魅せられて 必見のヨーロッパ

大富豪が輩出したロマンチック街道の商業都市 ドイツ・アウクスブルク

ツアーの行き先としてはあまりメジャーではないけれど、足を運べばとりこになってしまう。そんなヨーロッパの街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねました。今回は、ロマンチック街道にある大富豪ゆかりの商業都市、ドイツ・アウクスブルクです。

金融と商業で栄えた街アウクスブルク

ドイツのアウクスブルク(バイエルン州)は、ミュンヘン中央駅から電車で約32~44分。
ロマンチック街道の街です。13世紀からアルプス山脈の北側からイタリアへ抜ける商業街道の町として重要な役割を担いました。

大富豪が輩出したロマンチック街道の商業都市 ドイツ・アウクスブルク

市庁舎。左側にそびえるのはペルラッハの塔です

堂々とした市庁舎はアルプス山脈の北側では最も重要なルネサンス世俗建築とされています。アウクスブルクが金融と商業の街として栄えた17世紀前半に建てられました。

大富豪が輩出したロマンチック街道の商業都市 ドイツ・アウクスブルク

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市庁舎の「黄金の間」

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「黄金の間」はコンサートや講演会の会場にもなります

内部を見学すると、華やかに金箔(きんぱく)で装飾された「黄金の間」に圧倒されます。1944年に戦火により破壊されましたが、20世紀末に修復が完了しました。

大富豪・フッガー家による世界最古の社会福祉住宅

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世界最古の社会福祉住宅とされる「フッガーライ」

アウクスブルクを語るうえで、大富豪・フッガー家を忘れてはなりません。今も続いている家系です。1521年、商人で銀行家であったヤコブ・フッガーが私財を投じて、生活に困窮している市民のために建設した住宅が「フッガーライ」です。建設当時からずっと存続しており、現在も生活に困窮している市民は審査の上、入居することができます。カトリック教徒であること、毎日3回お祈りすることも条件だそうです。

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困窮している市民の住宅とはいえ美しい家々です

敷地内は誰でも見学できて入場料は大人6.5ユーロ。住宅と敷地全体にかかる維持費はすべてフッガー家の基金が負担しますが、入場料だけでもかなりの収入になるのではと想像しました。

入居者の光熱費を除いた家賃は年間0.88ユーロ。想像を絶する安さです。ところがこの住宅には門があり、夜は閉まります。昼は働き夜は眠る、という宗教的な考えがあるそうです。22時以後に帰宅すると1人0.5ユーロ、24時以後に帰宅すると1人1ユーロの罰金を支払わなければなりません。

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67棟あり、142の住宅に分かれています。150人が生活しています

小さな息子と暮らしている30代の男性は「夜まで外出するお金はないですが、遠くの実家へ行って帰りが遅くなると2人で1ユーロ、または2ユーロになります。月に何度も払える金額ではないですよ」と言います。家具や家電などは、友人知人からもらうそうです。

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聖アンナ教会へ続く入り口

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礼拝堂にあるフッガー家の墓所

聖アンナ教会の礼拝堂へ入ると、フッガー家の墓所が堂々として目立ちます。ヤコブ・フッガーと弟夫妻、おいたちが眠っています。ガイドのメラニーさんによれば、この墓所の造営費用はフッガーライの土地と総工費の10倍もかかったそうです。

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街なかにあるフッガー邸の一つ。中庭が美しい建築です

邸宅や土地など不動産や財産がたくさんあったわけで、大富豪にとっては福祉住宅など多少の出費に過ぎなかったのではないか、などと思ってしまいます。

マリー・アントワネットが踊った超華麗なシェッツラー宮殿

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「シェッツラー宮殿」の大広間

18世紀の大銀行家フォン・リーベンホーフェンの邸宅だった「シェッツラー宮殿」は外観が地味ですが、1765~1770年に造られた大広間は超華麗です。シャンデリア、壁画、天井画、細部の装飾は見ていて飽きません。ガイドのメラニーさんは「マリー・アントワネットが婚礼でパリへ向かう途中アウクスブルクに立ち寄り、この大広間でパーティーが開かれました。履いていた赤い靴が壊れるほど彼女は何時間も踊ったそうです」と言います。王女様はこの広間が気に入ったのかもしれません。

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大広間の天井画

このようにアウクスブルクはウィーンからパリへ移動する際の道沿いであり、東西南北の交通の要衝という地の利から、経済的にも文化的にも栄華を誇ったことが実感できます。

フォン・リーベンホーフェンはヤコブ・フッガーより300年近く後の人ですが、2人ともアウクスブルクの銀行家・商人の伝統と財力を今に伝える建造物を残しています。

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アウクスブルクの街並み

「ドイツ歴史古都17都市 /Historic Highlights of Germany」
(日本語・英語)
http://www.historicgermany.travel/ja/

「Regio Augsburg Tourismus」 (英語)
https://www.augsburg-tourismus.de/en/guided-tours

「フッガーライ」(英語)
https://www.fugger.de/en/fuggerei.html

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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