックなブラックの茶筒はギフトにも最適

店内の一角にずらりと並ぶのは、シングルオリジンのお茶。流通している日本茶の多くは、風味を均一にするため産地や品種の異なる茶葉をブレンドするのが一般的です。一方、シングルオリジンは単一農園、単一品種で育てられた茶葉を意味し、産地や品種ごとの違いを楽しむもの。前職でお茶の輸出入に携わっていた里恵さんの経験を生かし、手仕事のうつわとともに紹介しています。

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

カウンターでは里恵さんが試飲のお茶をいれてくれる

「お茶は無農薬で栽培するのが難しく、中でもシングルオリジンは茶葉の出来にごまかしが利かないため、取り組む生産者はごくわずか。けれど産地や品種、収穫年によって異なるお茶それぞれの個性を知ると、ワインやコーヒーのような奥深さがあります」と里恵さん。

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

「やぶきた」「あさのか」など品種ごとのシングルオリジンの茶葉がそろう

産地や品種の異なる緑茶4種のほか紅茶が1種あり、近々ほうじ茶も登場予定。作家の茶器を用いて試飲させていただけるので、茶杯の口当たりや手になじむかどうかも体感することができます。「急須は服部竜也さん、茶杯は二階堂明弘さんのもの。薄くて繊細な口当たりで、『お茶がさらにおいしく感じる』とみなさん驚かれます」と里恵さんはほほえみます。

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

窓から眺める琵琶湖疏水沿いの風景。春は桜、秋は紅葉に染まる

日々の食卓を彩るうつわと、暮らしに欠かせないお茶。なじみ深い日本の工芸や文化も、インターナショナルな視点からとらえ直すとまた違った魅力に気づくことができそうです。海外の人々をも魅了する、日本の手仕事に宿る美意識と奥深き日本茶の味わいをぜひ再発見してください。(撮影:津久井珠美)

essence kyoto
https://essencekyoto.com

BOOK

京都で現代工芸作家のうつわとシングルオリジンの日本茶を

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。& TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1,200円。

バックナンバー

>>連載一覧へ

PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

6月末、京都人にかかせない「水無月」と夏の和菓子を求めて

一覧へ戻る

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

RECOMMENDおすすめの記事