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暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載です。今回は、夏休みの訪問にお薦めの城です。意外な点が充実している所こそ夏向けだそうです。そのポイントとは?

天守内展示や資料館巡りが豊かにする城歩き

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

岡山城の天守。夏の空と日差しに映える

待ちに待った夏休み、帰省のついでや家族旅行で城を訪れようという方も多いだろう。スカッと晴れた青空に、威風堂々とした天守はこの上ないほど映える。城は基本的に高いところを利用して築くため、城からの眺望もひときわさえる。

しかし残念なことに、夏は城めぐりのベストシーズンとはいえない。姫路城(兵庫県姫路市)や松江城(松江市)、大阪城(大阪市)や名古屋城(名古屋市)など、観光地化されている城のほとんどは、天守までの道のりに日差しを遮る場所が少なく、直射日光を浴びる時間が長くなりがち。舗装された地面の照り返しも厳しい。石垣を見ても石と石の隙間に草が繁茂していることが多く、写真を撮影してもいまいちだ。城内をくまなく歩いて城の構造を解明するような城歩き、のんびり時間をかけた城下町散策には不向きな季節といえる。

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

大阪城の石垣。真夏は草が繁茂してしまう

逆に、夏だからこそ楽しめるのは、建物内の展示が充実した城や、資料館や博物館が隣接する城だ。冷房の効いた涼しい室内で、普段ならあまり時間をかけられない展示物をじっくり鑑賞しよう。

実は、城内展示や博物館をめぐることは、想像以上に実際の城歩きを豊かにしてくれる。しかも最近は、工夫を凝らしたジオラマやアニメーションを駆使した解説も多く、なかなか楽しい。石垣しか残っていない城も、ジオラマや絵図、イラストを眺めて往時の姿を頭に入れておけば建物をイメージできるし、城全体の構造や規模を把握しておけば、自分が歩いている場所や移動した距離がわかり、実際には少ししか歩かなくても城の広さを感じることができる。上手に活用すれば、城歩きの充実度を確実に高めてくれるはずだ。

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

駿府城、東御門内に展示してあるジオラマ

たとえば、駿府城(静岡市)の東御門内に展示してあるジオラマもその一つ。東御門は復元建造物であるため見る価値もないと判断して素通りしてしまう人も多いのだが、実はこれほど駿府城の全貌(ぜんぼう)をわかりやすく教えてくれるものはない。内堀のほとんどが埋められて駿府城公園となっていること、旧三の丸には静岡県庁をはじめ官公庁や学校が建っていること、そのまわりを囲む外堀が今でも残っていること、城の外側には城下町が形成され東海道に沿ってにぎわっていたこと、城内の堀や櫓(やぐら)の配置、櫓や虎口の形状なども一目でよくわかる。

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大阪城天守閣。城の基礎知識から本丸の復元模型、豊臣秀吉の歴史なども展示されている

大阪城、岡山城(岡山市)や広島城(広島市)の天守閣など、復元された天守は内部が資料館になっていることが多い。大阪城天守閣では、映像とミニチュア模型を使った大坂夏の陣図屛風の世界を展示した5階にいつもたくさんの人が集まっている。2016年にリニューアルした小田原城天守閣(神奈川県小田原市)も、展示に見応えがある。グラフィックを使用した展示が多く、大人だけでなく小学生も見入っている様子が印象的だ。

撮影スポットの博物館や涼しげな水辺の城

「土佐の歴史と文化の新拠点」として2017年に開館した高知城歴史博物館は、高知城(高知市)の追手門前にある好立地。最上階の展望ロビーからは、現存する天守と追手門のセットが迫力あるアングルで見られる。撮影スポットとしても活用できる。

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

高知城歴史博物館の展望ロビーから撮影した高知城天守。現存する追手門とセットで撮影できる

海沿いの台場や、高松城(香川県高松市)や今治城(愛媛県今治市)などの海城は涼しげでよい。また、湧き水が城下町を潤す越前大野城(福井県大野市)や郡上八幡城(岐阜県郡上市)、大垣城(岐阜県大垣市)なども、清流のせせらぎが暑さを忘れさせてくれる。越前大野城の城下町には御清水(おしょうず)と呼ばれる湧水がいくつもある。ひんやりと冷たい御清水でのどを潤せば、城下町歩きの疲れも吹っ飛んでしまう。水琴窟の音色も涼を運んでくれ、なんとも風情がある。

