京都ゆるり休日さんぽ

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

今回は、石庭で知られる「龍安寺(りょうあんじ)」へ。ミステリアスで哲学的な枯山水の庭園に心奪われるのはもちろんのこと、境内の「鏡容(きょうようち)」では今、スイレンが見頃を迎えています。

(トップ画像は方丈庭園。画像提供:龍安寺)

夏の朝、水鏡に浮かぶスイレンに見とれて

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

時折水鳥が行き交う鏡容池。色とりどりのスイレンが咲く。中心には弁財天をまつる弁天島が(画像提供:龍安寺)

山門をくぐるとまず、四季折々の草花を映し出す広大な鏡容池が広がります。静かな水面のあちこちに咲くたおやかなスイレンの花を見ることができるのは、夏の龍安寺、それも朝に訪れた人の特権。スイレンは朝早くに花を開き、昼過ぎには閉じ始めるため、最も美しい姿を眺めるには朝の拝観がおすすめです。

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

水面に咲くスイレンと異なり、ハスは地上に茎を伸ばす(画像提供:龍安寺)

境内にはハスものびやかに葉を広げ、美しいグラデーションの花びらをゆるやかに開きます。気温の上がりきっていない夏の朝、スイレンやハスが水辺を彩る風景はすがすがしく、どこか神秘的です。

15個の石全てを一度に見ることができない、謎多き石庭

龍安寺の石庭は「ロックガーデン(rock garden)」として世界にも名を知られますが、正しくは方丈庭園。抽象的でミニマルな石庭の美しさ、そしてそこに秘められた多くの謎が、訪れた人々の心をひきつけます。

幅25メートル、奥行き10メートルほどの庭には一面に白砂が敷かれ、15個の石が静かにたたずんでいます。方丈のどこから眺めても15個の石全てを一度に見ることはできないという、不思議な仕掛けがあり、石庭を眺める人々は、立って見たり、座って見たり、さまざまな角度から写真を撮ったりと試行錯誤します。

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

ミニマルで謎多き方丈庭園。庭石の裏に「小太郎・**二郎(**部分は判読不能)」と刻印があるが、作庭との関連性はわかっていない(画像提供:龍安寺)

石庭の仕掛けは、石組みだけではありません。一見平坦(へいたん)に見える庭は、実は東南角に向けてやや低くなっており、排水を考慮した工夫が施されています。さらに西側の土塀は手前から奥に向けて低くなるように作られているため、視覚的に奥行きを感じさせるトリックも。

このような高度なテクニックが用いられているにもかかわらず、「誰が、いつ、どのような意図で造ったのか」、作庭の詳細は不明なまま。この極限までシンプルな石庭に凝らされた心憎いまでの演出が、世界中の人々を魅了する理由です。

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

拝観者は方丈の縁側で庭と向き合う。じっくり眺める人、全ての石を写真に収めようと試みる人などさまざま(画像提供:龍安寺)

1450(宝徳2)年、細川勝元が妙心寺の義天玄承を開山に迎えて創建された龍安寺は、応仁の乱を含め2度の火災にあい、庭の詳細を示す資料がほとんど残っていません。

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

茶室前にあるつくばいには「吾唯知足(われただたることをしる)」と刻まれている。「足るを知る」を意味する言葉で、石庭を鑑賞する際のメッセージのようにもとらえられる(画像提供:龍安寺)

庭の解釈も幅広く、親虎が子を連れて川を渡る様子に見立てた「虎の子渡しの庭」、石の配置から「七・五・三の庭」、海に浮かぶ島々、あるいは「心」の一字を現すという説などさまざま。対峙(たいじ)した人々に想像の目を開かせることこそ、この庭の最大の意図なのかもしれません。

昼過ぎには閉じてしまうスイレンの刹那(せつな)の美と、ともすれば永遠に解かれることがないかもしれない石庭の難題。対照的な二つの美しさが時空を超えて共存する、夏の禅寺をぜひ訪れてみてください。

龍安寺
http://www.ryoanji.jp/

BOOK

夏の京都・龍安寺 対照的な二つの美、見頃のスイレンと謎多き石庭

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。& TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

 

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

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