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今治城。瀬戸内海の海水を堀に引き入れている。天守最上階からの眺望もよい

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郡上八幡城。川沿いを歩いて見上げる姿もいい

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

越前大野城の城下町では、御清水めぐりをしながら散策できる

夏の風物詩も城も楽しむ

城下町で発展した夏の風物詩とともに、城を楽しむのもおすすめだ。たとえば、犬山城(愛知県犬山市)の城主の「御料鵜飼」が発祥という「木曽川うかい」。木曽川に浮かぶ観光船上は涼やかで、そこからはいつもと表情が違う犬山城天守を見上げられる。大洲城(愛媛県大洲市)では、鵜飼いと花火が見られる観光船が人気という。全国的にも有名な岐阜県郡上市の郡上おどりは、諸説あるが郡上八幡城主の奨励により発展したとされるもの。夏ならではの楽しみ方で城の歴史に触れるのもいいだろう。

早起きして、涼しいうちに訪れてしまうのもひとつの手だ。炎天下、天守への入り口に行列などできていたら、待っているだけで体力と気力を奪われてしまう。例えば松山城(松山市)本丸広場は都市公園となっているため、朝5時から開放されている(天守への入場は朝9時から)。朝から行動すれば、時間も有効に使えて一石二鳥。高知城下の日曜市、越前大野城下の朝市、飛驒高山の朝市など、江戸時代から続く朝市に立ち寄って城下町の歴史と風情を感じるのもいい。

夜の城を見られるのも、夏だけのお楽しみだ。夏は、特別に夜間開放される城が多く、たとえば岡山城では2019年8月1日から31日まで、夜間特別開館「烏城灯源郷」が催される。旭川をはさんで対岸にある後楽園でも、毎年恒例の「夏の幻想庭園」を開催。名勝・後楽園から眺める岡山城天守も日中とは違う趣がある。名古屋城で毎年開催されている「名古屋城夏まつり」も、たくさんの人でにぎわう夏の人気イベント。ライトアップされた天守や櫓(やぐら)は、太陽の光を受けて建つ姿とは違う表情で、どっしりと落ち着いた印象だ。屋台やビアガーデンもあり、真夏の夜を楽しみながら、ふだんなら夕方で閉園してしまう夜の名古屋城を満喫できる。岐阜城のある金華山に夏季限定でオープンする金華山展望ビアガーデンも、毎年大人気だ。

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

日頃からライトアップされている岡山城天守。夏のイベントでは、天守や石垣がちょうちんやろうそくでやわらかに照らされ、旭川に幻想的に映し出される

いっそ、南の島のグスクへ

どうせなら、思い切って暑い場所を訪れて夏を満喫するのもいい。沖縄県のグスクは、琉球石灰岩という白い石を積んだ石垣が特徴。青い海と白い石垣、それらのコントラストがもっとも美しいのは、やはり太陽が輝く真夏だ。今帰仁(なきじん)城は沖縄美ら海水族館や、橋で渡れる離島の古宇利島にも近く、家族旅行にもおすすめだ。

暑い今こそ狙い時! 夏休みにオススメの城とは?

今帰仁城。世界遺産登録されている五つのグスクの一つだ

(この項おわり。次回は7月29日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト

■大阪城天守閣
https://www.osakacastle.net/

■駿府城
https://sumpu-castlepark.com/(駿府城公園)

■高知城歴史博物館
https://www.kochi-johaku.jp/

■今治城
https://museum.city.imabari.ehime.jp/imabarijo/(今治市)

■郡上八幡城
http://castle.gujohachiman.com/(一般財団法人郡上八幡産業振興公社)

■越前大野城
https://www.onocastle.net/(大野市)

■松山城
https://www.matsuyamajo.jp/(松山城総合事務所)

■岡山城
https://okayama-kanko.net/ujo/history/index.html(岡山城事務所)

■名古屋城
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/(名古屋城総合事務所)

■今帰仁城
http://nakijinjoseki.jp/(今帰仁城跡管理事務所)

PROFILE

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。

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